第3話

 コアラとゴリラは、昆虫園の図面を探すために、人間たちがふだん使っている事務所へとやって来ました。

事務所にある資料室に入ると、ゴリラの背たけほどもある棚が目に入りました。

コアラは下の段を、コアラは上の段を探していきます。

ゴリラが左のはしっこから確認していきます。


「資料はあいうえお順で並んでるみたいだな。アシカ館に、アリクイてんじ場、イノシシ小屋… 昆虫園のこ、昆虫園のこ…」


 キリン園、クマ小屋と続き、「昆虫園」と書かれたひときわボロボロの背表紙の本を発見しました。

ゴリラがそれを抜き出すと、コアラといっしょにテーブルにそれを広げます。

そして、中を確認すると、コアラが言いました。


「やった!この図面には、全部の設備がのっているよ」


 設備図面には、しょうめい、コンセント、空調、きゅうはいすい、といった内容の図面が描かれており、昆虫園の復活にはこれらの設備の再かどうが必要となります。

ゴリラは、こんなこと俺たちでできるのか?

と言いました。

コアラも、今まで自分は設備の点検や、ちょっとした手直しならやったことがあるけど、全部の設備を手直ししたことはない、と言いました。


「これだけ大がかりだと、どれだけかかるか僕にも分からない」


 それを、たった2匹でやるとなると、昆虫園の再開には何年もかかってしまうかも知れません。

その時、部屋のすみっこに、誰かがいます。


「俺が手を貸してもいい」


 コアラとゴリラは、誰だっ、と同時に声を上げました。

その、暗闇と同化していた動物は、あかりの元へと歩み出て、2匹の前へと姿を現しました。

それは、黒ひょうのエメルダでした。

ゴリラがおどろいて、声をあらげます。


「お前、何でこんなとこにいやがる!」


 両方のこぶしをかまえると、ファイティング・ポーズをとります。

黒ひょうはちょっとまて、と手のひらを相手に向け、ゴリラをなだめます。


「俺は争う気はないぞ。お前たちの手伝いがしたいんだ。…というか、白状すると、あの昆虫園をいずれ俺の国にしたい。だから、協力させて欲しい」


「何を勝手なことを!」


 ゴリラが飛びかかろうとすると、コアラが止めました。


「待ってよ、ゴリラさん。そして、黒ひょうさん

、どういう考えなのか、くわしく教えて!」


 黒ひょうは自分の考えを話しました。

自分はこの動物園のこうけい者になるつもりはないこと、だから、自分の新しい国が必要なこと。

ゴリラは、その話に同意しかねます。


「お前が作ろうとする国なんざ、ろくでもない国に決まっているぜ」 


 今の言葉に、さすがに黒ひょうも気分を悪くします。


「何だとっ」


 キバをむき出しにして、ゴリラをにらみつけます。

すると、コアラは一つ、ていあんしました。


「それなら、昆虫園のざっそうを、全部引っこ抜いて下さい。それが「じょうけん」です」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る