痛みを忘れたふりをして。
夜凪奏
雨の帰り道
公園のベンチに座って空を見上げた。
天気予報だと、今日は雨だっけ。
頬を雫が伝う。きっとこれも雨だ。
やがて雨が降り出した。
周りには誰もいない。
僕は一人、傘も差さず雨の中の公園を歩く。
雨に濡れたい気分だったんだ。
だから、もう、いいからさ。
その傘を退けてくれよ。
どうして君は泣いてるの?
分かんないな。
君は僕じゃないのにさ。
ほら、みんなみたいに笑ってよ。
僕一人いなくなったって、別にさ。
だから、うん、泣かないでよ。
そのままじゃ君が濡れちゃうよ。
分かったから。
僕の負けだから。
早く傘に入ってよ。
一本しか無い?
僕はもういいから。
今度は怒った顔。
分かんないよ。
どうして君は笑ってくれないの?
分かったから。
僕も入るから。
足元に水溜まり。
僕は足を滑らせた。
あーあ、起き上がりたくないな。
君は僕に手を差し伸べる。
今度は心配そうな顔。
分かんないな。
だけど、一つだけ分かったよ。君のこと。
みんなとは違うってこと。
僕は君の手を取った。
君は僕を力強く引っ張る。
そして僕は立ち上がった。
だけど勢い余って二人で倒れ込む。
立ち上がるとお互い泥だらけ。
二人して笑った。
僕と君との二人だけの世界みたいで──
さあ、帰ろっか。
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