異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美

第1話 さらば異世界、ただいま現実

 もし、異世界から現実世界に帰れるとしたら——

 みんなはどちらを選ぶのだろうか。


 答えなんて決まってる。帰るに決まってるだろうが!

 俺は8年かけて、ようやくそのチャンスを手に入れた。



「グアアアアアッ! ば、馬鹿な……この我が、人間ごときに敗れるとは……!」


 魔王城最深部、玉座の間。黒炎に包まれた魔王が、血濡れた床に膝をついていた。

 その姿は、もはや威厳の欠片もなく、ただの骸にすぎない。


「今だ、ユキヒロ! トドメを刺せ!」


 戦士ガルドの怒声が響く。仲間たちが作り出した一瞬の隙。

 俺はその一歩をためらわず踏み出し、剣を振りかざした。


「これで——終わりだ!!」


 剣に込めたのは、仲間たちの想い、犠牲になった人々の無念、そして俺自身の——

 現実世界への帰還を望む、強烈な願いだった。


 魔王の体が斬り裂かれ、血飛沫が宙に舞い、骨と鱗が音を立てて崩れていく。

 そして残されたのは、手のひらほどの大きさの、深紅の魔石だけだった。


「終わった……」


 その石を握りしめながら、俺は呟いた。

 ——本当に、終わったんだ。


「やったな、ユキヒロ!」


 ガルドたち仲間が駆け寄ってくる。

 戦士ガルド、魔法使いアリサ、僧侶ジン、盗賊カイ。ともにこの地獄を生き延びた、俺の大切な仲間たち。


「私たち……本当にやり遂げたのね……」


 アリサの目には涙が浮かんでいた。

 他の皆も同じだった。喜び、安堵、そして解放の涙。長い旅路の果て、ようやく手にした平和の証。


 でも、俺は違った。


(これで……帰れる。ようやく、現実に帰れるんだ!)


「どうした、ユキヒロ? お前が言い出した戦いだろ。もっと喜べよ!」


「そうよ。あなたがいなければ、私たちはここまで来られなかったんだから!」


 それでも俺は——


「うおおおおおおおおッ!! 俺は帰るぞおおおおおッ!!」


 魂の底から叫んだ。

 8年間、この異世界で戦い、血を流し、生き延びてきた。

 すべては、あの世界に戻るため。あの平凡で、退屈で、それでも愛おしい、俺の居場所に戻るためだったんだ。


「……え? なに、ユキヒロ?」


「帰るって……この国に戻るって意味じゃないの?」


 彼らは俺の叫びを、比喩として受け取ったらしい。

 だけど、俺にとってそれは——


 本気の意味だった。


 その時、魔王城が音を立てて揺れ始める。崩壊の兆しだ。


「まずい、ここから脱出しよう!」


 仲間たちが動き出す。俺も走りながら、胸の中で呟いた。


(頼む、女神……約束を守ってくれ。今度こそ——俺を、帰らせてくれ)


 その瞬間、俺の体が光に包まれた。

 温かく、眩い光。


 それは、8年前のあの日、女神が言った「魔王を倒せば帰してやる」という言葉の証明。

 俺の現実世界への帰還が、今、始まろうとしていた——。


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