秘すれば青

ロッタ

 色鮮やかなステンドグラスから差し込む光が、チャペルの持つ神聖な雰囲気をいっそう強める。


 前方では、花嫁と花婿が指輪の交換をしていた。2人は寄り添い、片手にはまった指輪を参列者に見せる。


 絵に描いたような幸福の姿に、参列者から盛大な拍手が送られた。氷室灯ひむろあかりもまた、控え目ながらも手を叩いて、親友である姫宮火花の門出を祝福する。


「火花、これで何度目の結婚だっけ」


 喧騒に紛れて、皮肉交じりの声が隣から聞こえてきた。確か、火花の大学時代の友人だったはずだ。3人は唇を歪めながら、ひそひそ言葉を交わす。


「3度目。29にもなってよくやるよね」

「1人目はDVで半年。2人目は浮気で1年とちょっとで離婚だっけ。どうせ今回も1年持たないって」

「でも、今度の相手はぱっと見まともそうじゃない? 白鳥誠治しらとりせいじさんだっけ。ほら、ちょっとカッコいいし」

「分かんないよ。なんせ、火花が求めているのは、『私を救ってくれる理想の王子様』だし」


 3人が一斉に笑い声を上げる。その一切を無視して、灯は火花を見ていた。上品なパールのネックレスが際立たせる細い首や、純白のドレスに身を包んだ立ち姿を、この場の誰よりも綺麗だと思いながら。


 2人は手を取り合うと、チャペルの外へ歩いていった。扉の前に来たところで、足を止め、熱い視線を交わし合う。引き寄せられるように顔が近づき、やがて重なった。火花は初め目を開けていたが、ゆっくりと瞼を下ろしていく。


 刹那、彼女の瞳に火花が散ったのを、灯は認めた。変わらぬ輝きは、灯を29歳の女性から15歳の少女に戻す。

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