第37話 素敵な虹色ソーダ

 その後、あたしとれーちゃんも眼鏡を受け取った。言乃花お姉ちゃんが、


「何色にしたいか決めてから眼鏡に触れてね」


 と教えてくれたので、


 ── んー、何色にしようかなあ。


 とちょっと考えてから、


 ── よし、今日の気分はこれだねっ!


 あたしが眼鏡に触れると、指が触れた部分から綺麗なオレンジ色に変わっていく。眼鏡に付いているチェーンもキラキラと光りながらオレンジ色に変わっていった。


「すっごーい、綺麗っ」


 眼鏡に見とれているうちにれーちゃんも眼鏡を取っていた。れーちゃんの眼鏡はかわいいピンク色に変わっていく。


「すごい。本当に魔法の世界なんだ……」

「ふふん、ようやく実感した? そうだよ、あたしの師匠はすごいんだからっ! ふ、ふ、ふ、あたしは師匠の魔法を何っ回も見たことあるんだよ。ものすっごくカッコイイんだから!」

「あらしーちゃん、そんなに副会長の魔法を見たことがあるのね? ……そう、それは後で聞かせてもらわなければいけないかしら」


 言乃花お姉ちゃんは笑顔で師匠に言ったんだけど、言乃花お姉ちゃんが笑うといつも冷たーい風が吹くんだよね。


 ── ないしょだけど、そんな時のお姉ちゃんはちょっとコワイよ?


「おい、言乃花くん、魔力が漏れているのではないか?」

「そうですか? 問題ありません、意図的ですから」

「何だと? おっと、そうだ。我が弟子とその友人の怜奈くんと言ったな。君たちのために我が社から最新のマシーンを取り寄せたのだ。こちらに来たまえ!」


 急に移動し始めた師匠についていくと、実験室の窓際に見たことのない機械が置いてあった。側にはガラスコップが並べられている。  


 師匠が機械にコップをセットすると、スイッチを押した。すると、コポコポシュワワーッとさわやかな音がしてコップに飲み物が注がれていく。シュワシュワしてるから炭酸飲料みたいだけど、なんだか不思議な色をしている。人数分入れ終わると師匠がコップを手渡してくれた。


「師匠、これは?」

「あなたこれ、いつの間にこんなところに?」


 れーちゃんも不思議そうにコップの中身を見つめている。コップの中の液体は、ゆらゆらと揺れるたびに色が変わっていく。


「無論、我が社のものだから送ってもらったに決まっているだろう。詩雛くん、これは我が社が開発した『虹色ソーダ』というものだ。先日帰省した際に学園にも搬入されると聞いたのでな、私の研究室にも一台送ってもらったのだ。ここに来た時はいつでも飲みたまえ!」

「はい、師匠ありがとうございます! それじゃあさっそく、いっただきまーす」


 一口ゴクリと飲むと口の中にさわやかな香りが広がり、炭酸が喉をすべり降りていく。飲んでいる間にもコップの中のソーダ水はピンク、水色、紫、オレンジとどんどん色を変えていく。


 ── 不っ思議ーっ!


「うわぁ、これ、おいしー!」

「ほんとだ、そんなに炭酸もきつくなくて飲みやすいね。それにいろんな味がする……」


 れーちゃんはちょっと炭酸が苦手なんだけど、このソーダは飲めるみたいだ。ツーンとしたところがないから飲みやすいのかな。味も不思議で、ベリーっぽいかと思うとメロンっぽかったり、ピーチやグレープっぽい味がしたり。舌の上でどんどん味が変わっていく。夢中で飲んでいたらあっという間に空っぽになっちゃった。


「おかわりはいるかな?」

「お願いします!」

「あ、わたしは半分だけ」

「私もお願いできるかしら」


  三杯目をおかわりしようとしたらソフィーちゃんに、


「飲み過ぎは良くないよ」


 って止められちゃった。てへ。


 学園探検をして渇いた喉がしっかり潤ったところで、あたしたちは眼鏡をかけたまま廊下に出た。眼鏡はとっても軽くて、かけてることを忘れちゃいそうだ。だけど、教室の前の表札も、壁に貼られている掲示物も、こっちの文字の下にきちんと日本語が表示されて見える。


 ── すっごーい、本当に文字が読めるよ! さっすが師匠! かーっこいーーーっ!!


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