おっさん神官と異世界 二人旅2ーナライエ編

零369弎

ナライエ―入国編①:入国はトラブルだらけ

 こんにちは。サクラです。もうすぐ3歳のかわいいベイビーです。こっちは数え年だから、実際はもうすぐ2歳かな。


 “カードキ◯プター サクラ”かよ!と思った皆さん。私もこの名前がつけられたとき、同じことを思いました。知らない人はググってみてね。

 でもさ、パパとママの思い出の花の名前だ。とか言われたら受け入れるしかないやん。だから、仕方なく“サクラ”を名乗っております。まぁ、私も桜は嫌いじゃないし。


 最初は“ひゃっほ〜!魔法た〜!異世界転生だ〜!”って喜んでた私。前世は40過ぎのおばさんやっておりました。なんで死んだかは…わからない。その辺の記憶が無いのよ。


 仕事は…まぁ、いろいろやっておりましたわ。最期の方は日本の端っこの山奥でネット使ってマーケティング業と物書きやってたね。

 あとは多すぎてややこしくなるから、プロフ欄でも見てちょうだい。



 そんな私ですが…今、異世界の怒号飛び交う医療現場の戦場で…。

 “エアコン”と“充電器”やってます…。



 ◇




 さかのぼること3日前…


「やっと…着いたな。」


 砂丘の上から見えたのは砂漠の中に突如として広がる草原と畑。中央には木々に囲まれたかなり大きめの街。中央には湖があって湖の中に豪奢な建物が見える。これまで砂漠で外から見てきた街よりもはるかに大きい。


 コレは街ではなく、1つの国らしい。



「あれがナライエ王国だ。」



 やっと着いたとなれば、まずは入国しなきゃいけないんじゃない?まぁ、それが問題なんだけどさ。この木の合間からスイッと入れないもんかね…。

 一応…木々の向こうには壁も…あるな…。私を抱っこしているカズの身体能力なら…軽く超えられると思うんだけど…。



「門は全方にそれぞれあるらしいから…。周りを見てみるか。」



 真面目に門を通るらしいな。入国審査、絶対に面倒なのに。まぁ、後から問題になる方が面倒って言われると…その通りなんだけどさ。

 カズは国の外周をゆっくり走り始めた。なぜか途中で足を止める。



「ここが…最初の公害現場か…。」



 見ると外周の一部にぽっかり…木と壁がなくなっている箇所があった。大きく穴の空いている箇所に水が溜まっている。



「コレは後だな。先に入国…。」



 また、カズは走りだす。しばらく走ると、小さな人の列が見えてきた。並んでる人少なそう。その列を見たのか、カズが走るのをやめて歩き出した。


 

「お前…さっきからしゃべらねぇけど、大丈夫?」

『マスク付けたら話づらくない?』

「マスクって何だよ。」

『これ。』


 口につけられた、布マスクを示した。マスクって苦しくなるからあまり好きじゃないんだよね。特に布マスクは。


「口布だろ?」

『ああ、そうだったね。』

「口布、念話は関係ねぇだろ。まぁいいや。今からあまり念話使うなよ?」

『はい。心得てますよ。外から見られるのがまずいって話でしょ?』

「わかってんじゃねぇか。」


 念話のできる子どもは魔力量が多いって話だけどさ。どうせ、魔力量は入国審査で分かっちゃうんだよね…。知れるのは最低限にしたい。っていうのが、カズの意向だけど。審査官が悪い人に買収されてたら一緒やん?

 まぁ、魔力量の多い子どもをさらって育ててやろう。ってヤカラから狙われるリスクを減らしたいっていうのは理解できなくはないから、黙っとくことにしよう。




 カズは列の最後尾に並んだ。前の人を虫眼鏡のような形状の魔流石でマスクをした入国審査官が確認している。次が私たちだ。ちょっと、緊張する。



「ん?あー。コチラに来ていただけますぅ?」



 はい。引っかかったぁ。

 なんか、飛行機乗る前のエックス線の手荷物検査で引っかかった気分だ。あれは特定の荷物を抜けば避けられるけど、この世界の場合、魔力量が多いって体質だから避けられないんだよね…。


