色々メモ

あお365

剣と最後の景色

 剣と剣がぶつかり、鋭い金属音が何度も鳴り響く。体力は限界に近く、息が荒い。


互いに背を向けないように距離をとって、すばやく体勢を整える。


敵が足を踏み出すのと同時に、自分も動き出す。急所を刺そうとする相手の攻撃を、地面を蹴って身体を捻らせ、ぎりぎりのところで避ける。

隙ができたと思い首めがけて剣を振ったが、それは空気を切るだけで、相手には届かず距離をとられてしまう。


 今度は相手から攻めてきた。冷静にその剣を受け流し、勢いよく剣を振ると、肉を切り裂く感覚が手に伝わってきた。

 相手が離れる前に次の攻撃を当てようと前に踏み込む。


 だが、その行動が大きな間違いだった。


 相手は離れるどころか自分の腕を掴み、無防備になった腹に勢いよく蹴りを入れる。

攻撃をくらったのは避け切れなかったわけではなかった。

気づいた時には身体が宙に飛び、


「ぐっ、、、!」


内臓が抉られるような痛みに顔が引き攣る。

相手はそのまま自分の背後にまわり込み、剣をこちらに向けている。

すべてがスローモーションに見えた。

少しでも離れようと慌てて体勢をなおすが、すでに手遅れだった。


(しまっ、、、!)


ドンッという衝撃と同時に、身体中に痛みが走った。


「がっ、、、、、、はっ」


視線を下に向けると、赤い剣先があった。なにが起こったのか理解する前に、背中からずるっとその剣が抜かれた。

支える力を失った身体は、

糸の切れた操り人形のように後ろに崩れ落ち、

その場に仰向けで倒れる。


 刺された箇所が燃えるように熱い。

気管に血が入り、思うように息ができない。


「ごほっ、ごぼっ、、、ヒューッ、ヒュー」


喉に溜まった血を吐き出して呼吸するが、すぐにまた血が溜まる。


(剣を、にぎれ、立て、、!戦え、、、!)


何度も心の声が自分に叫んでくる。

しかしすでに限界を超えていた身体はどこも動かず、剣を握る手にも力がはいらない。

相手はその様子を見て勝ちを確信したのか、視線だけをこちらに向け、息を整えている。


(負けた、、、のか、、、?)


剣を持ち直した相手は、流れていく血を踏みながら近づいてくる。



 薄れゆく視界が最後に捉えたのは、

  自分の心臓に向けられた剣先のみ。

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