第22話:陰陽二兎《インフィニット》


 周囲のエルフは絶望していた。埋葬術が通用せず。弓矢の類は燃やされ。そもそも近づいて攻撃するというのは不可能。ではどうするかと頭をひねると、あんまり手段も無く。


「引いてろ」


 しょうがないので代打が俺だ。


「ダークエルフ……ッ!」


 そう言う反応にもなるか。女王を足蹴にしていた俺のサドっぷりを見ていた一人が指揮官だ。さすがに周囲に吹聴する真似はしないと思うが、別にされてもいい気はする。その彼女は俺を怨敵でも睨むように見て、そして聞く。


「どうする気だ?」


「真正面から突っ込む」


 すでに陽炎が立ち上っている青年の炎のテリトリーを見て、そう言った俺に、正気を疑う真似をするのは真っ当で。


「死ぬ気か?」


「まさか」


 俺であれば戦闘が可能だというだけだ。


「あー、お前?」


「なん? なん? なんだ?」


「名前と目的を言え」


「あ、あ、あ、そうだな。名前はバーナー。目的はエルフの殲滅だ」


 すっげー分かりやすいのだが、そもそもエルフに恨みでも?


終焉死因ラストシーンは絶賛世界の終わりを賛礼中」


「ラストシーン?」


 バーナーなる青年が所属する組織だろうか? しかし終焉死因と書いてラストシーンって。まぁネーミングに文句をつける義理も俺には無いのだが。というか、リリスが言っていた組織じゃなかったか?


「その終焉死因ラストシーンがエルフを終わらせるために来たのか?」


「俺は焼死のバーナー。焼き殺すための死因だ。終焉死因ラストシーン因果物語インガストリーだ」


 イマイチ要領をえんのだよなー。


「その終焉死因ラストシーンの目的って……」


「世界の終わり」


 だろうな。分かりやすいくらいに分かりやすい。


「で、で、で、それを知ってお前はどうする?」


「叩きのめす」


 それが出来ないわけじゃない。言った瞬間。俺は加速した。相手が何を思っているのかもしれないが、俺はあっさりと懐に潜り込む。そのまま崩拳を放って、バーナーをえずかせる。


「なん……?」


 あっさりと殴られたのは危機感の欠如故か。それとも近づけば燃えて死ぬとでも思ったか。生憎と防御性能においては俺の呪術は随一だ。


「お前は何だ……?」


「単なるダークエルフだ」


 決して単なるをつけていい存在ではないが、まぁそれはおいおい。


「殺していいのか?」


「可能ならな」


 吐き捨てるように俺が言うと、手を持ち上げるように上げて、そこから炎をとりだすバーナー。自分を起点に炎を出すということは収束系か。であれば相手は難しくないが、時間をかけるほどに森が炎に染まってしまう。


「で、あれば……」


 短期決戦。俺が真っ直ぐバーナーに踏み込むと、


「バニシングバーニング!」


 強烈な炎が真正面に放たれた。それこそ大樹であっても一撃で炭にされそうな炎が俺目掛けて奔流する。その勢いを俺は聞きも覚えず突っ込む。そうして。


「ッッッ!?」


 一撃で炭化するはずの俺が炎の帳から真っ直ぐ直進したことを瞠目しているバーナーが、俺に殴られた。


「が……ァッ!」


「まだボコるぞ」


 さらに一撃。二撃。三撃。


「なんで……お前は……燃えない……」


「言うほど特別なことはしていない」


 単純な話だ。反転系統の呪術。陰陽二兎インフィニット。それで伝達する熱を反射しているだけ。なので、俺に物理攻撃は効かないし、呪術による攻撃にも対処が可能だ。言うほど難しいことをしているつもりもない。


「燃え死ね!」


 さらに炎を放つバーナー。だがその熱は俺に届かない。とはいえだ。このまま相手の呪術行使を許すとこの森が灰になる。焼き畑農業には手っ取り早いだろうが、まさかそんなことをエルフが望むはずもなく。


「死ね! 死ね! 死ね!」


 さらに三度。炎を操って俺を燃やす。だがその全てが徒労に終わった。


「終わりか?」


「くっ」


 そもそも終焉死因ラストシーンなる組織が何を思ってエルフの王国を相手取っているのかもよく分からないのだ。世界の終わりが目的なら、さっさと滅ぼしてしかるべきだろうに。


「うーん」


「汚いぞ貴様! 堂々と燃え尽きろ!」


「いや、そうすると痛い思いをするかなら」


 何でも火刑って処されるとかなり地獄らしい。


「そもそも武士道防御キャーバリアを使えるって時点でアレなんだよなぁ」


「キャーバリア?」


 知らないで使っていたのか。呪術を呪術と知らずに使える類。となると俺にとっては不本意な推測が浮かび上がる。


「焼死のバーナーだったか? お前に炎の術式を提供した奴がいるだろ」


「知っているのか?」


「知らなくていいんなら知りたくなかったがな」


 鬼と戦ったことのある俺は、まさに苦労していた。


「チャイルドのことを……知っているのか」


 チャイルドねぇ。となると大体鬼王の誰かなんだろうな。まさか異世界に来てまで鬼王と関係を持つとは思わなかったが。だがそうすると、俺の事情にも勘案が必要というか。


「ひは!」


 さらなる炎。だが俺は燃え尽きない。そもそも呪術だろうと干渉する類の術は俺と拮抗するのだ。


 轟々と燃え盛る炎の中で、俺は一人佇んでいる。エルフは周囲にはいない。もはやその場にいるだけで全身が一度の火傷をする程度には空間が高温だ。ルミナスにもイゾルデにも下がるように言っているし。そもそも理性的な危機感を持っていれば、まずこの高温に身を置こうとは思わないだろう。


「で? どうする?」


「なんのことだ」


「お前の炎は俺には効かない。これ以降は俺はお前をタコ殴りにするぞ」


「できるか? できるのか?」


「難しい話でもないな」


 京八流無手活法。それによる鬼との近接戦闘は死ぬほどやってきた。そもそもだが、武士道防御キャーバリアを持っている鬼に銃火器は効かないのだ。魔術も効かない。なので埋葬術ではどうにもならない。それがエルフにとってバーナーにアドバンテージを得られなかった理由だ。武士道防御キャーバリアは武士道に通じる攻撃以外を濾過して防ぐ。なので拳法や剣術、弓矢でないと攻撃が認められない。例外が呪術で、元の世界で呪術師やサムライが現役だったのは、つまり武士道防御キャーバリアに依存するシステムであったが故だ。鬼は呪術師かサムライにしか仕留められなかった……と、そういう。













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