交錯の三世界《インターセクト・スリーレイド》

林檎茶

1. その日、僕は

「ちょっと、どこ行くの⁉︎」


 走り出した僕の背中に、赤髪の少女の叫びが響く。


 今日は待ちに待った、名門と呼ばれる学校の入学式だ。

 だけど僕は、そんな念願の入学式に遅れることも承知で、敷地の外に駆けた。


 何故なら助けを呼ぶ声が聞こえたから。

 こんな、何の力も持たない僕に助けを求める、声が。


 辿り着いた先で僕は見つけた。

 背丈の低い草に埋もれるようにして身を隠す異形──スライムを。


 スライムは弱りきっていた。どうやって助けたら良いのかなんてことは分からない。


 だけど僕は、手を伸ばした。


 そんな僕を見て、スライムは、一瞬にして。

 その軟体で、僕の全身を包み込んだ。


 息ができず、もがく。

 苦しい、何もできない。


 人って、こんなにも呆気なく。



 ──その日、僕は死んだ。

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