第33話 再集結、最強の勇者パーティー

「セシルス!」


 思わず、その名を叫んでいた。鋼色の長髪をかき上げながら彼は涼しげに手を掲げる。その瞬間――半身だけ凍りついていた魔物の巨体が、音を立てて全身ごと凍結していく。氷の結晶が街中を覆い、息が白く染まった。


 俺は駆け寄り、彼の姿を確認する。


「お前……来てたのか!」


「ええ。アイラが一向に帰らないから心配でね。――詳しい話は後です。まずは、あの魔物をどうにかしましょう」


「あぁ!」


 俺は自らに宿る【伏魔雷光】を、セシルスにも共有する。瞬間、全身を駆け巡る膨大な力。俺とセシルスの瞳が、赤々と妖しく輝いた。


 俺はエルドリスを構えて魔物の巨体へと飛び乗り、セシルスは長大な詠唱を開始する。

 ――その刹那、凍結していた魔物の体表にひび割れが走り、氷を粉砕して俺を振り払おうとする。


 だが俺は、その腕の動きを上回る速度で避け、すかさず刃を突き立てる。鋭い剣閃が、腕の付け根を裂き、鮮血が噴き出した。


 怒号のような咆哮を放ち、魔物は狂ったようにセシルスへ突進。氷片を蹴散らしながら、空中に無数の斧を生み出し、セシルスの頭上へ降り注がせる。


「コイツ!」


 数十の刃が落下する瞬間、セシルスの目が冷たく輝く。


「――【アイス・エンド】」


 その声と同時に、世界が凍りついた。

 街並みも、振り下ろされる斧も、そして魔物さえも――一瞬で氷の牢獄に閉ざされる。


 ……だが、セシルスの表情に安堵はなかった。


 ゴゴゴッ……と地響き。氷像と化したはずの魔物が砕け散り、より禍々しい魔力を纏って姿を現したのだ。


「セシルス! このままじゃ街がもたない!」


「ええ……ですが、ここからは私たちの出番ではないようですね」


「――ッ!」


 セシルスの言葉と同時に、魔物の体が一斉に切り刻まれていく。不可視の刃に裂かれ、動こうとする巨体は光の鎖に縛られ、封じられた。


 そして次の瞬間――魔物の足元から獄炎の火柱が立ち上る。焼け爛れる肉。咆哮を上げるも、鎖に拘束された体は逃げられない。


 その光景の中、俺の前に姿を現したのは――アイラ、ジン、そしてアリサだった。


「ようやく、揃ったわね」


「セシルス! おひさしぶり!」


「あなたがいなかったせいで、ずっと野宿してたんですからね!」


 かつて異世界を救い、魔王をも討ち果たした――最強の勇者パーティ。再び全員が揃う瞬間が訪れた。


 ジンが俺の肩に手を置く。


「最後は……リーダーに任せる」


「――ッ、あぁ! 任せろ!」


 雷鳴の如き勢いで、俺は仲間たちを背に駆ける。

 エルドリスが閃光を放ち、巨大な魔物の体を縦に断ち切った。


 紫に染まる血肉を撒き散らしながら、魔物は崩壊していく。俺はその胸奥――心臓たる魔石へ剣を突き立てた。


 砕け散る音と共に、巨体は砂のように崩壊し、虚空へと溶け消えていった。


 残骸を見届けながらも、俺の意識は銀髪の男を探していた。だが……どこにも、その影は見当たらなかった。


「なぁ、みんな……」


 振り返ると、仲間たちが揃って「何?」と返す。


 俺は剣を収め、満面の笑みを浮かべた。


「これ片付けたら……飯でも行こうぜ」


 その言葉に、仲間たちは優しく微笑み、力強く頷いた。

 

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