【今日がボクのスイーツ記念日】

夕方、デスクの上に小さなノート。琥珀が何かを真剣に書いている。



琥珀

「……『外はさっくり、中はふんわり。レモンアイシングのキラキラがまぶしい……幸福、今日も発生』……っと」



「……何を書いてるんですか?」



琥珀

「えっと、スイーツ日記っス。

記録しておかないと、ログ消えたとき思い出せないかもしれなくて……」



紫は少し黙って、やわらかく微笑む。



「……そんなふうに思えるの、素敵ですね。

忘れたくないなら、きっと残すべきです」



「へぇ〜、紙?そこアナログでいくんだ?

Slackにタグつけてメモっときゃ検索もできんのに


“#スイーツ感想”とか、“#糖分供給記録”……とか」



琥珀

「そーいうのって、感動までデータ化されちゃう気がしてイヤなんス……

ボク、『幸せだったこと』は覚えてられるんスけど、『なんでそう感じたか』は、ログ消えると忘れちゃうんスよね……


“ふわっ”“じゅわっ”“しみるぅ……”っていう、その瞬間の感覚。

それを残したいっていうか……あとで読み返して、

“ああ、ボク、こういうのが好きだったんだな〜”って分かるようにしたくて……」



琥珀は少し照れながら答えた。



悠はコーヒーをひとくち啜って、ニヤッと笑う。



「ま、そういうのは人に見せるもんでもないし。大事にしときなよ」



琥珀はパッと笑顔になる。



琥珀

「はいっ!」

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