第20話

 ――怖っ。


 誠二が自分の部屋に入った途端、後ろから抱き着かれた。

 細くてしなやかな腕と柔らかな胸と紅潮した熱が、抱き着いてきた人が女性である事を伝えて、緊張した吐息が冬香か夏美である事を伝えてくれる。

 誠二はそれが夏美だと思っているが、正直自身はない。


「夏美?」

「誠二、ヤりたい」


 疲れているからというわけではないが、誠二は時計を見て次の行動を起こせるかを考える。

 良い子が寝る時間はとっくに過ぎて、深夜に差し掛かる時刻になりかかっている。


「明日学校でしょ」

「そうだけど、少しだけ」


 柔らかな体に押されて、誠二はベッドの上に押し倒された。そこでようやく夏美の顔を一瞬だけ見る事が出来た。

 眉の端が下がり切り、不安と紅潮がぐっちゃぐちゃに交じった愛おしい彼女の顔だった。

 しかしなぜか、その愛おしいはずの夏美の笑顔と冬香の笑顔が重なって見える。


「冬香さんとすればいいじゃん」

「誠二じゃなきゃ駄目なの」


 誠二はその表情の意味を考える暇もなく、夏美にキスを奪われた。

 押し倒された衝撃で手に持っていた父親から渡された安全用具を手放してしまった。

 夏美が誠二の口の中で暴れる。その暴れぶりは普段の彼女とは違い、冬香から影響を受けたんだと理解した。

 それからお互いに体を服を着たまま上から下に撫で合いながらキスを続ける。

 お互いの手が服の下の秘めたる場所に侵入して、お互いに触りながら口を離した。


「そろそろいい?」

「夏美、ゴムを……」

「んちゅ」


 言葉は遮られて抵抗は無意味だった。夏美に主導権を奪われたまま、服を剥がされる。熱量は彼女の方が多くて、些細な反撃は、同じことをやり返すだけだが、隠すだけの薄い服にほとんどノーガードだった。

 お互いに欲求を何度も発散したはずなのに、彼氏彼女の欲求は果てしない。

 父親の配慮を無駄にしながら、ただその日のお互いにいつも以上に激しかった。

 普段の夏美であるならば絶対言わない言葉を連呼しながら、誠二を煽り立てて、荒々しく動きベッドが軋む音を立てさせ、誠二は夏美の中に致した証を残した。

 それからクールダウンする気の無い、恋人同士のキスをした。サキュバスかと思うほど誠二を搾り取る吸い上げに、誠二はまだまだ興奮して元気付けられている。

 夏美が妖艶に微笑み、腰の動きで続きを促しながら聞いてくる。


「誠二、まだできるでしょ?」

「できるけど……」

「フユ、来て」

「えっ」


 激しい運動の後で息が上がりながら誠二が彼女に答えると、夏美はクローゼットを見ながらその中にいる人に呼びかけた。

 クローゼットの中から冬香が最初からやるつもりで、散々欲求を満たして来ただろうにまだ飢えた様子だ。

 その登場を予期できなかったのは、目の前の事に夢中になり過ぎたせいだろう。

 冬香は現れてからすぐに夏美の背中に抱き着いて、満足の足りない身体を揉みしだきながら、誠二に向けて挑発的な熱い視線を向けて、姉妹の愛を誇示してみせる。


「誠二、ごめんね。ナツは私無しじゃ満足できなくしちゃった」

「ごめんね、お兄さん」

「じゃあなんでこんな事を……」


 言葉の途中で夏美の背中を冬香が押して夏美の口が、姉妹で幸せになればいいじゃないかという誠二の言葉を遮る。

 逃がさない。逃げられない。絡みつく彼女の情欲に誠二は抗う事が出来ない。


「私もナツも姉妹でお互い大好きだし、ナツは誠二と両想いでお互いが大好き、それで、私と誠二がお互い好きになれば、私達の関係って共存するでしょ? だから、ナツ。一緒に誠二を虜にしましょう」


 ――無茶苦茶だ。


 口が塞がれて抗議の言葉を上げる事が出来ない。

 夏美は誠二と冬香の二人に挟まれて、身勝手な幸せを手に入れようとしている。

 そして、冬香は恋人の間に入り込みながら、姉妹の幸せを両立する為に嫌だった行為の仕込まれた技術を、夏美と誠二に駆使している。

 二人掛かりの暴力に誠二は抗えない。

 誠二の常識の知る社会の一般常識では、カップルは一対一の関係である。そのはずなのに、夏美が姉妹を挟んだ関係を許容する様な行為を望んでいるかのような行動。頭の中を暴力と快楽に破壊されて、訳が分からなくなる。

 暴力を拒絶できずに、双子の目的の一つである夏美の満足を達成させてしまった。


「誠二はまだいけるでしょ」

「これからお兄さんは、私達の時間を埋めるおもちゃなんだから」


 それまで夏美にキスで溶かされていた誠二の身体は押し倒されて、それまで絶対にカップルの行為でやった事のない行動に、汚れた肉体の一部を飲み込むような行動を冬香が夏美にレクチャーし始めた。

 昼間に冬香にされた事を夏美がしている。夏美がどんどん冬香の手口に染められていく。


「夏美、そこはきたな……むぐ」

「お兄さん少し黙っていてください」


 もうどっちが話している夏美で冬香なのか分からないが、誠二の顔に伸し掛かって身動きを取れなくさせられる。

 誠二の目の前は、足の付けの谷間しか見えていない。

 双子の姉妹に同時に責められる光景は見えないが、誠二は身体になにをされているのかを理解してしまい、身体は興奮しながら、心では良くないと否定している。

 だから、舌を伸ばしてささやかな反撃をする。


「お兄さんもその気になったんだ。ナツ、貸して」


 顔の上に乗っているのが冬香だと分かっても、些細な反撃しかできていない。

 それどころか、反撃に対する激しい応酬が始まる。それまで指導を受けながらの初心者の夏美が拙く初々しくしていた行為を、冬香が変わって全てを吸い尽くすような行為で見本を見せる。


「フユすごっ」


 苛烈な攻撃に誠二の些細な反撃は無意味で、無謀だった。

 二人の姉妹の欲求は足し算ではなく、乗算だった。

 その夜は、夏美と冬香の暴走を誰も止める事無く、欲求が尽きる事もなく、誠二は圧倒的に蹂躙された。

 夏美と冬香の幸せならば自分の身を引くという思いは、当の姉妹によって徹底的に破壊された。


 ――夏美の心はもう、冬香の物か……。


 誠二は理解してしまった。自分の欲求に従わず、夏美を離さなくても、生き別れから奇跡的な再会を果たした双子に勝てるわけがない。

 冬香の経験は自分達よりも過酷で激しい物だった。だから、いずれは奪われるのは時間の問題だった。今はもう、自分は姉妹がイチャつく為の肴にしかならないと理解してしまった。


「ねぇ誠二。さっきは浮気したって自分の事を棚に上げて怒ってごめんね。私が誠二の事好きな気持ちは変わらない。だから、フユとも仲良くしてあげてね!」


 一方的に冬香に蹂躙される中で、誠二は夏美に反論できず、清い彼氏彼女の関係が崩壊していく。

 誠二の心は闇に沈んで、体は夏美と冬香の為のアスレチックに過ぎなくなった。

 もう出る物がない誠二の胸上で、最後の締めは誠二を狩りのトロフィーの様にして、夏美と冬香がキスをして終わった。

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