第47話 骨人騎士
対岸に渡ってから数分経ったが、モンスターとエンカウントすることも、何か特出するような出来事があった訳でもなく、ただ水が流れる音を聞きながら散歩しているだけ。その言葉だけを見れば、癒される状況だが、ここは下水道であり、流れる水は汚水なため、心が癒されることもなく、ただ歩いているだけだった。
「何もないね」
「そうですね。でもずっと歩いていれば何かあるかもしれないですよ」
「きゅう」
何も起きないことに対して、多少のつまらなさを感じつつも、このまま続ければ、いつか何かが起きると信じて進む足を止めることはなかった。
さらに数分の時が経つと、少し離れたところに黒い影が見えた。その影はスケルトンよりも上背があり、右手には剣らしきものも見受けられる。
「うーん、あれは何だろうね」
「モンスターであることは分かりますけど、どんなモンスターなのかは分からないです」
近寄ることで、モンスターの全貌が明らかになる。
顔はスケルトンと同じ人の頭蓋骨が露出、露出している骨の身体を隠すように身に付けている鉄の鎧、右手で引き摺っている剣、そのモンスターは
「骨人騎士かぁ、大変な相手だなぁ」
「最初の攻撃をしてもいいですか?」
「大丈夫だよ」
「では、ポルターガイスト!」
サキに許可を取ったアリウムは、ポルターガイストで石を持ち上げる。そのまま全力で骨人騎士へと投げつけた。石は猛スピードで骨人騎士に激突したが、少しよろめいた程度でまともなダメージを与えられているようには見えない。
攻撃を受けたことで、サキたちの存在に気が付いた骨人騎士は、駆け出す仕草を見せたのち、即座に距離を詰めた。
「おっと」
骨人騎士が駆ける勢いのまま振り下ろした剣を、サキは刀で受け流す。重たい剣は地面に傷をつけ、砂埃を舞い上げた。
舞い上げた砂埃が落ちるよりも速く、サキは刀を振り抜いた。骨人騎士の首を狙った斬撃は、骨と骨の継ぎ目をドンピシャで通り抜け、骨人騎士の頭が地面に落下する。
「ふぅ、案外簡単に勝てたかな?」
サキは勝利を確信して振り返って、カグヤとアリウムの顔を見たが、その表情は明るくなく、それどころか青くして慌てているように見える。
「まだ倒せてないです!!」
「――っ!?」
アリウムの声に、慌てて骨人騎士の方に目をやる。
そこには剣を振り下ろしている骨人騎士の姿があった。既に振り下ろし始めているため、刀で受け流すのは間に合わないだろう。彼女は一か八かで、腕を犠牲に命を守ろうとした。
突き出された腕に対して、振り下ろされた剣は、肉を捉えると、一瞬の抵抗を感じた後、すぐに切断した。
「くっ――」
痛みはないが、腕が斬り落とされた衝撃は凄まじく、流石のサキでも顔を歪めてしまう。だが腕を犠牲にしたおかげで、剣の軌道を逸らすことに成功し、致命傷を受けることは避けることができた。
骨人騎士の剣が地面にぶつかった隙の間に、サキは飛び退いて骨人騎士から距離を取った。
「はぁはぁ、腕を斬り落とされるって、こんな気分なんだ」
腕を落とされたサキが、そんな感想で終わることができるのは、現実世界の戦場に出たことがある祖父から、その壮絶な戦いの経験を聞いていたからだろう。
「きゅう!!」
「“アクアボール”!!」
「ちょ、ちょっと」
仲間であり、主人でもあるサキを傷つけられて、怒りに駆られたカグヤとアリウムは、サキの制止も聞かず、骨人騎士の間合いへと突っ込んで行く。
カグヤは突進の勢いのまま、飛び蹴りをお見舞いした。その一撃は、骨人騎士の鎧に大きな凹みを生み出し、その身体を吹き飛ばした。
壁に激突して、地面に座り込んでいる骨人騎士へと、アリウムは容赦なく“アクアボール”をお見舞いする。カグヤの攻撃跡をピンポイントで狙った攻撃は、消耗している鎧を突き破り、骨人騎士に大きなダメージを与え、ポリゴンへと変えた。
「サキお姉さん!!」
「きゅう!!」
ポリゴンが消えるまで確認した2人は、背後で呆然としていたサキへと駆け寄る。
アリウムはサキのことを優しく抱きしめ、カグヤは月の波動でサキの体力を回復させていく。しかしいくら体力を回復させようと、失った腕が戻ってくることはない。
「う、腕がぁ」
「きゅ、きゅう」
アリウムとカグヤは、サキの失った腕を見て、悲観的な声を上げる。腕の断面は赤いポリゴンが塞いでおり、グロテスクな光景にはなっていないが、それでも腕の断面が見えると言うのは衝撃的な光景だろう。しかしサキはその断面を見ても、表情を変えることはなく、淡々と魔法を発動させた。
「だいぶレベルが上がったし、この魔法も使えるでしょ。“
サキがその魔法を発動させると、まばゆい光が腕の断面を覆う。あまりの輝きに、本能的に目を逸らしてしまい、何が起きたのか把握することができなかったが、再び腕を見た時には失ったはずの左の肘から先が生えていた。
「戻ってる!?」
「きゅう!?」
「やっぱり【神聖魔法】って規格外の強さだよね」
彼女は再生させた左手をグーパーして感覚を確かめながら、ゲーム最終盤に出て来るであろう【神聖魔法】の規格外さを再認識した。
「ある程度回復できたし、先に進もうか。今度は油断しないように」
「はい!」
「きゅう!」
彼女たちは出発した。
――ステータス――
人物
プレイヤーネーム サキ
種族 人間
体力 7353/8100
魔力 3245/19720
職業 聖女Lv32
スキル 刀豪術Lv9 薬術Lv3 料理Lv1 採取Lv2 採掘Lv3 神聖魔法Lv4 テイマーLv5 魔力増加Lv21 毒耐性Lv3
称号 礼儀正しい人 規格外 ギルドマドンナのお気に入り 優しきテイマー 鬼との友好 ジャイアントキリング 開拓者
装備
頭
上半身 聖女の着物
下半身 ――
靴 聖女の下駄
武器 酒乱之刀
アクセサリー 守護のネックレス
オーガの篭手
聖女の羽衣
魔法
聖炎 ホーリー ホーリーソード ヒール エクストラヒール キュア
テイムモンスター
名前 カグヤ
種族 ルナラビットLv18
体力 343/343
魔力 621/980
スキル 月の波動Lv4 噛みつくLv6 飛び蹴りLv5 魔力増加Lv16
装備
アクセサリー レッドスカーフ
名前 アリウム
種族 幽霊少女Lv14
体力 301/301
魔力 523/1064
スキル 青魔法Lv9 ポルターガイストLv5 霊体Lv―
装備
アクセサリー
魔法
アクアボール
――ステータス――
――あとがき――
頼光は変化がないため省略しました。
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