第14話

 ――怖い。野性的で、悪意はない。ただ欲求に従っただけの暴力が。

 それと同時に、夏美との最初の一回でしかやらかした事のない事故の防止をしていない抜身の火遊びが。

 若く熱い生命力があふれる。


 馬乗りになる冬香と手をつなぎながら、下になる誠二が心地よさに体が動く。

 もう何度も過ちを繰り返していて、今更、もう一つ誤ちを増やそうが関係なかった。

 限界が近くて、快感を求める体が誠二の腰を突き上げる。


「あはっ」

「ああっ」


 過ちを犯した二人の反応は対照的に、冬香は歓喜し、誠二はやらかしてしまった罪悪感に蝕まれて快楽を増大させている。

 冬香は熱に溶けた視線で誠二を見つめ、誠二は恨むように睨む。

 睨みつけられた冬香は余裕そうに微笑みながら、強い抵抗が出来ない誠二をあざ笑っている。


「ナマイキですよ、お兄さん」

「やかましい」


 それから甘える様に冬香が、誠二の胸に頭を預けてくる。いつの間にか、冬香が誠二を呼ぶ言葉が名前にさん付けから、お兄さんという愛称になっていた。

 誠二の中にさっきまであった被害者だった彼女への同情心は、暴力へ批判的な感情に変わった。

 暴力に反省してない冬香がさらなる悪さをしない様に両腕で抱きしめると、反撃に抱き返してくる。

 反省のみじんもない冬香がさらに追い打ちにキスを仕掛けてくる。


「お兄さんは、優しいんですね。暴力に不慣れで、そんなんでナツを満足させられるんですか?」

「夏美はお前と違うからな」

「弱いのに」


 その一言の煽りが、我慢の限界だった。薄汚れたマットの上で二人が暴れる。

 誠二が冬香の身体を下にして見下げる。だが、そんな状況でも冬香は慣れている様に余裕を見せているのが、誠二の気に障った。


「じゃあ見せてくださいよ。お兄さんの強さ」

「このっ」


 煽りに負けた誠二が冬香にされた事と似たような事をする。その行為には大きく性差があるが、結果は変わらない。

 肉が叩き合う。やられたらやり返すを二人の間で繰り返している。

 誠二は好きな夏美と、憎たらしい冬香の外見は似ていても中身が全く違う理解が進んでいく。性格や嗜好、筋肉や感触な差をドンドン理解していく。

 愛情ではない、堕落的で感情的な行動を反復する。

 早く鼓動する心臓と同じペースで、肉の打ち合う音を吸収する物が少ない部屋の中で響いている。

 「はっはっはっ」と、言葉を失い、犬の様に荒い息をする二人の声が、体を打ち合う度に声が押し出される様に漏れる。


「出る」

「来て」


 会話というにはあまりにも短い鳴き声のようなもの。

 野生の二人、誠二が冬香を組み伏せたまま、冬香が誠二の身体を逃がさない様に絡みついた。

 それから誠二の身体は痙攣して出し切った脱力感に襲われて、マットに崩れ落ちる。


「また、いっぱい出したね」


 と冬香が言葉を出しながら、起き上がるとさっきまで自分を扱いていた誠二の身体を愛で始める。

 誠二の呆れた視線もものともせず、甘噛みするように加えると、井戸をガチャガチャと漕ぐように頭を上下に振り始める。だが、もう呼び水も出ないくらいに誠二は乾いている。

 冬香の頭を誠二が手を伸ばして撫でて可愛がる。義兄妹の境界を越えて、一緒に汚れて情が付いてしまった。誠二自身自分がくそチョロい男だって分かっている。

 でも、夏美とは違う体験を彼女はさせてくれた。


「冬香」


 名前を呼ぶと吸い上げ終わった冬香が、見上げてくる。

 その姿が妖艶に感じて、水分の抜けきったような、しな垂れた茎が乾いた身体からもうない水分を吸い上げようと頑張るが、ない物はない。

 両腕を伸ばして誠二が彼女を求める。


「こっちに来てほしい」

「お兄さんは欲しがりさんですね」


 そういいながらも冬香が誠二の腕の中に納まる。

 一回り小さい彼女の身体がすっぽりと納まって、また甘える様に全身を預けてくる。

 誠二が冬香の身体を愛でると、冬香がそれを止めないどころか甘い吐息を吐きながら受け入れている。


「ねぇこれから俺達の関係はどうしようか」

「私は、構ってくれなかったら、別の人に流れますよ。いいんですか?」

「やだ」


 逆に甘える様に誠二が冬香をぎゅっと抱きしめて離さない。

 冬香の身体の熱を知ってしまった。昨日とその前の紹介の日でしか彼女に関わらなかったのに、今日の数時間で夏美と同じくらい大切になってしまった。本当にチョロい。

 その事を分かっている冬香が「ふふ」と鼻で笑う。


「じゃあお兄さんは、私とナツを離さないでくださいね」


 返事は冬香の身体を撫でる手が、その言葉を肯定する。

 ただ、ずっと心残りがある。


「浮気だよな……、これ」

「ふふっ、そうですね」


 それから冬香の身体を愛おしく撫でて、彼女にやり返されて、再び退廃的に時間を浪費し続けた。

 あまりにも心地よくて気持ちのいい関係に、「やればできる」という生命の基本で、人間として社会関係が破壊しかねない行動であるという心配を考える事は無かった。

 そして、気が付いたら夕方になっていた。

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