転生賢者のリスタート(仮)

@sima8595

0話 プロローグ

ガキーン、そんな耳をつんざくような音が激しく何度も響く。

それは、剣と剣の鍔迫り合い。

「貴様を倒して、この戦争を終わらせる!」

そう叫ぶのは一人の男。

勇者と呼ばれ世界を正す者。

その男の周りには、三人の仲間の姿がある。

一人は、戦士として勇者とともに剣を振う。

一人は、魔法使いとして勇者の援護をしする。

一人は、聖女として傷ついた勇者を癒やす。


──正直連携が取れすぎていて崩せるものではない。

だってしょうがないじゃん!あっちは四人パーティーなのに対してこっちは俺だけである。

正直言って無理である。


それに向こうには、奥の手がある。

「賢者」そう呼ばれた人が二人もついてる。

そんなことを考えているさ中でも勇者一行の攻撃は止まらない。


「世界のためにここで死んでください!」

そんなことを、言う魔法使い。

もちろん、魔法が飛んでくる。

それより強い魔法でかき消す。

ていうか、死んでくださいってひどい。

普通に傷つく。

「氷の賢者であるあなたが何故こんな、世界を滅ばすなんて言うのですか!?」

聖女がそんなことを聞いてくる。

「世界を元のあるべき姿に戻すためだ」

少しドスを効かせた声でしゃべる。

あ、やべ少し喉を痛めちゃった。


…うん、正直に言おうこれは茶番である。

勇者一行と戦っているのも、今までのセリフもすべて台本があるのだ。

なので俺は、勇者一行とは普通に友達である。

というか俺は、「賢者」である。

え、さっき聖女が言ってたからしってる?あぁそう。

まぁ八人いるんだけど、もう生きてるのは俺と光の賢者と水の賢者だけだろう。

それ以外は、勇者に殺された。


この茶番劇が起きた理由を語るには、少しこの世界の状況を知る必要がある。

この世界は今、各国が略奪や侵略その報復などが頻繁に起きている。

正直これは、異常だとしか言いようがない。

隣国が戦争を始めたらその国に行き金品を奪ったり、奴隷にするために人さらいをしたり、そんな事が日常と化してしまっていた。

正直この異常事態の原因の一つを作ってしまった身としては、罪悪感でいっぱいだ。


事の発端は、この世界に"属性魔法"が出来たのが大きな要因だろう。

きっと、絶対、100%そうに違いない。

因みに騒動の元となった魔法を開発したのは何を隠そう俺だ。

元々は、古代魔法と魔術があったのだが、魔術は如何せん発動にそるには複数人と長すぎる時間がかかっていたし、古代魔法に至っては特定の種族だったり、神職に就いてる者しか扱えなっかたりと制限が多かった。

それを解消するためにできたのが八つの属性魔法だった。


賢者が作った新しい魔法、ということで瞬く間に世界中に知れ渡ることとなった。

その手軽さ、威力、それらは良い護身なった。

説明し忘れていたが、この世界には魔獣という各種族共通の脅威がいる。

魔法はこれらへの対抗手段になるはずだった。


しかし、現実は違った。

嫌いな種族の虐殺、嫌いな国への侵略、領地拡大のため侵攻。

そんなことをし続けていれば人も世界も取り返しが付かなくなるのは分かり切っていた。

だからこそ、八人の賢者と勇者、聖女で一芝居打つ必要があった。

そう芝居。

ドラマチックに負ける必要がある。

だから、俺これでも賢者なので世界中見ても上から数えたほうが早いくらい強いからある程度手加減してるんだけど、ワイバーンとかとため張れるやつを余裕で倒せるくらいの力は出してるんだけど、なんか押されてるのなんで?


と、そんなことどうでもいいや。

そろそろ頃合いだし負けるか。

そろそろ一般兵たちが、この場所まで来そうだからだし。

このまま押し切られそうだからとかじゃないから。

その辺間違えないで。


扉が開く。

光の賢者と水の賢者が一般兵たちを連れて入ってくる

「勇者に続くのじゃ!!!!!」

そんなことを言ってる光の賢者を横目に見た後、勇者の目を見る。

「…」

コク

勇者がうなづいたのを確認した。

勇者も頃合いだと判断したのだろ。

ならやることは決まってる。


「その首切り落としてやる!勇者!」

そうして大振りな攻撃を出す。

もちろん魔法は使わない。

ただの直剣は…あんまり得意ではないが、こちらのほうが隙を見せやすいからだ。

ほんの一瞬、それで十分だった。


「──ふん!」

その一瞬の隙に一突き。

勇者の持つ剣は俺の体を貫いた。

「あ、ガ…ハァ」

吐血する。


勇者だけに聞こえる声で話す。

「あり…がとう…ごめん…な」

「あとは…託した…」

「ああ、託された」

「もし…来世で会えたら…また友として…」

「さよなら、また会う時まで」

それだけ話すと、勇者は俺の体から剣を引き抜いた。


兵士たちは雄たけびを上げ勝利を喜ぶ。

二人の賢者は少し悲しそうにしている。

飛び出た鮮血は、勇者の顔を汚していく。

その血の中に一筋の涙が出たのを見ながら俺は、約300年に及ぶ人生を閉じたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る