幕間
EX.1 一方その頃(side:長名馴染)
《side:長名馴染》
「ここ……は?」
魔法陣の放つ眩い光に身を包まれた私達は気づくと見知らぬ場所にいた。
魔法陣を囲うように柱が立っている純白の部屋で、魔法陣にはステンドグラスから光が降り注いでいる。
そこはまるで神殿のように荘厳だった。
「御機嫌よう、遥か遠き異邦の世界より召喚されし勇者様方よ」
私達の目の前にいたのは絢爛豪華なドレスを着た美少女。
スカートを掴み、優雅に頭を下げている。
まるでお姫様のようだ。
これは……あれね。
異邦の世界より召喚されたという言葉から推測するに、ウェブ小説でよくある異世界召喚とかなのだろう。
私たちが経験することになるとは思わなかったわ。
「私はイリーナ。カルディア王国第1王女イリーナ・フォン・クラウリウスでございます。突然の事にさぞかし混乱されていることでしょう。説明を行いますので、どうぞコチラへ」
長い廊下を歩き、たどり着いたのは玉座の間。
貴族が騎士が一同に並んでいる。
「よくぞ来た。女神様に選ばれし勇者達よ」
玉座に座る女性が尊大に口を開く。
そしてその隣には、金髪の騎士が純白のマントを靡かせていた。
あれ、ここ室内よね?
風とか一切ないわよね?
なんでマント靡いてるのかしら……。
なんなら髪も靡いてるし。
「余はカルディア王国女王、ソフィア・フォン・クラウリウスである」
「私は山田星美。ここにいる子ども達の教師です」
先生が一歩前に出た。
「貴殿らを召喚したのは、封印を破りし大魔王を討伐してこの世界を救ってもらう為だ」
「大魔王、ですか」
「ああ、そうだ。魔王を統べる王、この世界で最も強き覇者。魔人族の究極。それが大魔王だ。本来の大魔王は善良なる王だったと聞く。だが邪神の手によって堕落し、人類を滅ぼさんとする世界の敵となってしまったのだ」
「それを私達に殺せと?」
「そうだ」
「私たちに魔人族と戦争させようと?」
「ああ、そうだ」
「ここにいるのは皆子供。そしてこの世界になんの関係も義理もない。それを理解していますか?」
低く冷たい声が響く。
先生は怒りを押し殺すように、会話を続けた。
その表情には怒りが滲んでいる。
「理解しているとも。貴殿の怒りもな。本来であれば殺し殺されに一生縁のない、平和な世界で育った子供。戦う者ではなく、守られる立場の者たち。それを理解した上で、貴殿らとは関係ない世界を、赤の他人を救う為に、命を懸けて戦うことを、戦争をすることを要求しているのだ」
この様子じゃ、拒否権なんてなさそうね。
「女神様の神託を受けた。大魔王の封印が解け、世界は闇に包まれる。そして、この世界の戦力だけでは敵わぬと。此度目指すは封印ではなく討伐。故に異世界から勇者を呼び寄せる必要があった」
「私たちは戦闘経験もないただの一般人です。戦える筈がありません」
「勇者召喚の魔法陣には女神様のお力添えによって召喚された者の素質をスキルという形で引き出す効果がある。訓練なしで覚悟も決まっていない状態であっても、そこらの兵士に負けることはないだろう」
なるほどね。
確かにこの世界に来てから、力が張るような感覚がある。
大体……十数倍くらいになってるかな?
