3.実践体験に行きましょう

 「さて……早速ですがサジャ。祓魔師見習いとはいえ祓魔師がどういう仕事か話だけではわからないと思います。なので、今から実践体験を行います。ショーン。」


 会長はしっかりと言い、ショーンそしえサジャを見た。


「はい。会長。」

「今からサジャを実践体験に連れて行ってください。」

「かしこまりました。行き先はいかが致しましょうか?」

「ヴァラフェンの森に行ってきてくれますか?」


 会長がヴァラフェンの森にと伝えるとショーンは驚いた表情になった。


「え⁉︎ヴァラフェンの森は今朝、ミランダ達が出向いた場所では?同じ場所へ向かえと言うのですか?」


 先程どうやら別の祓魔師が向かった場所の様だ。ショーンの驚きぶりから普段なら同じ場所に出向く事はそうそう無いのだろう。


「そうです。見習いを連れて行くのですから味方が多い方が良いでしょう?それにヴァラフェンの森はこの場所からも近く魔獣もあまり強くはありません。」


 ヴァラフェンの森はこの祓魔師協会のすぐ北である。森で迷わなければ日帰りで帰って来れるだろう。


「一理ありますね。昨日依頼で低級悪魔が罠に嵌ったという通知が来てミランダ達が出向いた訳ですし…。しかし、ミランダ達が既に悪魔を祓っているかもしれません。」


 祓魔師達は悪魔が出やすそうな至る所に結界を張っていた。その近くに悪魔が近寄れば悪魔は一時的にその場に閉じ込められる。しかし、時間が経つと結界が弱まるので悪魔が閉じ込められたら祓魔師協会に通知が届きそこに早めに出向き悪魔を祓う事になっている。


 今は午前とはいえもうすぐ昼になる。ミランダ達が悪魔を既に祓っている可能性もあるにはある。


 会長は一瞬沈黙したが、やがて口を開いた。


「その可能性も高いでしょう。しかし、見習いのサジャとショーンが一緒に森に行けば、魔獣との戦いでも、ショーン。貴方の技を見る事ができるでしょう。」

「お言葉ですが会長。それは…彼女の実践になりますか?」


 ショーンが突っ込むと会長は一瞬口をつぐんだが、改めて口を開いた。


「いきなり実践より最初は見学しつつ祓魔師について考えてもらうのが良いでしょう。」


 そう言ってサジャを見据え……。


「サジャ。貴方は実際に悪魔を見た事がありますか?」

 と、言った。サジャは答える。

「はい。見た事はあります。けれどあまりにも怖くて逃げるのに精一杯でした。」

「わかりました。では、今日は実際に見ていきましょう。」

「はい!」

 と、元気よくサジャ。

「僕も行くから安心してね。」

 ショーンもにこやかに言った。


「では、ショーンここに地図があります。これで悪魔が罠にかかっている場所がわかるでしょう。ミランダ達とも合流し、悪魔を祓うのです。」

 会長は、地図をショーンに手渡しし、コクンと頷いた。


「かしこまりました。さ、サジャ早速行こうか。早い方がミランダ達に追いつける。」

 ニコッとショーンは微笑む。本当にショーンはいつも微笑んでるなとサジャは思った。嫌な笑顔ではないけれど、こういう人がキレると少し怖い気がした。


「それでは会長準備出来次第行って参ります。」

 ショーンは会長に頭を下げた。

「気をつけて行ってらっしゃい。」

 会長は優しく声をかけた。

「ありがとうございました。頑張ります!」

 サジャも挨拶をし、祓魔師協会会長の部屋を後にした。


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