第48話 あれがドラゴンだと?みんな大丈夫か?→それはこっちのセリフですよ!?

「――――――ギュラォオオオオ!」


 あれがドラゴンだと? 


「なにを言ってるんだ。大丈夫かみんな?」


「それは、こっちのセリフですよ!?」


「え? なに言ってんだ。トカゲだろ?」


「いやいやいやいやいや、だれがどう見てもドラゴンですよ!?」


 いやが多いな。

 あの外見に鳴き声は、間違いないくトカゲなんだけどな。


「ボクレンさん、すごく納得いかない顔してますけど、ドラゴンですからね」


 ドラゴンの一点張りだな。

 あ……セシリア、いつもの教科書を持ってきてないぞ。


「教科書を見なくてもドラゴンです!」


 くっ……心を読むとはさすがセシリア。どんどん成長しているな。


 う~~ん、にしても、あれがドラゴンなわけはないぞ。

 ドラゴンてのは、もっとヤバいところに住んでるやつだ。こんな普通の森にはいないし。


「あ、そういう名前のトカゲなのか? 赤トカゲだろ?」

「レッドドラゴンです!」


 どうみても赤トカゲなんだよなぁ。それ以外のなにものでもない。

 あれがドラゴンなら、おっさんはドラゴンスレイヤーになってしまうぞ。


「セシリア、意地を張っている場合ではないですわ。赤トカゲでもなんでもよくてよ!」

「うわぁ~~ん、死んだぁ、もう死んじゃったぁ、彼氏もできたことないのにぃいい!」


 アレシーナが叫び、レイニはがん泣きしている。


「わかりました、ボクレンさん。呼び方は好きにしてください! とにかく倒しましょう!」


「おお、了解だ、セシリア!」



「――――――グォオオオオォオオ!」



「ボクレン、レッドドラゴンが……大木の焔玉果レインボーフレアフルーツを食べてますわ!」


 まずいな……あそこで木刀振ると実が全部落ちてしまうかもしれん。

 あれは衝撃に弱いから、丁寧に収穫しないと全部パーだ。衝撃で実が弾けてしまう。

 あいつを大木から離さんと。


「アレシーナ、セシリア。俺とレイニで赤トカゲの注意を引くから。【結界】で身を守れるか?」


「もちろんですわ!」

「はい、ボクレンさん!」


 よっしゃ、いい返事だ。


「よし、いくぞレイニ、陽動作戦だ!」

「ふぇええ、わかりましたよぉおお~~こうなったらヤケですぅ!」


 その俊足を飛ばして、一気に赤トカゲの前にでるレイニ。

 うむ、普段の感じに戻ってきた。やる時はやる子だ。


「あんたなんか怖くないよぉおおだ!

 聖女よ、我が声に応えよ。その加護、今こそ月影をまとい沈黙の刃を敵の心へ!

 ――――――月影の聖短刃ルナ・セイントスティレット!」


 透き通るような短剣が数本現れて、赤トカゲに向かって放たれる。


「ギュラォオオオオ!!」


 うまい! 真正面だけでなく、多方向に軌道を変えて投げたな。

 よし、こっちに注意が向きはじめた。



「――――――グゴォオオ……」



「レイニ、食事を邪魔されたんだからくるぞ」

「へぇ? くるってなにが……って、ふぁあああ!?」


 その言葉が終わる前に、俺とレイニの間にデカい火球が轟音を立てて通過した。

 赤トカゲ十八番の火炎弾だ。


 火球はそのまま森の奥へ飛んでいき、―――ズトォオオ! という爆発音を立てて森の一部を吹き飛ばした。


「なにあれぇええ……もう火魔法とかの次元じゃないんですけどぉお!」


「グゴォオオ!」「グゴォオオ!」「―――グゴォオオ!!」


 怒り狂って火球を四方八方に滅多撃ちするするトカゲ。


 レイニは「ひぃいい、ごめんなさぃいい!」と叫びながら避けまくる。おお、いいフットワークだ!



「天を照らす聖なる光よ、闇を切り裂き、絶望を払う盾となれ!

 我が祈りに応え、我らの歩みを阻む邪悪を退けよ。

 顕現せよ――――――結界セイクリッド・バリア!×結界セイクリッド・バリア!」


 アレシーナの2重詠唱か……すげぇな【結界】を二重に展開したぞ。

 セシリアもその上に【結界】を重ね掛けする。


 赤トカゲはこちらに攻撃を仕掛けてくるものの、大木の傍から離れないな。

 う~む、木刀振ってもいいんだが、木が近すぎる。

 レイニの挑発にもこれ以上は乗ってこないようだ。


「ボクレンさぁ~~ん、早くなんとかしないとぉ~聖女さまたちがぁ~」


 火球を避けながらレイニが叫ぶ。


 赤トカゲの火球はセシリアたちにも放たれている。


「あ、アレシーナ! ご、ごめん!」

「いいですわセシリア! ワタクシの【結界】で食い止めますわ! あなたは次の詠唱をなさい!」


 セシリアの【結界】が崩壊したのか。これはいったん彼女たちのところへ戻った方が……? んん?

 なんかアレシーナの【結界】……いつにも増して赤くないか?


 元より彼女の聖属性魔力は少し赤い。だが、ここまで赤いのははじめてだな。


「あ、アレシーナ。【結界】が……なんですかこれ! 火球と共鳴している!?」

「ワタクシにもわかりませんわ! な、なぜか火球の魔力が流れてきて……」


 さらに赤くなる【結界】。だが崩壊の兆しはないように見える。



「グルゥウ? ――――――ギュラァアアアアア!!」



 おっと、赤トカゲは気にくわないらしいな。


「あ、アレシーナ! レッドドラゴンがこっちへくる!」

「わかってますわ! 落ち着きなさいセシリア!」


 動いたな、赤トカゲ。


 残念ながら俺の天使たちに、手は出させないぞ。


「―――ぬんっ!」


「ギュガァアア!」


 俺は赤トカゲを背中ら叩き伏せる。


 地面に叩きつけられたトカゲが軽くバウンドしたところを―――



「――――――ぬんんっ!」



「ギュラァアァ……アアァ……ァ……」


 よし、片がついたな。



「す、凄いボクレンさん。レッドドラゴンを木刀で倒しちゃった……」

「まったく、相変わらず無茶苦茶ですわ」


「ふぇええ、た、助かったぁ~~生きてるぅ、私動いてるぅう」


 2人の聖女と、1人の聖騎士が俺のもとに駆け寄って来た。


「みんなよく頑張った。さっそく実を回収したいとこなんだが……」

「え? なにかあるんですか?」


 ちょっと時間をくいすぎた。


「またくるぞ」


「え、え、またくるって……ボクレンさん」

「じょ、冗談ですわよね……ボクレン」

「なになに、ボクレンさん、また変なこと言い出したんですかぁ」


 冗談も変な事も言わんさ。


 ほら来た。


「ギュルウウウウウ!」

「ギュラァスゥウウウ!」

「ジュラァアアアア!」


 翼を広げて上空から接近してくる影。


「赤トカゲはけっこう群れるんだ」

「ボクレンさん……」

「大丈夫だセシリア。あれもさっきと同じトカゲだからな」


「あれ……ドラゴンです……全部」


「――――――ギャァア! いっぱいきたぁああ! 今度こそ終わちゃぅううう!! もういいやぁ~~うえへへへぇ~」



 やばい……レイニが壊れた。








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