異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
第1話 さらば異世界、ただいま現実
もし、異世界から現実世界に帰れるとしたら——
みんなはどちらを選ぶのだろうか。
答えなんて決まってる。帰るに決まってるだろうが!
俺は8年かけて、ようやくそのチャンスを手に入れた。
※
「グアアアアアッ! ば、馬鹿な……この我が、人間ごときに敗れるとは……!」
魔王城最深部、玉座の間。黒炎に包まれた魔王が、血濡れた床に膝をついていた。
その姿は、もはや威厳の欠片もなく、ただの骸にすぎない。
「今だ、ユキヒロ! トドメを刺せ!」
戦士ガルドの怒声が響く。仲間たちが作り出した一瞬の隙。
俺はその一歩をためらわず踏み出し、剣を振りかざした。
「これで——終わりだ!!」
剣に込めたのは、仲間たちの想い、犠牲になった人々の無念、そして俺自身の——
現実世界への帰還を望む、強烈な願いだった。
魔王の体が斬り裂かれ、血飛沫が宙に舞い、骨と鱗が音を立てて崩れていく。
そして残されたのは、手のひらほどの大きさの、深紅の魔石だけだった。
「終わった……」
その石を握りしめながら、俺は呟いた。
——本当に、終わったんだ。
「やったな、ユキヒロ!」
ガルドたち仲間が駆け寄ってくる。
戦士ガルド、魔法使いアリサ、僧侶ジン、盗賊カイ。ともにこの地獄を生き延びた、俺の大切な仲間たち。
「私たち……本当にやり遂げたのね……」
アリサの目には涙が浮かんでいた。
他の皆も同じだった。喜び、安堵、そして解放の涙。長い旅路の果て、ようやく手にした平和の証。
でも、俺は違った。
(これで……帰れる。ようやく、現実に帰れるんだ!)
「どうした、ユキヒロ? お前が言い出した戦いだろ。もっと喜べよ!」
「そうよ。あなたがいなければ、私たちはここまで来られなかったんだから!」
それでも俺は——
「うおおおおおおおおッ!! 俺は帰るぞおおおおおッ!!」
魂の底から叫んだ。
8年間、この異世界で戦い、血を流し、生き延びてきた。
すべては、あの世界に戻るため。あの平凡で、退屈で、それでも愛おしい、俺の居場所に戻るためだったんだ。
「……え? なに、ユキヒロ?」
「帰るって……この国に戻るって意味じゃないの?」
彼らは俺の叫びを、比喩として受け取ったらしい。
だけど、俺にとってそれは——
本気の意味だった。
その時、魔王城が音を立てて揺れ始める。崩壊の兆しだ。
「まずい、ここから脱出しよう!」
仲間たちが動き出す。俺も走りながら、胸の中で呟いた。
(頼む、女神……約束を守ってくれ。今度こそ——俺を、帰らせてくれ)
その瞬間、俺の体が光に包まれた。
温かく、眩い光。
それは、8年前のあの日、女神が言った「魔王を倒せば帰してやる」という言葉の証明。
俺の現実世界への帰還が、今、始まろうとしていた——。
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