第6話 参考資料1

《R.T ジャム実験記録》

研究者名:R.T(本名不詳)

所属:デックチャー外部研究補佐官/ジャム応用理論研究班

第13期 実験管理日誌抜粋


【第0日】

フェンリト殿より直接依頼。

曰く「“ジャムの可能性を測ってみてほしい”」。

その目が冗談ではないことに気づいたのは、

机に置かれた**“パラドックスジャム(未冷却)”**の容器が、

こちらを瞬きしてからのことだった。


【第3日】

ジャムが冷蔵庫に入ってくれない。

“入りたくない”という意志を感じたので説得を試みたが、

深夜2時に冷蔵庫が「詫びて土下座」した。


明日から“室温保存”に切り替える。


【第7日】

サンクタムジャムが意思疎通を始めた。

フェンリト殿いわく「これは聖域の意識が残留した媒体」とのこと。


……ふざけてスプーンで掬った助手が、

「懺悔したいことが1300個ある」と泣き出し、

ひとまず彼は温泉に送った。

彼の名前は…誰だったか。


【第11日】

“ジャムのジャム”の精製、第9工程にて爆発。

詳細不明。

部屋にあった**“空間そのもの”が1立方メートルほど消えた。**


フェンリト殿曰く、「多分うまくできてるよ」。

根拠が“彼の気分”なので、記録不能。


【第16日】

本日精製したメタジャム。

触れただけで**「この日誌の視点が二人称単数になる」**という現象が発生。

つまり君は今この文章を読んでいて、

気づけば君の周囲に、誰かが見ているような視線があるだろう。

安心してくれ。それが“眼”だ。


君の恐怖は正常だ。

異常なのは、こっちの世界だろう。


【第21日】

フェンリト殿、またもやジャムをくれた。

材料は「彼の影とオロナインと裏切りの感情」。

彼とは…応えてもらえなかった。


今度の名前は**“パラドックスジャム・Ver.R”。

冷たい、重たい、甘い。

そして、“すべてが反転する”**。

僕の影が僕に話しかけてくる。

「君は誰かのコピーだ」と。


【第27日】

セラ様の試食により「脳が引っ張られる味」認定。

それは何よりの高評価。

なお、試食後の5時間、

彼女のノートが逆再生で喋っていたという報告あり。(ノート?)


【第30日】

もはやジャムではなく概念加工食品。

……というか、食っていいのか?


フェンリト殿からの伝言:


「ジャムはジャムだ。食うか食われるか。

概念だってスプレッドできる。」


【最終記録】

私は明日、

“ジャムのジャムのジャム”の精製実験に挑む。


成功すれば、

この日誌も“ジャムとして保存”されるらしい。


失敗すれば、

私が“保存される側”だ。


それもまた、

フェンリト製ジャムの定めだろう。

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