 列から外されて、もう一度チェックされてる。

「んー。やっぱ、魔力量、多いですねぇ…。なんか、許可取ってますぅ?」

「ええ。医師組合の救援で来まして。組合経由で伝えてもらってたと思いますが…。」

「名は何とおっしゃいますか?」

「シュヴァーレン・カズマと助手…という扱いでサクラ・マンディロアです。」

「確認しますのでお待ち下さいねぇ。」


 入国審査官がこちらから視線を外して手をポケットに突っ込んでいる。コレはポケットに入った念話機で誰かと連絡を取っている動きだ。

 電話と違って、声をあまり発することが無いので、分かりづらい。


「確認取れましたぁ。わざわざ、遠方からご足労ありがとうございますぅ。」

「いえ、このあとはどうすれば良いですか?」

「そのまま、お進み頂いて手続きをお願いしますぅ。救援所は一番、魔石空の人が多い赤方周辺にありますねぇ。」



 カズはそのまま、列の並んていた場所に戻された。入国審査官が後の人たちを引き続きチェックしていく。


 その後は入国時に目的などを軽く聞かれて、書類のサインをするだけで入ることができた。

 事前に伝えててコレなんだから、伝えてなかったら確実に入れないんだろうな…。



「赤方か……。今の門は黒方だから…こっちか。」

 あたりは夕暮れに差し掛かってきた。宿が先の方が良いんじゃないかな?


『宿は?』

「いや、現場で決まってる時があんだわ。」



 なるほど…。そりゃ、現場入ってみないとどうにもならんわ。


 砂丘の上から見ると、小さく見えたこの国も、実際歩いてみると広い。カズが道に迷いながらも、徐々に小道の多い地域へ差し掛かってきた。



「ん?どこだ?このへん……?もう少し先か?人に聞いてみるか?」

 カズが地図を広げながら悩んでる。

 そこに“どん!”とカズの体に衝撃が走った。誰かがぶつかって来たらしい。



「悪いなぁ〜。おっちゃ〜ん。」

 黄色い毛並みの獣人の少年がカズにぶつかった。



「ってぇなぁ…。しゃぁねぇ。組合に聞いてみっか。」

 カズが念話機で連絡を取るべく、ポケットに手を入れた。



「おい…無ぇぞ…。」

『何が?』

「念話機と魔石袋だ…。」




 ◇




「さっきのカギだ!」

 いや、わかるけどさ…。急な全力疾走はやめてもらえませんか?急に体に重力がかかって怖い。


「ちっ!もういねぇな。足が速ぇ。」

 少年が走り去った方向を追いかけたけど、見つからないらしい。


「しゃぁねぇ。飛ぶぞ。」

 え?待って?心の準備が…。逆バンジーが私を襲った。


 

 カズが地面を蹴り上げて屋根に飛び乗って、そのまま、走り出す。

 屋根から屋根へ。走っては飛び、走っては飛び。繰り返す浮遊感がすごく怖い。新手のジェットコースターかよ。絶叫系は苦手なんだってば。




「あ、いた!お前ら!」


 さっきの少年を含めた複数の少年たちが袋小路に集まっていた。どうやら、戦利品を確認してるらしい。


「げ!どこだ!」

「上だ!」


 カズが袋小路に降り立って逃げ口を塞ぐ。降りる時も言ってよ…普通にバンジージャンプだし…。


「お前ら…。それ、返せ。」

「うるせぇ。もう、俺たちのもんだ。」

「それはガキが扱えるもんじゃねぇ。」

「うるせぇ。売って金にするからいいんだ。」

「それは…売れねぇぞ?」

「えっ…?」

 少年たちが絶句する。そうなの?売れないの?私も売ったことないからわからないわ。



「念話機なんか、登録したやつしか使えねぇし…。その魔石袋はこの辺の道具屋じゃ金なくて買い取れねぇだろう。だから、返せ。」

「それなら…魔石売って金にする!」

「ダメだ。今から救援で使うからな。返せ。返さねぇなら…。」


 抱っこ紐で密着してるからか、なんとなくカズが右手に魔力を集めだしたのがわかる。右手がバチバチと音を立て始めた。表情見ると、目がマジだ。

 子どもに本気はダメよ…?

 

「救援で使うって…まさか…おっちゃん…。」

「医師組合の救援要請で来た、医師で神官だ。」



 ◇

 


「おっちゃん…すまねぇ…!」

 獣人の子供たちが、すぐに念話機と魔石袋を返してきた。


「おれたち…金がねぇって…救援の大人たちが話してるの聞いちゃって…。」

「それで盗ったのか?」

「僕たちなんか、まだ、一人で役務にも登録できないから…でも、命助けてもらったんだ…。」


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