第5話 エルフ

さて、どうしたものか。


目の前には、明らかに調子に乗った男3人組。僕に絡むだけならまだしも、このままだと後ろにいるディルーネさんにも被害が及びそうだ。かといって、ギルドの中で腰に差している剣を抜くわけにもいかないし。


「さっきからビビってんのかしんねぇが黙ってるだけならさっさとそこどきな!」


「お兄さんたちは後ろのお姉さんと大人同士でお話しするんだからよ」


う~ん。といっても、このままどいたら僕の冒険者登録ができなくなってしまうし、そもそもこのままディルーネさんを放っておくというのも良心が咎める。


しょうがない、実力行使と行くか。絡んできたのは向こうだし。

この状況ならまぁ正当防衛といっても許されるはずだ。許してほしい。


ようは、彼らをケガさせずに無力化できればいいわけでしょ?

大丈夫、だいたい見て分かった。こいつらぐらいなら剣抜かなくても問題はなさそうだ。

とりあえず先頭の男を組み伏せるために手を伸ばそう、としたその時であった。


「そこまでにしろ。」


「あぁ!?」


「なにもんだ!」


僕の背後から聞こえた凛とした鈴の音のような声。振り返った先にいた人物。

まず目を引くのが、その美しい長髪であろう。透き通るような銀の髪が腰のあたりまで伸び輝いている。

まるでラピスラズリを埋め込んだかのような青い目もそうだ。吸い込まれてしまいそうになるほど深い色だ。そして何よりその特徴的な耳に目が向いてしまう。


「…エルフ」


「冒険者同士のいさかいは、いかなる場所であっても禁止だ。事情は知らんが、もしなにか不満があるのであればしかるべき場所に訴え出て正当な証拠を提示すればよい」


「てめぇ…!エリザヴェータ…!」


彼女、エリザヴェータさんというらしい女性は、高圧的な男たちに向かってもひるむことなく凛とした立ち姿で毅然とふるまっていた。いや、めっちゃかっこいいな。


「はっ!様がずいぶんとえらくなったじゃねぇか!」


「…ふん。…私のことは今は関係ない。もしこれ以上騒ぐというのならこちらも対応を考えるが?」


傷なし?エリザヴェータさんの異名か何かだろうか。確かに傷一つない美しい肌をしてるし。悪い名前には聞こえないけど、本人の表情をみるとそうでもないのか…?といってもこちらとしては事情も何も分からないので、静観するしかないわけだが。


「…チッ。いくぞてめぇら」


そうして男たちは、捨て台詞を吐きながらギルドから出ていったのであった…





「ありがとうございました!エリーさん!」


「構わない。私はこういう時にしか役に立たないからな」


「そ、そんなことは!」


愛称、エリーさんっていうのか。なんか言葉遣いとか立ち姿と違って可愛い愛称だな。ギャップがあっていい…いや何を考えているんだ僕は。


「すいません、助けていただいてありがとうございました!」


「問題ない。それに君なら私が介入せずとも解決できていたのではないかな?」


「穏便に済ませるのは難しかったと思いますから。間違いなく助かりました」


「ふふっ、そういうことなら礼を受け取ろう。君はずいぶん気持ちいい性格をしているな」


そうやって微笑むエリザヴェータさんは、とても美しかった。


「さてディルーネ、彼とは話の途中だったのでは?」


「あ、そうでした!」


そういえばそうだったな。怒涛の男たち横やり事件のせいで流されていたけど、冒険者登録の途中だったんだっけ今。


「私たちの所属するギルドは、冒険者の皆さんの活動を管理するとともに、その安全を最大限保証するものです。そのシステムの一環として、ギルドには入所試験チュートリアルというものがあります」


「チュートリアル…ですか?」


「はい。冒険者登録を行っていただく方の中で、戦闘職ではない職業を発現されている方々にお願いしている試験でして、今回リュウさんにも受験していただかなければなりません」


なるほど、だいたい話が見えてきた。簡単に言えば、本当に冒険者として活動することができるかどうかを確認したいってコトか。それはそうだろう。職業を持っていないような人物がほいほい迷宮に行って怪物にやられてしまえば、ギルドの信用問題にもなるわけだし。


「受験については問題ありません。どんなことをすればいいんですか?」


「ギルドから補助要員を付けますので、迷宮の上層、だいたい3階層あたりまでを探索していただきます。同行したギルド職員が問題ないと判断されれば、晴れて冒険者の仲間入り、となるわけです!」


思ったよりシンプルな試験である。高位冒険者とバトル!とか、高難易度の試験で満点取れ!みたいなのを想像してたんだが。

テストとはいえ、いきなり迷宮に挑戦できるというのは、こちらとしても願ったりかなったりだ。


「わかりました。それで大丈夫です。いつごろ迷宮に向かうことになるんですか?」


「こちらから適性帯の冒険者の方を募集しますので、同行者が決まりしだい…」


「ちょっといいか?」


と、ディルーネさんの背後で黙って話を聞いていたエリザヴェータさんが待ったをかけた。


「その入所試験だが、私が同行しても構わないだろうか?」


銀髪美人が仲間になりたそうにこちらを見ていたらしい。


なんで?

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