☆第十九話 旅館のイベント☆
「………ぅうん」
ボンヤリとした頭で目覚めたマコトは、仰向けから無意識に裸身を起こしつつキョロキョロとして、すぐにハっと覚醒をする。
コーベェ牛たちを港まで運搬するトラックへと乗り込んだ、マコトとユキ。
しかし運搬で疲労をしていたコーベェたちに、肌の汗に含まれる塩分とミネラルを目当てとして、裸の二人は肌という肌を舐められ続けた。
手脚や頬や細い背中だけでなく、平らなお腹や敏感な腋の下や脇腹、更に大きくて丸い巨乳やツルツルのヒップや弱い内腿だけでなく、お尻の谷底から無毛で清楚な処女溝までの全てを、徹底的に舐め尽くされたのである。
ツブツブで熱くて力強くて、紅茶の香りがするヌルヌル唾液にまみれたコーベェたちの舌に這い回られながら、マコトとユキは、裸身が跳ねて脳内が真っ白になる瞬間を何度も味わわされながら、いつしか浅い眠りへ落ちつつどうやら港へと到着をしたのであった。
「………」
既にトラックは停車をしていて、周囲のコーベェたちも二人の肌の成分を舐め取り尽くし、落ち着いた様子である。
「恥ずかしかったよ…」
コーベェたちに肌を舐め廻されて、頭だけでなく裸身が脳内フラッシュ反応をさせられて全身が脱力をしていたのに、今はなんだかスッキリとして、身体にも力が湧いていたり。
隣では、マコトとは上下が逆向きだけどやはり仰向けなヌードのユキが、スヤスヤと可愛い寝息を立てていた。
「…ユキ、大丈夫?」
「…んん…マコト…ふわわ…」
小さく欠伸をして、隣で裸のネコ耳パートナーを見て、廻りをキョロキョロとして、ユキも思い出した様子。
「…あら、マコト…ご無事でして?」
「うん。ユキ、見て♪」
言われたユキが、まだ寝惚け眼ながらマコトの視線を追って見上げると、目的地だった港の旅館が、そびえ建っていた。
「まぁ、港ですわ♪」
「ココまで来れば、あとはボートを拝借して 人工島へ戻るだけだよ」
荷台の枠板から周囲を覗くと、トラックの右側が旅館の裏口で、その更に向こうが海だと解る。
トラックと旅館の間は十メートル程の路面があって、裏口としては向かって右に荷物搬入用の大きな扉と、目の前には従業員用らしいタイプの違う扉が二つ、離れて設置。
目的としては、いま開かれている荷物用の扉は、搬入作業中で人がいるから、人用の二つの扉、どちらかだ。
目的地を定めて、身を伏せながら、マコトとユキはウンと頷き合う。
「急がないと…!」
「ええ」
二人が目覚めたタイミングは、実はかなりギリギリだった。
コーベェを乗せた運搬トラックが旅館へ到着をして、旅館の触れ合いイベントの為に、荷台から下ろされ始めていたからである。
荷台の後ろが開かれて、一頭ずつ降りて行くコーベェたちは、マコトとユキから新鮮で良質な塩分とミネラルを補充したからか、元気に「ウモゥ」と鳴いていた。
このまま荷台にいても、裸身を隠せる牛たちはすぐにいなくなって、全裸の二人が残されるのみである。
日頃の訓練の通りに、身を伏せたまま周囲を確かめて、荷台から飛び出すタイミングを計る。
荷台からコーベェを連れる飼育係の男性と、旅館の入り口で搬入をチェックする作業員の男性が、荷台へ背を向けた瞬間。
「ユキ!」
「はい!」
全裸の二人は、素早く柵を乗り越えて音もなく路面へ着地をして、従業員用と思われる扉へと駆けだした。
二台から走り去る二人に気付いたコーベェが、別れの挨拶みたいな声を上げる。
――ゥウモウウウウウウウゥゥ。
「「………っ!」」
作業員さんたちに気付かれる。
焦った二人だけど、走り出してしまった以上、もう戻る事など出来ない。
「…ごきげんよう♪」
振り返ったユキは、無垢な笑顔と小声で手を振りつつ、旅の仲間へ挨拶を返した。
搬入作業の様子から、男性たちが荷台へ戻ってくるのに、三十秒ほど。
その間に扉の中へと駆け込まなければ、マコトとユキは、男性たちに裸で見付けられてしまうのである。
『よぉしよし。お疲れ様だ~』
『な~んかこのコたち、やけに元気ですよね~。よかったよかった~♪』
男性たちが作業をしている姿が見えて、声が聞こえる昼間の路上を、ヌードで駆け抜けるマコトとユキ。
扉へ全力疾走をするマコトの漆黒なネコ耳とネコ尻尾が、ユキの純白なウサ耳とウサ尻尾が、緊張と羞恥でピンと立ちながらもプルプルと震え、心臓もドキドキと強く鼓動。
コーベェたちに舐められ尽くして汗を拭われ、むしろ紅茶の香りを纏ったスベスベ素肌となった艶めく白い肌に、また新たな霧汗が浮いた。
「…っ!」
先を走っていたマコトが、よく見るタイプな右側の扉へと辿り着いて同時にドアノブを捻ったら、ガッチリとロックが掛けられている。
「…開かない!」
小さな言葉だけでユキには伝わり、マコトが何度か扉を押し引きしている間に、ユキが左側の扉へ駆け寄って手を伸ばした。
――ガチャガチャ…!
