第三話

 それを聞いて、私はもちろんおどろいた。だ、第一王子のトミヒ様?! 私はトミヒ様の顔を、見つめた。金色の髪は真ん中から分けられて、やさ眼差まなざしをしていてととのった顔立かおだちをしていた。そして背が高く、スタイルはスラリとしていた。そう言えば、その顔には見覚みおぼえがあった。


 この国では国王の誕生日に、お城でパーティーが開かれる。もちろん私のような一般市民はパーティーには参加できないが、その時に国王一家こくおういっかは街中をパレードする。その時に、トミヒ様を見たことがあった。


 そこまで思い出した私は、あせった。こ、この国の第一王子が私の食堂にきた?! ど、どうしよう。もし私の料理が王子に気にいられなかったら、この食堂は一体どうなるんだろう? も、もしかして営業停止になるとか? ど、どうしよう?……。


 そしてさらに私は、自分の格好かっこうも気になった。第一王子の前で、変な格好をしていないかしら?! 私は、自分の格好を確認した。私は今、グレーのワンピースの上に白いエプロンを着ている。


 ちなみに私は、髪は金色で背中までの長さで、今は万が一にも料理に入らないように後ろでまとめてポニーテールにしている。そして目はパッチリとしていて二十一歳なのでお客さんに『ナヒコちゃんは若いのにがんばっているね。可愛いね』と言われることもある。


 あ、ち、違う。今は、そんなことを考えてる場合じゃない! トミヒ様に気に入ってもらえるような、料理を作らないと! そこまで考えた私は早速、トミヒ様の体をスキャンすることにした。

「あ、あの、トミヒ様。申し訳ありませんが、ちょっと立ち上がっていただきますか?」


 するとトミヒ様は、すぐに立ち上がってくれた。

「えーと、こうですか?」

「はい、それでいいです」


 そうして私はトミヒ様に右手をかざして、魔法をとなえた。

「スキャン!」


 すると私の右手は、ボウと弱く青く光った。そのまま私は右手を、トミヒ様の体中にかざした。そうしているとトミヒ様の全身で、右手は黄色に光った。なるほど。トミヒ様の体で、ここが確実に悪いという部分は無い。それなら私の右手が、赤く光るはずだ。


 黄色に光るということは、体中が少しづつ調子が悪いということだ。例えばストレスが原因で、疲労感ひろうかんを感じるとか。なので私は、トミヒ様に聞いてみた。

「トミヒ様。体中に、疲労感はありますか?」


 するとトミヒ様は、少し驚いた表情になった。

「はい。最近は特に、体中に疲労感を感じます。でも、どうしてそれが分かったんですか?」


 なので私は、説明した。

「はい。私は魔法で、相手の体の具合ぐあいが悪い部分が分かるのです。トミヒ様の場合、全身に疲労感を感じているようです」


 するとトミヒ様は、納得なっとくしたようだ。

「うーむ。なるほど……」


 そして私は、更に聞いてみた。

「トミヒ様。何か最近、ストレスを感じることはございませんか?」

「はい? どうしてですか?」

「はい。体中に疲労感を感じる原因は、主にストレスだからです。さあ、何かストレスはございませんか?」


 するとトミヒ様は、小さなため息をついてから答えた。

「思い当たるフシは、一つしかありません。それは、ガナス国との戦争です。私はまだ二十五歳ですが今年の一の月から、父である国王からガナス国と戦っている部隊の作戦司令さくせんしれいまかされました。実際に戦場に行って、指揮しきることもあります。でも、命の危険を感じることもありました。私には、それが大きなストレスになっています……」


 それを聞いて、私は納得した。なるほど、そうでしたか。それならば、疲労感を取る料理を作った方が良いかしら? 私はトミヒ様に、確認した。

「それではトミヒ様。これから疲労感を取る料理を作ろうと思うんですが、それでよろしいでしょうか?」

「はい、それでお願いします」


 なので私は早速、料理を作ることにした。私はまず魔法で、かまどに炎を出現しゅつげんさせた。

「フレイム!」


 そして、料理を作った。メニューはレバニラいため、豚肉ぶたにくのしょうが焼き、主食のパン、そしてデザートにオレンジを用意した。


 レバーには栄養素からエネルギーを作り疲労を回復させるビタミンB1、B2、B6がふくまれている。豚肉には体力低下や疲れやすさをふせぐ、たんぱく質が含まれている。そしてオレンジには元気に活動するための栄養素、ビタミンCが含まれている。


 私がそれらの料理をテーブルに出すと早速さっそく、トミヒ様は美味おいしそうに食べてくれた。そして、おれいを言ってくれた。

「うーむ。何だか、体の疲労感が少なくなったような気がします……。ありがとうございます、美味しかったですよ、ナヒコさん」

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