3.僕は転んでいる
小学生の時に、誕生日ケーキを床に落としたことがある。
ロウソクが十本刺さっていて、
おばあちゃんも死んでいない頃で、
お母さんがケーキを切り分けて、
紙皿の上に乗せてぼくに渡すとき、
本当になんでか分からない、
ぼくは転んでしまって、
それで頭をテーブルの角にぶつけそうになったの。
大事には至らなかったけど、
本当に怖い思い出で、
それでケーキは床にべちゃとなってね、
クリームが広がっていくの。
馬鹿みたいな話だよね。
でもぼくは、なんだか後ろめたい気持ちになった。
それで、大学の先生に聞いてみたよ。
「いま小説を書いています。
日本語の辞書が魔術書に変わる内容です」
西洋文化史の先生で、専門は古典医学らしい。
「面白そうな内容だね、
それでどうしたいの?」
先生は顔をしかめて、
ぼくもなんて言えば良いか分からず、でも
「実際にこんなことはあり得ますか?」
なんて馬鹿らしくて言えないから。
「魔術書ってどんなものですか?」と聞いた。
「どうだろうね。専門外だから分からないな」
そうして誤魔化された。
でもそんな先生よりも、
サークルの友達の方が役に立った。
今でも思うけど、
大学の学費って本当にぼったくりと思うの、
それはさておき。
「ネクロノミコンってこと?」
そんな創作物をようやく思い出した。
家に帰ると、ぼくは辞書を引っ張り出した。
もう素手で触れたくないくらい、
血とかは流れていないけど、
ぼくは産まれたての仔犬を抱いているみたいで、
辞書はドクドクと脈打っていたし、
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