「!」
こちらもロックが。
と焦ったメカヲタクなユキは、こちらのタイプは押し引きではなく上へ向かって押し上げる型だと、素早く理解。
――ガチャ、ガララララ…。
女性でも片手で持ち上げられる仕組みの扉が、音を立てて開かれた。
「マコトっ♪」
嬉しそうな輝く笑顔でユキが呼んだ時には、マコトも凛々しく眩しい笑顔で、駆け寄って来ている。
『じゃ、次 連れてきます』
『はい~♪ ん?』
「「!」」
男性の声に、慌てて扉の中へと駆け込んだ二人。
扉は、開いている時は上のランプが光るようになっていて、男性はそちらに意識が向いたお陰で、中へと消えるマコトの白いお尻はギリギリで気付かれなかった。
『どうかしました?』
『ああ、いえ~。単に 誰かが出入りしたみたいで~♪』
作業中だし、男性たちは、特に気に留めなかった様子。
「はぁ、はぁ…」
「ここは、もう 旅館の館内ですわ♪」
「うん」
裏口から館内へ入ると、いかにも従業員用というか半ば倉庫にも似た、荷物置き場な感じの広くて暗い空間。
二人が入ってきた出入り口の、遠い向かい側の壁には、本館からの出入り口が、シャッターを上げて開けられている。
両腕で裸を隠す二人は、積み上げられている運送用のドリンク・パッケージの陰へとしゃがんで隠れ、周囲を伺った。
「…本館の方、なんだか明るいね」
「ええ。それに、なにやら ニギヤカな声が聞こえてまいりますわ」
マコトのネコ耳よりも感度の高いユキのウサ耳には、何か盛り上げるようにノリノリな女性たちの声と、ワイワイと多数の男性たちの声。
それに、数名だけど静かに熱を上げている感じな女性たちの声も、聞こえていた。
「とても 楽しそうですわ」
「ふぅん…あ」
ユキの言葉で、マコトはさっきの牛たちを思い出す。
「あの子たち、この旅館の触れ合いイベントで 呼ばれていたよね」
「はい…あぁ、なるほどですわ♪」
ユキにも想像が出来たらしい。
「うん。この旅館で今、何か大きなイベントが 広く行われているのだと思う。コーベェたちもその一環で、いま ユキが聞こえているその賑わいも、それらイベントの一つなのかも知れないよ」
だとすれば、ここを突破出来る可能性は二つ。
① 賑わいに注目する人々の背後を走り、ボート乗り場まで駆け抜けてボートを拝借。
② なんであれイベント用の衣装などを拝借して、ボート乗り場まで辿り着く。
今の隠れ場所の周囲には、裸身を隠すに相応しい物はないし、身を隠しているドリンクのパッケージ三つも、いま搬入機によって一つが運び出されて行った。
このまま、夜までここに隠れているのが無理な事は、明白である。
「ボクの考えだけど、みんなの背後を駆け抜けるのは やっぱり失敗をすると思う」
人々が、いつドコへ向くかも解らないし、そもそもお客さんはイベント会場を様々に楽しんでいる筈である。
「マコトの仰る通りですわ。では、私たちの 取るべき手段は」
「うん。見て」
壁に貼ってあるイベント告知のポスターを見付けたマコトにょって、イベントの内容や会場の場所を、ユキも知る事が出来た。
「ボール・リング大会…仮装コンテスト…男女装借り物競走…あら、コーベェ触れ合い広場ですって♪ 先ほどの コーベェちゃんたちでしょうか♪」
「きっとね。それで、この借り物競走。会場もここから近いし、競技も男装と女装だから。きっと 参加者用に簡単な衣装が、それなりの数で 用意をされていると思うのだけれど」
「なるほどですわ♪ その衣装を拝借すれば…」
「そう。なんとか港まで辿り着いて、あとはボートで…ね」
「はい♪」
最終手段と希望が見えて、二人は輝く美顔で微笑み合う。
「とにかく、会場の近くに衣装がある筈だから。このマップの場所へ行こう」
裸身を隠しながら、今までよりも脚が軽く物陰から本館へと掛け出したら。
「「「「「――っ!」」」」」」」
全裸の二人は、入り口から唐突に現れた若い男性三人と、バッチリと目が合ってしまった。
~第十九話 終わり~
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