第10話 あまりにも突然に

「人狼ゲーム!?」

 数分後、両手にいろんな物を抱えて帰ってきた。

 おやつに軽食、そして───カードゲームの、人狼ゲーム。

「まさか人狼ゲーム中に人狼ゲームで遊ぶことになるとは…」

 マユが苦笑する。

「なんか遊べるものでもないかと部屋あさってたら見つかったんだよ。俺、よくやってたからかなー」

 そう言いながらカイがカードを出していく。

青いカード、赤いカードが裏返されて混ぜられる。最初の、あの時を思い出す。

「それじゃ、早速始めようぜ!」


 


 時間はあっという間に過ぎ、そろそろ夜の鐘が鳴る時間だ。

 あれから僕たちはカイの持ってきた食料をありがたくいただきながら人狼ゲームで遊んだ。

 気を張っていたせいか眠気が来て、僕たちは壁際に移動してもたれて座っていた。左からカイ、僕、ユリム、マユの順だ。

「私が起きています。何かあったら皆さんを起こしますね」

 マユがそう言った。頼もしい。

「私も起きてられるよー」

 ユリムも伸びをしながらそう言う。

 カイは、すでに壁にもたれかかって寝ている。

 僕は二人に任せることにした。

 僕は昨日の夜変な時間に起きたせいか、今日はとてつもなく睡眠不足だ。

 寝ないとまずい。

「僕は、二人に任せるよ…」

 瞼が落ちてくる。身体が夢の中に落ちていく感覚。意識が溶けていった。

 

 

      *  *  *

 

 

 僕は目を開けた。

 壁にもたれかかっていたカイは、いつのまにか僕に寄りかかって寝ている。本当に信頼されているんだな、と嬉しく思う。

 僕は腕時計で時間を確認した。

 

 5:56

 

 よく寝れたみたいだ。

 たしか、朝の鐘が鳴るのは六時だ。

 隣を見ると、ユリムがいた。

 ユリムは、起きているようだ。

 六時まで、あと数分。ここにいる僕らが全員無事ならば、恐らくアイマが殺されたことになる。

 マユは、無事だろうか。

 僕はユリムの隣にマユがいるのを確認しようと身を乗り出した。

 その時。

 生々しい嫌な音。

 目の前が紅に染まった。血だ。

「!?」

 何だ。何が起こった。

 突然のことに混乱する。

 マユはぐったりと眼を閉じている。

「マユ、大丈夫か!?」

 声が裏返る。心臓がうるさい。

……返事は、ない。もう、マユが目を開けることは、ない。

「今……」

 ユリムが目を見開いて僕の方を見る。

 ユリムの頬にマユの血が飛んでいる。

 ユリムが持ち出したナイフは、彼女の膝元に落ちていた。生々しい血がついている。乾いていない。明らかに、今付いた血だ。

「何が起こったんだ……!?」

 理解できない。

 本当に一瞬だった。

 朝の鐘が鳴る直前。一瞬で、マユが殺された……

 カイはまだ目覚めていない。

 目の前には、つい先ほどまで生きていたマユの亡骸。目が見開かれている。


ボーン ボーン


 朝の鐘が鳴り響く。

 僕達は混乱したまま、身体が透け、力が抜けていき、意識を飛ばされた……

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