NO追放!NO滅亡!

綺羅星昴

第零章-どうしてこんな目に?-

ざまぁな結末…からの?

 -燃え盛る宮廷には大量のモンスターが侵入しており、かつては美しかった庭園も今は見るも無惨に荒らされていた。

『-グギャアアアッ!』

 当然、モンスター達は王の居住区画にまで入り込んでおり、『最後の獲物』である王家の者達と近衛兵を追い掛けていた。

「がはっ!?」

「陛下、皆様、お逃げ下さいっ!」

 そして、近衛はまた一人倒されてしまい残るは近衛隊長だけになってしまった。…なので彼は殿を務めるべく、王家を逃がそうとする。

『グギャアアアッ!』

「ひいいいい~っ!?」

「いやあああ~っ!?」

 だが、不意に後ろの壁が破壊され大量の翼を持つモンスターが侵入して来た。…そしてそのままモンスター達は、獲物へと襲い掛かる。

「…どうして、こんな事に-」

 その最中、赤い髪のプリンセスは震える声で呟く。…彼女は、目の前で起こる残酷な現実を最期まで受け止めきれずにいた。

『グギャアアアッ!』

「ぐあああっ!?」

 やがて、近衛隊長もモンスター達によって倒されてしまい、王家の者達はモンスターの大群に飲み込まれた。


 -直後、画面は暗転しとあるメッセージが表示される。…『こうして、ペントジェルト王国は滅びました。』

 …つまり、今までのはゲームの世界での出来事だったのだ。

「-…はあ~、スッキリした~っ!」

 しかし、そんな凄惨な場面を見たにも関わらず私の心は晴れやかだった。…何故なら、先程モンスター達によって滅ぼされた国は、一切同情出来ないのだから。


『-聖獣の巫女』

 それがこのゲームのタイトルであり、今の場面は主人公を追放した王家に下された最大の罰なのだ。

 ちなみに、このゲームは、所謂『乙女ゲー』というものであり主人公は先程滅亡した王国の第三王女になる。…その主人公を追放した首謀者こそ、先程現実逃避していた赤い髪の第二王女だ。

 彼女は、とある理由で激しい嫉妬に狂い妹に無実の罪を着せたのだ。しかも、家族や臣下までもがそれを鵜呑みにしてしまい、主人公は追放の憂き目に遭わされてしまう。

 だが、第二王女も主人公を罵った王国の者達は忘れていた。

 主人公が居る事で、王国は平和でいられたのだと。


『-ざまぁwwww』

『メシウマアアアアッ!』

「お、コメントありがとうございますっ!」

 それから場面は主人公の視点に戻り、そのタイミングでコメントが流れて来た。…言い忘れていたが、今このゲームを生配信していて視聴者もリアルタイムでスカッとしていた。

「さあ、そろそろ良い時間になるのでこのイベントが終わり次第、セーブたいと思います」

『了解~っ!』

『お疲れ様でした~っ!』

『いやー、良いモノ見れた~っ!』

「ありがとうございます」

 そして、配信開始から五時間経ったのでそろそろゲームを終わらせるべく、締めの挨拶を始める。

「…おっ。…良し。それでは、次回の配信をお楽しみにっ!」

 やがて、イベントが終わったので即座にセーブを行う。それが終わったら、改めて終了の挨拶をして配信を止めた。

 それから、ゆっくりと身体を伸ばし片付けを始める。…やがてそれも済んだら、私は立ち上がりベッドに寝転んだ。


「…後、三時間か~」

 ふと、スマホで時計を確認した私は自然とニヤけていた。…何故なら、明日の0時にこの『聖女の巫女』のリメイクを遊ぶ事が出来るのだから。

 当然、ダウンロード版は既に購入しており0時を過ぎればプレイ可能になっている。勿論明日は有休を取っているので、いち早くプレイするつもりだ。

「……っと」

 そんな時、ふと小腹が空いたのでゆっくりと起き上がり冷蔵庫を確認する。…しかし残念な事に、冷凍食品は無かった。そこで、私は考えてる。

 このまま我慢する事は出来るが、ゲームに集中出来ないかもしれない。なら、買いに行ったほうが良いのではないかと。

 幸い、歩いて五分の所にコンビニがある。そこで、腹持ちが良い物を購入しよう。…それを瞬時に決めた私は、直ぐに脱ぎっぱなしの靴下を履き綺麗めな長袖を着る。


「…っと」

 そして、スマホと家のカギをポーチに入れ私は部屋を出た。…それから少しして、私は目当てのコンビニに到着する。

 -だが、その数分後にコンビニであり得ない事が起きた。当然、私は『それ』に巻き込まれてしまう。…しかも、運が悪い事に『当たりどころ』が良くなかったらしく、私の頭の中には走馬灯が浮かんだ。

 その中には、楽しみにしていたあのゲームの事もあった。ああ、なんで私がこんな目に遇わなくてはならないのだろうか?

 最期に、深い悲しみを味わいながらとうとう私の意識はプツリと消えた。…こうして、私はその短い人生を終えたのだった-。



 -その日、『俺』は森の中を必死に走っていた。何故なら、沢山のモンスターに追われているのだから。…どうして、俺がこんな目に遭わなければならないのか。

 その日、王国は滅亡の危機に瀕していた。その始まりは、『堕ちた聖女』と揶揄された第3王女の国外追放からと言われている。

 その日以降、王国を守護する聖獣の力は急速に失われてしまったのだとか。…確かに、追放からたったの数日で王国はパニックに陥っていた。


 やがて、パニックは国家を揺るがす大事件をも引き起こし、つい先日俺は家も家族も領地さえも失った。…何故、こんな事になってしまったのだろうか?

 俺は、貴族は、王族は、国民は、大罪を犯した『あの小娘』を糾弾しただけなのに。

 どうして『正しい』事をした筈の我々が、こんな仕打ちを受けなくてはならないのか?

『…っ!……なっ!?』

 理不尽な状況に腹を立てながら、ようやく深い森を抜けた。…だが、その先には絶望が待ち受けていた。

 -なんと、森の先は崖になっていたのだ。まさか俺は、モンスターに誘導されていたのだろうか?


『グギャアアアッ!』

『…クソッ!』

 そうこうしている内に、モンスターに追い付かれてしまった。…そして、俺を取り囲んだモンスター達はジリジリと迫って来る。

 当然、俺は後ろに下がるが直ぐに崖っぷちに追い込まれてしまった。

『…っ!?』

 絶対絶命のなか、今度は大きな地震が発生した。…直後、俺はバランスを崩し奈落へと落ちてしまう。だから、俺は-。

『-クソオオオオッ!?なんで俺がこんな目にいいいいッ!』

 まるで、世界を恨むかのような絶叫をあげながら俺の人生は唐突に終わってしまう。…その筈だった-。

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