第12話 3周目 1




 ……まただ。


 また、誰かの視線を感じる。


 とても遠いところから、彼方の向こう側から、こっちを見ている。


 それを、誰よりも近くに感じた。


 そばにいてくれる。そばにいるのに、とても遠くにいる。


 そんな矛盾した眼差し。ずっと見つづけている。


 その目を向けてきてるのは……。


「鉄真はどう思う?」


 途切れたはずの意識が再浮上すると、高宮鉄真はそこにいた。

 

 見慣れた校舎のなかに立っている。並んだ窓からは、温かな朝の日差しが入り込んできて、廊下を照らしていた。


 隣には、この世界に来てから二度も失うことになった友人の姿。


 また戻ってくることができた。そのことに安堵する。


 とりあえず一呼吸つくと、友則からの問いかけを軽くいなすように答えておく。


「シロサキスミレちゃんは、ホラーゲームで絶叫しているときも、死にゲーで絶叫しているときも、どっちの配信でも輝いているんじゃないか? どちらか片方じゃなくて、どっちもおもしろいと応援してあげるのが、真のファンってもんだろ?」


「…………」


 よどみなくスラスラと鉄真が返事をすると、友則はいきなり顔面パンチをもらったみたいに面食らっていた。


「……貴様、プロか?」


「なんのだよ?」


 友則との最初のやりとりを済ませると、情報を整理する。


 二度目の終わりを迎えたら、すぐには戻ってこなくて、どういうわけか精神世界的な場所に行って、常人ではない気配をまとったジジイと話すことになった。


 そこで意識が遠のいたら、この三周目の一日目にまた戻ってきていた。


「……同じ達成項目は報酬にはならないのか」


 鉄真がつぶやくと、隣にいる友則が頭に疑問符を浮かべる。


 一周目では、最後に『復活の夜に到達』という達成項目があった。二周目でも三日目の夜まで到達したはずなのに、システム音はそれを達成項目としてカウントしなかった。


 大量の経験値が与えられる達成項目は、ループのなかでも一度きりしか報酬がもらえないようだ。ループするごとに、何か新しいことを達成しなければ大幅なレベルアップにはつながらないのか。


 頭のなかで念じて、三周目の世界にやって来た自分のステータスを確認する。


【高宮鉄真】

 レベル:320

 HP:32400/32400

 MP:32300/32300

 攻撃力:3700

 耐久力:3650

 敏捷:3500

 体力:3600

 知力:3400

 

 二周目の最後のときよりも、かなりレベルアップしている。ステータスの数値も大幅に上昇していた。


【アイテムボックス】を覗いてみると、思ったとおり血塗れの剣と隻眼騎士の鎧が入っている。二周目の戦利品を引き継いでいた。


 前回よりも強くなっている。それだけこのゲーム世界をクリアできる可能性が高まったということだ。


 今回は前の周よりも、先に進める。


 そう信じて、ここからまた冒険をはじめよう。


 心が折れないかぎり、ゴールを目指して進むことができる。


『諦める』という選択肢は、鉄真のなかにはない。


 だからいつか必ず、望んだ結末にたどり着くことができるはずだ。


「友則。聞いてほしいことがある」


 まずは不思議そうにこっちを見ている友人に、事情を説明しよう。



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