第9話

---


『配信者、ダンジョン突入中。【コメントで攻略】』


「ごあいさつキック、からのバトる!」



---


「やあみんな。今日はモフ蔵おやすみです。

でも、安心してください──代わりにアイツが来てます」


そう言ってカメラをパンすると、画面の向こうにふわふわの白兎が、ぽてぽてと歩いて登場。


> 「あー癒しの兎!!」

「“ご挨拶”来るぞw」

「これは期待」




「それじゃ、今日もよろしく──」


ビターンッ!!!

(※背中に飛び蹴り)


「ぐえっっ……ッス!はい、ご挨拶……!!」


主人公は軽く前のめりになりつつも、そのまま無言で白兎の頭をぽふぽふ撫でる。


「わかってるよ、これが君なりの“おはよう”なんだよな」



---


> 「ルーティン化してて草」

「挨拶されてからの撫で、すこ」

「切り抜き:『おはようキック→なでなで』確定」





---


本日の舞台は、ちょっと不思議な構造のダンジョン──

「反復と反撃の回廊」


廊下がループしてる上に、敵がひたすら「同じ技」で攻撃してくるという、クセの強いギミックダンジョン。


「敵がまた出たぞ。あれ……人型?」


現れたのは、鎧を着た謎の騎士(見た目は立派)。

だが──


「くらえッ!……パンチ!!」

(※ノールックで繰り返し出すただのパンチ)


「……パンチ!? なんでパンチ!? 武器持ってるのに!?」



---


> 「何そのパンチwww」

「回廊のクセがすごい」

「切り抜きリスナーここ注目」





---


「くらえぇぇええ!! パンチィィィィ!!!!」


「いやうるさいな! 一生パンチじゃん! せめて“叩きつけ”とか言えよ!!」


【BGM:勇ましいバトル曲(ズレた壮大さ)】


結局、主人公が**ヒノキ棒で突き→兎が蹴る→ふたりでバトル勝利(?)**という流れに。


> 「息ぴったりすぎるw」

「ヒノキ棒&うさぎキック最強タッグ」

「切り抜きタイトル:『騎士の無限パンチに挑む弁当系配信者とウサギ』」





---


【配信後データ】


登録者:+47人


累計登録者数:253人


切り抜きリスナーが投稿した動画:5本


『#背中キックで始まる朝』


『#騎士のパンチを避けろ!配信主VS無限拳法』


『うさぎと配信者の共闘が想像以上に癒しだった』



推定収益:302円




---


「……お前、もう完全にレギュラーだな」


そう言って再び頭を撫でる主人公に、白兎は「ふにゃ」と音を立てて目を細めた。


「癒しって、こういうのでいいんだよな……」



---

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る