「元の世界に、帰れるのですよね?」
「大魔王討伐が終われば元の世界、元の時間に帰還でき、肉体も元の世界での年齢まで若返る。更に、女神様は貴殿らが死んだ際、元の世界で蘇生することを確約してくださった。その場合、力も、記憶も、この世界由来のものは全て失うがな。つまりこの世界で何年過ごしても、何があっても、元の世界で問題が起きることはないだろう」
よかった。
戻れるんだ。
これで元の世界に戻れませんなんて言われたら絶望して魔王討伐どころじゃなかった。
まあ、例え不可能だと言われても絶対に諦めず元の世界に戻る手段を探し続けただろうけど。
なんなら蕾がこっちに来てもおかしくないのよね。
あの子自覚ないけど割と愛の力で物理法則超越してる時あるし。
「ふぅ……分かりました。ですが3つ、条件があります」
「言ってみるといい」
「1つ、衣食住の確保。無理矢理誘拐しておいて自分で用意しろ、なんてことは言わないですよね?」
「当然だな。貴殿らにはこの城に住んでもらう。最高峰のもてなしを用意しよう」
「もう1つは力の使い方と知識を学ぶ場を用意することです」
「もちろん最大限の支援はする。訓練も、武具も、金銭も、道具も出来うる限りのものは用意しておいた。図書館も解放しておくから自由に読むとよい」
「そして最後、人間同士の争いに関わらせないこと。そもそも殺しなんてして欲しくありませんが、この世界に召喚された時点でそれは無理そうですので。魔王討伐はしますが、戦争等に巻き込まないでください」
「ああ、いいだろう。もとよりこれはこの世界の問題。本来であれば魔王討伐すらも我らの手で成さなければならぬのだからな」
話が分かる女王様ね。
ウェブ小説でよくあるざまぁされる王様とは全然違うわ。
「ではこれから貴殿達には自身のステータスを確認してもらう」
魔女の格好をした女性が何冊もの本を浮かせながら運んできた。
それぞれの手元に本がフワフワと移動する。
「こちらが
そうして渡された本に、血を一滴垂らした。
本は光を放ち、勝手にページが捲れていく。
白紙のページに、文字が浮かび上がった。
【真名】
【
【
【スキル】
『
*あらゆる武具を使いこなす。
*あらゆる武具の力を極限まで引き出す。
*あらゆる武術を使いこなす。
*神性を得る。
*自身の全能力12倍。
*並列体を生成し12人に増える。
『
*神性への特効を得る。
*権能への抵抗を得る。
*一時的に天至状態になり全能力が5倍する。
*統一言語使用可能。
*対象を混乱させる。
*獣への特効を得る。
*男性への特効を得る。
*巨大化する。
『
*雷を操作可能。
*雷属性付与。
*雷魔術の出力5倍。
*仲間、部下の能力5倍。
*騎乗技術を極限まで引き出す。
*騎乗時敏捷性3倍。
*部下や仲間に英霊を付与する。
「私が……勇者!?」
「まあ、当然よね。馴染だもの」
前から思ってたけど星歌って私への評価高いわよね。
「スキルは『
ヘラクレスは有名な英雄だから私も知っている。
先生にも教えてもらったし。
でもニムロドとイスカンダルは分からない。
そう思っていると先生が解説を始め、星歌がそれに続いた。
「ヘラクレス、ギリシャ神話における大英雄。神々の王ゼウスと人間の女性アルクメネーの間に生まれた半神半人。ヘラの栄光を意味するヘラクレスの名を持ちながらゼウスの妻、女神ヘラに呪われ波乱万丈な人生を送ったわ」
「一番有名なのがヘラクレスの達成した12の難行ね。12の功業とも呼ばれる試練よ」
曰く、あらゆる武具を弾く毛皮を持ったネメアの獅子を退治した。
曰く、9つの首を持ち猛毒を吐く竜ヒュドラを討伐した。
曰く、女神アルテミスですら捕まえられない素早さを誇るケリュネイアの獅子を捕縛した。
等々様々な試練を乗り越えたらしい。
「12の試練の他にも、大地に触れている間無限に復活し無限に強まる力を持つ巨人アンタイオスに打ち勝った、死の神タナトスから魂を奪って蘇らせた、など逸話には事欠かないわね」
「なるほど、それだけの大英雄がスキルとなったならばこの強さも頷ける」
武術を使いこなせて全能力12倍で12人とかチートにも程があるわね。
今なら学校の校舎を一撃で半壊させれる自身があるわ。
あとは神性のお陰かしら。
なんていうか、寿命が延びたような、老いにくくなったような、そんな感覚があるわ。
「ニムロドは旧約聖書において地上で最初の勇士にして狩人。そしてバベルの塔の建設を命じた王ね。イスカンダルはアレクサンドロス3世の別名よ。類まれなる指揮の才能を持ち遠征を繰り返し、大帝国を築き上げたわ」
先生がそう解説する。
「それにしても……。ただでさえゴリラなのに12倍とか正気か? 蕾に再会したときハグで絞殺しちまうんじゃねえの?」
「誰がゴリラよ」
ホントにこいつ一回絞めようかしら。
失礼しちゃうわね。
「そういう獣乃はどんなスキルなのよ」
「俺はこれだな」
【真名】
【
『
*理性をなくし狂化する。
*自身の遠距離攻撃に必中の性質を付与する。
*自身の遠距離攻撃の速度を5倍にする。
*自身の攻撃に防御無視の性質を付与する。
*自身の攻撃に不治の性質を付与する。
*自身の敏捷5倍。
*理性を捨てても万全の技量を発揮できる。
*光属性を付与する。
*神性を得る。
*痛覚半減。
『
*自身の肉体を獣のものに変化させる。
*自身の筋力5倍。
*自身の耐久5倍。
*自身の敏捷5倍。
*五感が極限まで研ぎ澄まされる。
*鬼への特効を得る。
*雷属性を付与する。
*山で行動する場合に地形、環境の影響を受けない。
『
*自身の筋力5倍。
*装備重量無視。
*聖獣への特効を得る。
*神獣への特効を得る。
*老化しない。
*神性を得る。
*他者から権能を借り受ける。
*城壁を生成する。
「アンタも大概脳筋じゃない」
「馴染のことゴリラとか言ってるけど筋力25倍なら大差ないんじゃない?」
「ねえ? 私のことなんだと思ってるの? 25倍と12倍じゃ全然違うんだけど?」
いくら何でもこの差を覆せる程力強くないわよ。
「いやだって、ねぇ?」
「な、馴染ちゃん……ですから」
みんなして私のことイジメてる?
