21 バルーンラッピング
[×月○日・店長の日記]
同系列の100円ショップが新しくオープンするとかで、手伝いに行く。
でも新店舗って事は、ライバル店だよな? 近くにある俺達の店と売り上げとか、間違いなく諸諸を比べられるよな?
そんな店に何故、俺が手伝いに……本部(親)の命令じゃ逆らえないけど。副店長と共に渋渋、手伝いに行った。ちっ。
とは言っても。掃除に商品の陳列、接客マニュアルの確認。荷物さえ搬入してしまえば、やる事は普段とあまり変わらない。イベントの準備くらいか?
新しくオープン、ということで、本日はサービスイベントをやることになっている。
『1000円以上お買い上げで、お好きなヌイグルミをプレゼント。更にヌイグルミは可愛くバルーンラッピング致します♪』
誰だ。このイベントを考えたの。
「俺だよ」
お前かよ、副店長!
バルーンラッピングとは文字通り、大きな風船の中に商品を入れてラッピングするモノだ。
風船なので、尖った物や固い物は中に入れられない。割れてしまうから。というか、面倒だしヌイグルミのプレゼントだけで良くない?
「それじゃインパクトが無いだろ」
バルーンラッピングも、それ程珍しいってわけじゃない気がするが。
ゲームセンターでたまに見かけるぞ。取った景品を風船に入れてくれるサービス。
「いいから。さっさとやり方をマスターしろ。まずこの風船を、機械のここにセットして」
「俺がやるのかよ!?」
バルーンラッピングサービス要員の為に連れてこられたのか、俺は!!
縦横45cm程の正方形、高さが70cm程度のボックスがある。これがバルーンラッピング・マシーンらしい。
副店長が出来るのなら、お前がやれよ。ぶつぶつ言ったらゲンコツが頭に振って来た。くそう。
ボックスのふたの内側に風船をセットし、ふたを閉める。ボタンを押すと風船がボックスの中でぶわーと膨らむ。おお、ちょっと面白い。
ふたには更に丸蓋が付いているので、その丸蓋を開けてその穴からヌイグルミを、50cm程度にまで膨らました風船の中へと投入する。
ヌイグルミを入れた後、ふたを開け風船を外して。留め具でその口をくるくると縛り、バルーンラッピング完成。
「さあ、やれ」
はいはい。風船セットして、膨らまして、丸蓋を開けて……穴は直径が小さくてヌイグルミが風船に入りにくい。
ヌイグルミでかいよ。ぎゅっぎゅ、スポン。入った入った。ふたを開けて膨らんだ風船を外し留め具でくるっと縛る。完成。
「……手際が良いな」
はいはい。褒めなくてもやるよ、仕事なんだから。でもひとつ言ってもいいか。
このヌイグルミの造形が微妙。
色がカラフルで見栄えはするけど、この顔。クマだか馬だか分からん変顔ヌイグルミばかり。タダで配るオマケの品とは言え……あ、だからバルーンラッピングでごまかすの?
「いてっ!!」
微妙なヌイグルミを手配したのも、副店長だったようだ。殴られた。
「では開店しまーーす。いらっしゃいませ~!」
「いらっしゃいませ~!」
そんなこんなで開店。休日ということもあり、物珍しさも手伝って続続と人が来る。
バルーンラッピングも好評だ。子供は大喜び、大人のお客も可愛い、と喜んでくれる。どの年代のお客様も意外に嬉しそう。まあまあ経費はかかるが、初日のイベントとしては悪くなかったようだ。
昼を過ぎたので休憩をもらって飯を食い、再び店に戻ると……バルーンラッピングサービスに長蛇の列が出来ていた。
びっくりして駆け寄る。
新店舗の若い店長だ。ヌイグルミが大きいあまり、風船に入れるのに手間取っているらしい。そのせいなのか、この行列。
ああもう、俺が交代するから。貸してくれ。
「すいません。……手際が良いですねえ」
それ、さっきも聞いた気がする。俺は今まで器用だとか仕事が早い、とかの褒め言葉とは、無縁に生きてきたんだけど。何この現象。
見る見る列の人数は減っていった。
「お疲れ様でした。お先に失礼しまーす」
大きなトラブルも無く閉店時間を迎え、俺と副店長は一緒に新店舗を出た。俺達の働く100円ショップへと足を向ける。
一応、顔を出しておかないとな。変わったことは何も無いと思うけど。俺がいなくても別に支障は無いと思うけど。
「意外な才能、発見だな。バルーンラッピングの」
「はい?」
「俺やさっきの店長より、手際良く風船に品物を入れていたじゃないか。ヌイグルミを圧縮する才能があるみたいだな、お前」
ぜ ん ぜ ん う れ し く な い その褒め言葉。どんな才能だよ。
にこやかに副店長は、追い討ちをかける。
「うちでもやるか、バルーンラッピングサービス。お前の唯一の才能を生かすために」
やらねえよ!! 特に珍重されるような才能じゃないのは分かってるよ、この野郎!!
「明日もオープンイベントの手伝い予定だが」
絶対に、行かねええ!!
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