第4章 第6話「2nd Duel:雪嶺に沈む王冠」



閃光の狙撃は空を裂いたが、デュナメスアークには届かなかった。


「悪くない……けど、やっぱり届かない」


来夢の声は冷ややかに、上から響く。


(……遠距離じゃ、勝てない)


綾杜は冷静に判断した。


撃ち合えば、性能差で押し切られる。

ならば――

「距離を、詰める」


決断と同時に、VELTINE‐03がブーストを噴かして前方へ飛び出す。


「……近づくか。大胆だな」

来夢のデュナメスアークも構えを変えた。


その瞬間。


「――ッ!」


左肩部が弾け飛んだ。

そこに搭載されていたサブウェポン:ショットガンが破壊される。


(速い……もう読まれてる)


吹き飛んだ破片が、雪の上を転がる。


《左肩ユニット喪失。回避推奨》


(……いや、突っ込む)


綾杜はさらに加速し、横に跳躍した。


来夢の狙撃照準がわずかに遅れる。


「なら、これはどうだ――!」


頭部バルカン、展開


ガトリング音と閃光。

命中精度は低いが、照準妨害としては十分。


「牽制……か、チッ!」


来夢がバルカンに反応して照準を逸らした、その一瞬。


綾杜は右腕で狙撃銃を逆手に構え、膝をついてブレーキ。


0距離――

“最も遠いはずの狙撃手”が、至近距離で銃口を敵に突きつけていた。


(ここしかない)


「……撃つ」


引き金を絞る。


閃光。

銃声。

沈黙。


撃ち抜かれたのは、デュナメスアークの胸部中央――パイロットブロック。


【命中:コックピットユニット/パイロット生命反応無事・戦闘不能判定】


轟音と共に、雪の斜面に巨体が崩れ落ちた。


「……これが、俺の答えだ」


照準器を閉じ、綾杜は機体を振り向けた。


《第二戦、スレッドゼロの勝利を確認》


勝者――VELTINE‐03、新川綾杜。


戦場に、静かな雪が舞い降りる。



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