しまいにゃ泣くわよ?
「せいっちはどんなステータスだった?」
「私はこれね」
【真名】
【
【天職】
【スキル】
『
*あらゆる悪意、あらゆる不浄を弾く守護障壁を展開する。
*呪いを無効化する。
*味方へのダメージを肩代わりする。
*敵の攻撃目標を強制的に自身に変更する。
*自身の血に治癒の性質を宿す
*自身の攻撃に不治の性質を付与する。
*自身の耐久13倍
『
*最大12人の聖騎士の英霊を召喚する。
*30種の聖遺物を亜空間から射出する。
*あらゆる馬を乗りこなす。
*水中で呼吸可能。
*自身の血に癒しの力を宿す。
*死亡時自身に最も縁のある天使系スキル保持者の中に魂が保管される。
『
*竜相手への特効を得る。
*文明由来の武器からの攻撃を半減する
*毒を無力化する。
*
*自身の持つ知識を相手に共有する。
*水属性に状態異常解除の性質を付与する
*騎乗技術を習得する
「星歌はタンクかぁ」
というか蕾の敵からの攻撃を半減するって……。
蕾への想いがスキルにまで影響してるじゃない。
え、私も欲しいんだけど?
なんならスキル名が蕾になったりしないかしら。
「この能力、実質常時発動型じゃないですか? 星歌ちゃんを攻撃する奴は蕾にとって敵ですし」
ああ、確かに。
この能力が発動しない時なんて訓練とか身内同士での喧嘩ぐらいね。
「文明由来の武器からの攻撃を半減して、蕾の敵からの攻撃を半減する。大抵の相手からの攻撃を四分の一に出来るとかチート過ぎない? おまけに耐久13倍だし」
「まあ星歌、昔から頑丈だったものね」
「なじみっちに全力で殴られてもギャグマンガみたいなたんこぶ1つ出来るだけだしねー」
そんなことを話しながらみんなも次々と本に血を垂らしていく。
他のみんなもとんでもスキルばかりだった。
全員が英雄や神の名を冠するスキルを3つ持っており、
「ね、ねぇ。本当に私の
「いいじゃない。蕾なら喜んでくれるわよ?」
蕾、仮〇ライダーとかスー〇ー戦隊とか変身する系の大好きだしね。
まあ恥ずかしいのも理解できるわ。
それポーズとか必要なんでしょ?
「でも
「まあ
呪いを始めとした黒魔術に特化したスキル構成。
オカルト好きの知慧瑠にぴったりだ。
魔法少女なのがノイズだけど。
というか異世界にもあるのね、魔法少女。
「全員、
「僕も着いて行こう」
イリーナさんの言葉を遮るように、女王様の隣に立っていた騎士が前に出た。
「初めまして。僕はレオン・ラインハルト」
レオンと名乗った青年は、爽やかな笑顔をこちらに向ける。
「聖剣の担い手、この世界の勇者だ」
―――――
【真名】レオン・ラインハルト
【
【性別】男性
【身長/体重】185cm/54kg
【属性】秩序・善
【特技】全て
【趣味】料理、人助け
【好きなもの】笑顔、希望、花畑、人、家族
【嫌いなもの】悪意
【苦手なもの】家族
【備考】
高潔で清廉潔白、正義感が強く性格までイケメンでお人好しな好青年。
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