第29話 美桜ちゃんが来た!

 急いでスマホを拾って画面を見ると、黒髪のおかっぱ頭にピンク色の星のピンを止めた、目がクリクリッとまん丸な女の子がソフィーちゃんと一緒に映っていた。


『あなたがしーちゃんなのです? 椿 美桜なのです。よろしくなのです』


 そう言うと美桜ちゃんはまたヌーッと顔を近づけてくる。


 ── 近い、近いっ!


 またびっくりしてスマホを落としそうになったよ。あぶない、あぶない。


『美桜ちゃん、そんなに顔を近づけたらしーちゃんがびっくりしちゃうよ。しーちゃん、大丈夫?』


 そう言いながらソフィーちゃんが美桜ちゃんを引き戻してくれた。


「うん、めちゃくちゃビックリしたよ。えっと、はじめまして、美桜ちゃん。小鳥遊たかなし 詩雛しいなです。よろしくね」 

『しいなって言うのですね。よろしくなのです! しいなさんは別の世界の人だって本当なのですか?』

「うん、そうだよ」

『どんな世界なのか詳しく知りたいのです! しいなさんは何歳なのです?』

「うふふ、しいなさんって、なんかくすぐったいからしーちゃんでいいよ。あたしは十歳だよ」

『なんと! 同い年なのです! でもしーちゃんは大きく見えるのです』

「美桜ちゃん身長何センチ?」

『百三十なのです』

「あ、あたしの勝ちー。百三十五だよっ」

『大丈夫なのです! これからもーっと大きくなるに違いないのです! わたしの父さんはすっっごく大っっきいのです!』

「そーなんだー、美桜ちゃんのお父さんって、道場やってるんだよね?」

『はいなのです、わたしも゙毎日お稽古しているのですよ』

「すごいなー……じゃあ、美桜ちゃんも魔法使えるの?」

『もちろんなのです! 見せてあげるのです!』

『はい、そこまでにしなさいね』


 突然画面から美桜ちゃんが消えた。


「あれ、美桜ちゃん?」


 すると画面の外から、


『何をするのです? もっとおしゃべりしたいのですー!』


 と叫ぶ美桜ちゃんの声が聞こえる。


『こんばんは、しーちゃん。美桜がお騒がせしてごめんなさいね』


 ソフィーちゃんの後ろからひょっこりと言乃花お姉ちゃんが顔を出した。


「あ、言乃花お姉ちゃん。こんばんはー」

『美桜は連れて行くから、ソフィーちゃんとゆっくりおしゃべりしててね。美桜、お部屋で


 そう言った言乃花お姉ちゃんはにっこり笑っているのに、なぜだろう。


 ── 今、ものすごい寒気がしたよっ! 


 言乃花お姉ちゃんは美桜ちゃんの襟首を引っ張って、ズルズル引きずりながら画面から遠ざかって行った。


 ── あー、あれはきっとお説教タイムだね、美桜ちゃんふぁいとーっ! 


『うふふ、美桜ちゃんって可愛いよね。ちょっとイタズラっ子だけど、お話してるととっても楽しいよ』

「あ、それわかる気がする。面白い子だね。そういえばソフィーちゃんはいつ学園に戻ってくるの?」

『もう少ししたら戻れると思うよ』

「そっかー……あのね、もう少ししたらあたしもれーちゃんに会えるんだよ!」

『れーちゃんって、しーちゃんの大親友でお引っ越ししちゃったから会えなくなったって言ってた子だよね? 良かったね、しーちゃん。わたしも会ってみたいな』

「そっちにれーちゃんも連れていけるのかな? だったら一緒に行きたい! ……あー、でも、ちょっと危険な気がする」

『何が危険なの?』


 ── ちょーっと心配なことがあるんだよねー。


「んー、実はね、れーちゃんってものすごーく本が好きなんだよ」

『そうなの? 言乃花さんと仲良くなれそうね』


 ── それで済んだらいいけど……。まあ、今考えても仕方ないかー。


「ま、いいや。それでね、……」


 美桜ちゃんにはびっくりしたけど、その日もソフィーちゃんといーっぱいおしゃべりをして通話を切った。


 




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