6.剣士フェルス


 ショーンとサジャは相方棟の食堂で席に座りそれぞれ飲みものを注文した。準備が終わればヒカリが来るだろう。


 「失礼する」

 しばらく談笑していると見知らぬ男性の声が聞こえ、見知らぬ男性はサジャの近くの席に座った。


 「私の名前はフェルス。祓魔師の相方になる為にここへきた。お前は……新しい祓魔師か?」

 いきなりの質問にサジャは目をパチクリさせるが素直に答える。

 「はい。新しく祓魔師になる予定のサジャです。」


 フェルスと名乗った青年は、サジャをマジマジと品定めするように見つめそしてストレートにこう言った。

 「褐色の肌に赤い瞳……その容貌が悪魔のように見えるが…。」

 いきなり初対面でコンプレックスを突かれた事にサジャは驚いた。


 「え…?」

 思わず変な声が出る。フェルスはサジャに気づかず言葉を繋げてくる。

 「その様な者が神聖魔法を使い祓魔師になるとは思えないが…」

 初対面で失礼極まりない発言をしてきたフェルスにサジャは僅かな憤りを感じた。ショーンの方をチラッと見るとショーンは驚き困った顔をしている。サジャはフェルスの発言にムキになってこう言った。

 「あ、貴方!初対面で失礼だわ!!」

 完全にサジャの発言を無視するフェルス。自分の事しか見えていない様に見える。


 「ふんっ!まぁ良い。私を雇う気はあるか?」

 今まで、散々な態度をとってきたのに、このフェルスとかいう男はおかしなことを言う……とサジャは思った。

 「失礼な人を相方にする気はないわ!」

 褒めるでもなく人の気にしていることを言い相方になりたいなどムシが良いとサジャは思った。


 フェルスはまだ話を続けている。

 「私の実力を知らないからそんな事が言えるのだ。どうだ?一度手合わせをしよう。」

 そう言ったフェルスの瞳は真剣そのもので、剣から鞘を抜こうとしたその時!


 ショーンは口を開いた。

 「フェルス殿!そこまでにしてくれ!」

 それにはフェルスはビクリと肩を震わした。

 「ショーン殿。」

 「手合わせを禁止するわけではないけれど、ここは食堂だ。こんな処で抜刀するのはもってのほかだ!」

 いつもニコニコしているショーンがギロリとフェルスを睨む。

 それにはフェルスも怯み先ほどの威勢がなくなってきた様だ。


 「ならば、食堂の隣にある訓練場で手合わせ願いたい。」

 フェルスはサジャをしっかりと見つめた。

 「分野が違う。」

 ショーンは一喝した。

 「サジャはまだ見習いだ。それに前衛が後衛に挑むなんてもってのほかだ。」

 フェルスは肩を震わせ答えた。

 「しかし、私のプライドは傷つけられた。許される筈がない。」


 なかなか食い下がらないフェルス。どうやら手合わせをするまでひかないつもりの様だ。


 (勝手だなぁ)とサジャは思い呆れていた。

 と、そこに何も知らないヒカリが準備を終えて戻ってきた。


 「お待たせ!ショーン!サジャ!」

 ヒカリを見る2人。そして…

 

 「ショーン殿の相方、ヒカリか。」

 フェルスが声をかけてきた。


 「ヒカリ!私と勝負しろ!!」

 ショーンとサジャが後衛だからやむなくフェルスはヒカリを対戦相手に選んだ。


 「へ?」

 ヒカリはいきなり挑まれた勝負に戸惑う。そしてショーンに何があったのか目配せをする。

 ショーンは、黙って頷きサジャをチラッと見てまた頷いた。

 それを見てヒカリは悟る。同じ相方棟に住んでいるのだ。フェルスの事は知っているし噂も聞いている。

 

 「しゃーない。何があったかよくわかんないけど受けてたつよ。」

 ヒカリはフェルスに言った。

 「そうこなくちゃな。」

 フェルスはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。余程自信があるのか。


 「祓魔師見習いよ!しっかり見ておくんだぞ!私は強い。相方にして損はない。」


 どんなに強くても絶対この人は相方にしちゃいけない。サジャは心に誓った。

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