第5話 王太子視点

「わー素敵なネックレスがある!!」


「本当ですね」


「どれも素敵ね、ねぇどれが私に似合いそう?」


「そうですね、これなんてどうでしょうか?」



「いらっしゃいませ、ゆっくりみていってくださいね」


 早速客が来た。若い女性が2人。うまく装って平民のように見せているが、俺のジュエリーは高価で平民がみると価格で引いてしまう。価格をみても引かないのは貴族だ。とするともう1人は侍女か。そしてまだ守護精霊の顕現していない貴族だ。


 貴族は守護精霊の顕現を無意識に求めているため、俺のジュエリーがなぜか気になってしまう。


(ネオ、あの人は違うよ。番じゃない。番を見逃したら困るから早く帰ってもらおうよ)


 イングが声をかけてきた。どうやら番ではないようだ。


 守護精霊は基本的に守護している本人にしか興味がない。俺の守護精霊のイングは特殊で番がいるから番にも興味がある。だから番を探すことができる。


『そうか、じゃあさっさと購入して帰ってもらう』


 今回は貴族の守護精霊顕現のために露店を開いているわけではない。あくまで俺の守護精霊の番を見つけるための露店だ。それでもこうやって俺のジュエリーに出会うことができ、守護精霊が顕現するラッキーな貴族もいる。


「気になるものがありましたか?」


「はい、これとこれで迷っています」


「そうですね、両方を交互に持ってみてください。暖かい感じがする方があなたに合うネックレスですよ」


 女性は二つで迷っていた。ローズクオーツのネックレスとシトリンのネックレスだった。合っているのはどうみてもシトリンだが、自分で選んで納得してもらう必要がある。少し魔力を使い、シトリンのネックレスに働きかけて気づくようにする。


「こっちの黄色の方が暖かい」


「そうですか。ではそちらが合う方だと思いますよ」


「ありがとうございます。この黄色の方にしますね」


 女性は俺の魔力で無事シトリンネックレスを選んで購入した。


「はい、こちらこそお買い上げありがとうございました。どうされますか?包みますか?身につけていかれますか?」


「包んでください」


「わかりました。少々お待ちくださいね」


 ネックレスを簡単に包み、女性に手渡した。


「購入いただき、ありがとうございました」


「こちらこそありがとうございます。大切にしますね」


この言葉は純粋に嬉しい。


「ありがとうございます」


 この女性は露店でネックレスを購入しただけでまさか守護精霊が顕現するなんて思っていないだろう。俺が作ったジュエリーを気にいってもらえ、おまけに守護精霊まで顕現して喜ばれるという運命の魔術師として働くことは俺にとってとても気分の良いことだった。


(ネオ!あの子、あのオレンジの髪のキョロキョロしてる子。番かもしれない)


『本当か?』


(多分ね。あとは屋根につけた目印の光に気づいて寄ってくれると良いけど)


『多分?気づいて寄ってくれると良いけど?どういうことだ?さっきあんなに自信満々にいってたから俺は絶対番で気づくものだと思ってたけど?』


(はは…ネオも知ってるじゃん、私5連敗だよ…)


『そうだったね。まぁ当たってると良いね』


 イングとそんな話をしているとオレンジの髪の女性が俺の店の前にやってきた!


(ネオー!やったー!!今度こそ番だよ!!)


 イングが実体であれば踊り出していそうなくらい喜んでいた。


 まだ本当に番かどうかわかったわけではないのだが。

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