再びの金属

 皮膚のない部分からは鈍い銀色の金属がのぞいている。男の腕と老爺の足に抱いた既視感は、この写真が原因だったようだ。

(じゃああの人達は事故か病気で手足を無くしてしまったのだろう。そして義手や義足をつけた)

 結論は出たが、まだ疑問は残っている。

 男は皮膚炎になったと言っていた、義手でも皮膚炎になるのだろうか?そしてあの両親の態度の変化は一体……?

 どれもすぐには答えが出そうになかった。

 寝る時刻が迫っていたため、思考を切り上げ、少年はベッドに入った。


 夜中に、両親が話し合いをする声が聞こえた気がした。


         *


 僕は明日引っ越す。

 今日はみんな引っ越しの準備で大いそがしだ。だけど僕と悠木はやる事がほとんど無い。僕の荷物なんて大した物はないし、もう車に積んである。父さん達の手伝いをしようとしても、危ないからと言われてできなかった。

 そんな僕たちを見てお手伝いさんが遊びの相手をしてくれた。

 このお手伝いさんにはこの前ケガをさせてしまった。


         *


 少年は壁の時計を見た。

(もうこんな時間?)

 いつもより二十分ほど寝過ごしている。

 手早く着替えをすませてリビングへ顔を出すと、両親が思い詰めたような顔をしていた。

(どうしてそんな表情をしてるんだろう?)

 両親の変な態度は変わっていない。これまでなら、少年がこんなにも寝過ごしていたら必ず母親が起こしに来ていたはずだが。

 朝食を食べて少年は家を飛び出した。走っていけば学校には遅刻せずにすむはずだ。

 しかし運悪く赤信号に捕まった。

(まあこれぐらいなら何とかなる)

 それほど焦らずに赤いランプを少年が見つめていると、大きなブレーキ音が聞こえてきた。白い車が歩道へ突っ込んでくる。

 少年から一メートル離れた場所に立っていた女性に車が衝突した。大した衝撃は無かったが、女性はそのまま歩道の脇にある民家の壁にぶつかった。

 車から男が出てくる。すぐに女性に駆け寄り、怪我の状態を見て携帯電話で救急車を呼んだ。

 ブロック塀にぶつかった拍子にこすれたらしく、女性の右ほほは広範囲に傷ができていた。

 最初は突然の事故に驚いていたが、顔の怪我以外は大丈夫そうで自分の助けは必要ないだろうと思い、立ち去りかけた少年の目に、女性のほほにある『金属』が映った。

 血とブロックのかけらで赤黒く汚れた皮膚の間から覗くそれは、細かい部品が集まっているのか男や老爺のより複雑な形をしている。見ていると血とオイルの混ざった異様な臭いがしてきそうだった。

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