第7話
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『配信者、ダンジョン突入中。【コメントで攻略】』
「第二層──ぴょんこ谷の洗礼」
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「やってきました、第二層! 名は“ぴょんこ谷”! まあ、名前からして平和っぽいっすよね?」
手にはヒノキ棒、背後には例のぷるぷる狼スライム(仮名:モフ蔵)。
そして、視聴者とともに進む癒しの空間──のはずだった。
「お、なんかいる。……ウサギ?」
草の陰から、ころんと丸くてふわふわした白兎が出てきた。
ぽやっとした顔、ピンクの肉球、どう見ても“かわいい代表”。
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> 「あ、あれは……」
「これ絶対癒し回」
「また切り抜き確定のやつやん」
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「おーい、おいで? お菓子あるよ?」
しゃがんで手を差し出す。
──そして次の瞬間。
ビターンッ!!
「……へぶっ!!?」
突然、白兎の飛び蹴りが主人公の背中にクリーンヒット。
「お゛う゛っ……!? え、なに、嫌われた!?」
その場にぺたんと座り込み、しゅんとうなだれる主人公。
「そ、そんな……俺、なにかしたか……?」
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> 「いやwwwかわいそうw」
「拒絶されたと思ってるの草」
「思ったよりガチで落ち込んでる」
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しゅん……しゅん……。
その空気を感じ取ったのか、さっきの白兎が近づいてきた。
ふにゃっ、とした肉球手をそっと上げて──
「ぽす。」
主人公の頭の上に肉球をそっと乗せて、
**ふにふに……もにもに……ぽすぽす……**と撫で始めた。
「……へ? 撫でてる?」
白兎の目はトロンと優しい。
それはまさに、「さっきの蹴りはご挨拶だよ」のサイン。
「……そ、そうだったのか……!!」
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> 「撫でてるうううう!!!」
「これ!! これですよ!!」
「心の傷からの癒し!!」
「この空気感でチャンネル登録押しました」
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その夜──
【切り抜き動画:『#ウサギに蹴られて落ち込む配信者、撫でられて癒される』】
再生数:14万
コメント総数:700超
ハッシュタグ:「#ぽすぽす」「#肉球ケア」「#落ち込み配信者救済回」
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そして、配信者のスマホには新たな通知。
> 【登録者 +60】
【累計登録者数:144人】
【推定収益:197円】
【“切り抜き投稿リスナー”が収益対象として登録されました】
「え……切り抜き投稿でも……金入るの……?」
運営通知を確認すると、明らかに書かれていた。
> 「※貢献度の高い切り抜きリスナーには自動的に“収益分配枠”が与えられます」
「あなたのバズは、みんなで育てるものです」
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「……なんか、マジで“仲間”って感じしてきたな……」
主人公は、ちょっと照れくさそうにカメラを見て言う。
「ありがとう。ウサギにも、切り抜いてくれたお前らにも」
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