第17話:帰り道

「――結局、長々とお引止めしてしまい申し訳ありません」


「いや、俺もあんなに笑ったのは久しぶりだったから楽しかったよ。それに晩飯までご馳走になって、ありがたいくらいだ」


 レオンは、孤児院が発注したEランク依頼『迷い猫探し』の達成後、少し子供達と遊ぶ程度のつもりだったが、気付けば陽はとっくに暮れていた。


 街で働く住人も、日中ダンジョンに挑んでいた冒険者も多くの者は仕事を終え、逆に飲食店はどこも賑わっている。


 その昼とは違う活気に溢れる通りを歩き、レオンとリゼッタは帰路についていた。


「それにしても、グレイシスさんは子供の相手に慣れているのですね。やはり、そういう依頼も受けた事が?」


「あぁ、実は俺も故郷の孤児院に世話になっていた事もあるんだ。それに貴族様のご令嬢が下町を視たいとかで護衛をした事もあったっけな」


 昔を懐かしむ様に遠い目をしたレオンにリゼッタは苦笑する。


「それは苦労された事でしょう」


「うん。あっちこっちに連れ回された挙句に疲れたから『おんぶ』しろ、は辛かったなー。すれ違う人に凄い白い目で見られたなー」


「――苦労、されましたね……」


 小さく笑いを堪える彼女に、レオンも昔話と乾いた笑いを溢した。


「それを思えば、今日は単純に楽しかったよ。ただボールを蹴って走り回るだけだったけど、身体を動かすってのは気持ちの良いものだって思い出した」


「それは何よりです。あの子達も大人の男性と遊ぶ事は殆ど無かったので、満足出来たようです。私やデイジーさんでは先にこっちがバテてしまうので」


 ですので、とリゼッタは少し戸惑いつつ、


「――グレイシスさんが良ければ、また孤児院にいらして頂けるとあの子も喜びます。特に、ファズ君は貴方に懐いていますから」


「あぁ、勿論構わないよ。ただ、今度は俺達のダンジョン探索の話を聞かせてくれって言ってたけど……どうしようか」


 彼の返事に安堵したが、直ぐに眉を僅かに顰めた。


「……子供達に聞かせる程、面白い事はありませんからね」


「――ゴブリンの個体差による魔石の換金額の差、とか?」


「ふふ。そういう事を聞きたい訳では無いと思いますよ?」


 などと他愛の無い雑談で小さく笑い合っていると、いつの間にかギルドの前まで辿り着いた。


 冒険者や住人達の酒に飲まれた喧騒が外まで漏れ出しており、レオンは僅かに眉を顰める。


「報酬の受け取りは明日の方が良さそうだ」


「この時間は酒場として忙しそうですからね」


 元が報酬を目的として依頼を受けた訳では無い。明日のダンジョン探索の換金時に回す事にした。


「それじゃ、もう遅いから宿の近くまで送るよ」


「はい。よろしくお願いします」

 

 二人がギルドのある広場から、宿屋の並ぶ宿泊区に向かうその横をギルドから飛び出してきた冒険者が悲痛の表情を浮かべて駆け抜けて行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


18話は12時頃に更新予定です。


あとがき


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