第2話
しかし、Nくんを名乗る人物は、本当にいるのでしょうか?
Nくんというキャラクターは、私が作った人物であり、特定のモデルはいないはずなのです。
本当にNくんという人物がいて、何かの理由で、私が忘れてしまっていただけなんでしょうか?それとも、このメールを送ってくる人物は、なにか勘違いをしているか、あるいは、なりすましなのでしょうか?もし、私が、先週、上野に行っていたら、何が起きていたのでしょうか?
仮に、なりすましや嘘つきなのだとしても、あるいは、本当にNくんが実在したのだとしても、そもそも、彼は、どうやって、私のメールアドレスや私の家族を知ったのでしょうか?
もともとの小説の第3話では、小学生だった頃の私とNくんは、一緒に、町の北のはずれに「冒険」にいくのでした。そこで、Nくんは、大怪我をしてしまいます。その後、Nくんは、学校を休みがちになり、翌年、転校してしまう。そういうお話でした。でも、このお話は創作であり、私には、こういう不幸にあった友人は、いなかったはずなのです。
−−−
それから、しばらく、Nくんを名乗るメールは、こなくなり、私も、この話を忘れかけていたのですが、先週、私の勤務先で、こういうことがあったのです。
その日、ちょっとした打ち合わせがから帰ってきた私が自席に戻ってみると、机の上に、小さな付箋のメモを見つけました。
「来客 ナガノさん 第二応接室でお待ちです タカクワ」
高桑は、私の職場の後輩です。しかし、ナガノさん、誰だろう。記憶にない名前でしたが、私は、第二応接室に行きました。しかし、そこには、誰も待っていませんでした。そこで、私は、高桑を呼んで、聞きました。
「来客がいたと聞いたけれど。どこに待たせているの?」
「あれえ?ちょっと前まで、そこに、いたんだけれどなぁ。」
「どんなお客さんだった?」
「そうですねぇ。初めてのお客さんでした。顔は、変だなぁ、思い出せないなぁ。あ、そういえば、名刺預かりましたよ。あれえ?どこいったかなぁ。」
どうも、高桑は、そのお客さんの顔も思い出せず、受け取った名刺も紛失した、ということなのです。高桑は、しっかりした後輩ですので、こんな失態は、めったにやりません。
その日の帰宅中、高桑は、交通事故にあいました。クルマにはねられて、左のスネを骨折したということでした。
−−−
その日、帰ってみると、ひさしぶりに、例のNくんを名乗る人物のアドレスから、メールが届いていたのを見つけました。メールが出されたのは、今日の午後、おそらく、私の職場にナガノという人物が来ていた時間帯です。
あなたの職場にいきました。
あなたに、大怪我をする呪いをかけました。
あなたは、今日、事故にあいます。
わたしだけが、痛い思いをするのは理不尽です。
わたしのいたみがわかりましたか?
いたみがわかったら、あやまってください。
−−−
それから、一週間。
今週は、高桑のお見舞いに行ってきました。
左足のギプスは痛々しかったですが、表情は元気そうでした。
それ以外は、私は、この件については、なにもしていません。
だいたい、謝れと言われても、誰に謝ればいいのでしょう?
あの気持ち悪いメールに返事をかけばいいのでしょうか?
本当に、Nくんは、実在していないはずの、私の創作したキャラクターで、私は、この人物のことは、本当に心当たりがないのです。本当に、私は、誰かに謝ったほうがいいのでしょうか?
−−−
おまえのかいたものを読んだ。
削除しろといったのに、また、こんな文章を書いているな。
私のことを忘れたふりをして、しらじらしく、こんなことを書いているのは、
ほんとうにゆるせない。
おまえをころしてやりたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます