Day9 ぷかぷか
ぷかぷかと、頭上を流れていくりんごの尻を見上げた。
尻と言ってもそれが本当に尻なのかはわからない。ただ同じ穴の小魚がそう言っていたことを沢蟹は思い出したのだ。小魚は自分の尾がそれにあたると自慢して、沢蟹は振り返って見ることの出来ない我が身の不自由さを嘆いて泡を吹いた。
それは虹色の泡だった。揺らめく空を透かして入る天上の光が幾重にも重なって、この薄暗い水底にはない色を辺りに揺らめかせる。
ぷかぷかと、中空へ立ち昇る虹色の泡を見上げた。
なるほど、不自由な体は上を見るのに長けている。
沢蟹はとっ、と砂地を蹴り、ぷかぷかと流れていくりんごの尻をちょんと突き上げた。
こんなことが出来るのは自分だけと、またぷかぷかと虹色の泡を吹きながら水底へと降りて行った。
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