集結要請
「群司令…これは…」
「我々の撃破したヴォイドは…極一部に過ぎなかったのか」
呆然とした群司令と副司令の声が、静まり返ったいずもCICに響く。
暫しの沈黙。出来ればこれが夢であって欲しいと全員が思考する。だがヴォイドは、それを許さない。
「……!飛行型ヴォイド多数探知!方位2-5-0、距離200!」
「なんだと!?」
レーダー員の叫びが沈黙を破り、CICは俄に慌ただしくなる。
「全艦回頭!」
「対空戦闘用意!艦載機発艦も急げ!」
「各護衛艦より、ESSM残弾なし。主砲による迎撃しか行えないと!」
「そんなこと分かってる!だがやらなきゃならんだろう!」
発艦したF-35、そして各護衛艦の主砲と近接防空火器だけでヴォイドの大群と交戦するなど悪夢以外の何物でもないが、ただでさえ貴重な戦力である艦隊を失うわけには行かない。
『スティングレイ1、緊急発艦!』
『上がったら編隊を組まず各個に攻撃を行え、時間がない!』
再び甲板に出たF-35BJが慌ただしく空中に上がり、アフターバーナーの轟音を轟かせながら敵群へと向かっていった。
*****************
スティングレイ1はHMDに表示される情報を確認しながら、スロットルレバーを押し出す。加速によりシートを体に押し付けられながらも、手を離す事はしない。
やがてAMRAAMの射程圏内にヴォイドの大群を捉えたスティングレイ1は、マスターアームをオン。
-TARGET LOCK-
「スティングレイ1、FOX1」
すぐにHMDにロックオン表示がなされると、スティングレイ1は迷わず引き金を引いた。
翼下パイロン及びウェポンベイから切り離されたAMRAAMはロケットモーターを点火。噴射煙を引きながら敵群へと猛進する。
本来ならこの時点で引き返すが、今回はそう言う訳にはいかない。
-Enemy Kill-
スティングレイ1はミサイル命中の知らせを聞きながら、自機を敵群へとぐんぐんちかづけていく。そして…
-TARGET LOCK-
「FOX2」
放たれたのは
もはや短射程ミサイルでは無いが、それでもAMRAAMに劣るAIM-9Xの射程までスティングレイ1は敵群へと接近したのだ。
2発のサイドワインダーを放ったスティングレイ1は今度こそ機体を反転させ、艦隊への帰路に着くのだった。
*****************
「航空隊全機ミサイル発射。残敵数184、距離50!」
「ギリギリだな…」
各艦の主砲弾自体も残弾数が少なく、厳しい戦いになるのは明白だった。
そして数十分後。
「各艦主砲撃ち方始め!」
各護衛艦搭載の速射砲が火を噴き、ヴォイドを次々と撃墜していく。しかしそのペースはどうしても遅く、いよいよヴォイドは近接防空火器の射程圏内に入る。
「ヴォイド全38体接近!方位0-4-5、距離15!」
「CIWS起動、並びにシーLAMデータ入力。撃ち方始め!」
各艦から機関砲が放たれ、ヴォイドを蜂の巣にしていく。更にいずものシーLAMの敵を捉え、撃墜。
「クソッ!数が多い!」
それでも、近接防空火器だけで38体全て対応するのは困難であった。
CICのメインディスプレイには、翼を広げ口腔内を発光させているヴォイドの姿が映り、群司令は覚悟を決める。
「総員、衝撃に備え!!」
「不明飛翔体探知!方位3-2-0、距離5、マッハ4!」
だがいつまで経っても衝撃は来ない。代わりに響くのは、艦橋からの連絡。
『艦橋よりCIC、全ヴォイド撃墜…やったのは、米軍です!』
「なんだと…!?」
『ミサイルがヴォイドに接触後、我が艦隊上空を米空軍F-22が通過して行きました。状況的に間違い無いかと』
「生き残っていたのか…!」
と、そこでCICに衛星を介して通信が入る。
『聞こえるか…こちら米海軍第七艦隊旗艦、ブルーリッジ。直ちに貴艦隊はグアムへ集結されたい』
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