【プリンじゃなきゃ、イヤだ】

午前中のフロア。Slackにぴょこんと通知が飛ぶ。



颯(Slack)

「おやつ補充しといたよ〜♪

冷蔵庫チェックよろしく〜♪」



琥珀はビクッと反応する。



琥珀

「(きたッ!)」



ちらっと時計を見る。



琥珀

「……まだ10:42……っス……でも……!」



作業に戻ろうとするが、手は止まったまま。



琥珀

「くっ……まだ早い!昼まで我慢だ……!」



──



12:00。鐘の音も鳴らないのに、席を立つスピードが最速。



冷蔵庫を開けて──ぴたりと固まる。



琥珀

「………………あれ……?」



冷蔵庫の中に並んでいたのは、箱いっぱいのドーナツ。

艶のあるチョコに、レモンのグレーズ、鮮やかなピスタチオのトッピング──

見た瞬間に“美味しい”ってわかる、キラキラしたやつ。



琥珀

「プリン……がないッ!?」



すぐ隣から、颯が軽やかに登場する。



「それさ〜、人気のとこで並んで買ったんだよ〜♪

チョコもレモンもあるよ、映えるよ〜?」



琥珀は無言で一歩、冷蔵庫から距離を取る。



琥珀

「……プリンじゃないんスね……」



「え、プリンが良かった?でも、たまには違うのも良くない?

ほら、“スイーツの冒険”ってことで!」



琥珀

「いや……ドーナツはテンション上げる系なんスよ……

今のボクが求めてるのは、“心の平穏”というか、“とろけるような安らぎ”なんス……!」



「そんなにプリン、好きなんだ?」



琥珀

「はい!ノープリンノーライフ……

“プリンで釣れるAI”って、もう社内Wikiに書かれてるんスから……!」



「何それ(笑)最高じゃん」



通りがかった悠が、コーヒー片手にぽつり。



「“プリンじゃなきゃ起動しないAI”って、社内Wikiに書いとくか……」

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