4. 会えるのが楽しみ
「やあ、カレン。ちょうどよかった、ちょっと話があるんだ」
「フランツ様、ご機嫌麗しゅうございます。どういったご用件でしょうか」
「実はね……」
ある日、学園の廊下で突然フランツ様に呼び止められた。他の令嬢たちから「フランツ様よ、素敵ね」「まあ、うらやましい」などの密やかな声が漏れるのを耳が拾う。
「実験機ができたみたいなんだ。来てくれないか」
「わぁ、できたんですね。早速伺います」
フランツ様は周囲に聞こえないよう、背中を丸めて私の耳元で囁いた。『実験機』という言葉に食いついた私を、その笑顔がキラキラと照らす。
「明後日の休みの日にでも。ああ、楽しみだな」
「はい、とても楽しみです」
「僕は会えるのも楽しみなんだけど」
「ええ、さようでございますね。とうとう……とうとう会えるのです。明後日、必ず参ります」
嬉しすぎて自分でも何を言っているのかわからなくなってしまった。でもフランツ様が少し首を傾げて笑みを浮かべているから、特におかしくはなかったのだろう。周りの令嬢たちからはやっかみの視線を浴びている気がするけれど、そんなこと気にしていられない。
季節はもう夏に突入している。やっと、冷蔵庫に会える。とても嬉しい。
前世の子供の頃の記憶が蘇る。うだるような夏の気温と湿度の中、誰もいない家に帰る。顔や首の汗を拭いて、それでも出てこようとする汗に少し苛立ちながら冷蔵庫を開ける。火照った顔や腕に冷気が当たるのが気持ちいい。冷蔵庫のドアポケットには、必ず麦茶が入っていた。お母さんは外で懸命に働きながらも、私への愛を惜しまない人だった。
「フランツ様、ありがとうございます」と言った私はきっと、目尻の涙を除けば、満面の笑みだったと思う。
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