第24話:エデンガーデン連邦


「ふわー。どの植物もこっちに引いたりしません」


「好意的な植物が多いんですね」


「え? 果実採ってもいいんですか?」


 さて、そもそも座標さえ分かれば、バーングレイス帝国の霊樹を使わなくてもいいらしい。ワープポイントとしての霊樹はたしかに便利だが、同じような技術は千事略決アベノミクスにも存在する。


 その名も「和風ワープ」で、ルミナスは使えるらしい。たまに思うんだがルミナスって呪術の天才か? たまにそんなことを思う。


「よう。アーゾル。無事嬢ちゃんは連れ帰ったみたいじゃな」


「ルミナスは俺の娘だからな。誰にも渡さん」


「それで……」


 キャッキャと明るい笑顔を振りまいているダークエルフたちを見る親方。褐色の肌。銀色の髪。愛らしい御尊貌だが、ダークエルフというだけで唾棄される存在。けれどここでは俺……つまり神樹の眷属が生え揃っているのでダークエルフだからとて差別はしない。


「酒は出来ているぞ。飲むか?」


「もち」


 ついでにダークエルフの皆様用の家を作ってやってくれ。住む場所も必用になるだろうしな。


「留守を任せてすまなかったな」


「いや? お前様は本体は神樹の方じゃろ? わしらが変なことをしないように監視していたんじゃないか?」


「監視はしてないが、ホケーッと聖域を眺めてはいたな。生憎とエルフとしか喋れないから、アバターが無いと異種族コミュニケーションが取れないんだよなぁ」


「アーゾル様! このイチゴ美味しいですね!」


「ミカンも美味しいです!」


「私はニガウリが好きです!」


 俺の本体に話しかけるダークエルフ。俺は苦笑した。もちろん本体の方な。


「美味いならよかったよ」


「とっても素敵です! アーゾル様!」


「これからもよろしくお願いします!」


「わたくしたちは聖域の拡大に尽力しますので!」


 神樹……というよりパーフェクトプラントの方が俺の性質をよく表しているように思えた。もはや植物であればなんにでもなれるという。そもそも神樹ってなんだ?


「信仰の対象かもしれんな。とにかく今は全員の無事を祈ろうじゃないか。エルフの王国はどうだった?」


「聞くな」


 何があったって。女王をブタだと吐き捨てて、その尻に鞭を打ったとか言えるか。しかも去り際に「またお姉様にお仕置きされるために出向きますので」とか言われると、精神的な疲労が青天井。


「嬢ちゃんも大丈夫だったか?」


「…………ママが助けてくれたから」


「さいか。じゃあ良かったな」



「ていうか畏怖イフの術式でどうにか出来なかったのか?」


「…………気分的に遠慮が入ると術式の成立が難しいです」


 そういう誓約で成り立っているのかもしれんな。


「それでじゃな。アーゾルよ」


「そうだな」


 そう言って酒蔵から樽を取り出す。中に入っているのはビールとワイン。


「えーでは、第一回聖域会議を開始します。皆さまカップをお持ちください」


 俺。ルミナス。イゾルデ。ドワーフが三人。ついでに新規で移住してきたダークエルフ十五人。それらに酒が行き届いて、その酒の入ったカップを掲げる。


「では第一回目の議題は聖域に名前を付けることです。酒を飲みながらいいアイデアを出し合いましょう。それでは乾杯!」


「「「「「乾杯!」」」」」


 そうして飲み会が始まった。酒は豊富にある。というか酒を造るための果実や穀物が無限にあるのだ。ここで暮らす限り餓死は無いと言える。ビールは一ヶ月もあれば作れるし、清酒はそんなものだろう。俺としては日本酒とか焼酎とかも造って欲しいのだが。米と麦とイモを提供するか。


「…………ママ……飲んでる?」


「飲んでるぞー。ルミナスも飲めているか?」


「…………果汁で割ると甘くて美味しい」


 なるほど。その手があったか。このまま酒文化は続けるとして。カクテルとかも視野に入れるのはいいかもしれない。とすると炭酸の技術とかも欲しいな。ハイボールとか飲みたいかも。


「…………聖域の名前は考えた?」


「それがな、うまい奴が思いつかなくて」


 グイッと酒をあおる。ああ、うまい。


「シャングリラとかエルドラドとかも考えないではなかったがしっくりこんのよなぁ」


「…………超すげえ聖域とかどう?」


「却下」


 ルミナスはあんまりネーミングセンスがないことはわかった。


「アーゾル様ぁ。飲んでますかぁ」


「飲んでるぞ」


「神樹アーゾル様はお飲みにならないのですか?」


「所詮樹だからなぁ。だが酔いの感覚はアバターと共有しているし、ちゃんと本体も酔ってはいるぞ」


「ここはダークエルフにとって住み心地のいい場所ですね。とっても素敵です」


 そりゃよかった。


「聖域の名前ですが聖域じゃダメなんですか?」


「そもそも聖域なんて名乗っていい集落でもないしな」


「では一つ!」


「おう。アイデアは大歓迎だぞ」


「エデンガーデン連邦!」


 エデンガーデン連邦……ね。俺が思案していると、ドワーフの親方が食いついた。


「いいじゃねえか。エデンガーデン連邦……か。聖域っぽいイメージを損なわないで綺麗にまとめている」


「親方的にはあり?」


「支持するのじゃ」


「じゃあ決を取るか」


 乾杯して全員に酒をあおらせ、そうして全員のカップを空にする。そこに酒を継ぎ足して、そうして集まって議論する。


「エデンガーデン連邦。賛成の人は挙手!」


「「「「「はい!」」」」」


 ほぼ全員が挙手した。そんなに気に入ったのか。確かに俺としてもいいなとは思ったが。


「ではこれよりこの聖域はエデンガーデン連邦と呼称するぞ。以後シクヨロ!」


「めでてぇ! 飲むぞ!」


「ああ、飲もう」


 そうして俺はアバターのまま酒を飲みまくった。


「王様~。お酒造りはこれからダークエルフも関わってもいいですかー?」


「酒を造るのは幾らでもいいぞ。頑張れ。ところで王様って?」


「ダークエルフの話し合いで決まったんです。アーゾル様は神樹にしてエルダーエルフ。つまりエデンガーデン連邦の王様として敬意を表しましょうと」


「いいんじゃねえか? たしかに神樹アーゾルがエデンガーデン連邦の要だ。そういう意味ではアーゾルが王様には違いないのじゃ」


 ケラケラと笑ってビールをあおる親方。俺もグビグビと酒を飲み続け、まぁ王様でもいいかぁ程度のことは思った。そして次の日。二日酔いに悩まされるのだった。













※――――――――――――――※


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