第45話 不思議

「イベントまで時間があるし、王都観光でもしようかな?」


「王都なんて初めて来ましたよ!」


「きゅう!」


 人混みが苦手なサキだが、アリウムとカグヤが居ることで王都の人混みで気持ち悪くなることはなかった。

 彼女たちは人の波に合わせて往来を進んで行く。特に目的もなく歩みを進めた彼女たちが辿り着いた場所は、露店や小さな店舗が並ぶ商業地区。


「いろいろな露店が並んでいるし、見てみようか」


「掘り出し物があると良いですね!」


「きゅう!」


 一先ず露店を見て回ることにした。

 露店に並ぶ商品は見たことないようなアイテムが多く、サキとアリウムは目を輝かせながら、ゆっくりとアイテムを見定めていく。


「うーん、この“謎のお薬”って何ですか?」


 サキが手に取ったのは、店主の直筆と思われる“謎のお薬”と書かれた紙が巻かれた、鮮やかなスカイブルーの液体が詰められた瓶だ。


――露店――


謎のお薬 レア度2 品質C

どんな効果があるか分からない液体

1000ラオ


――露店――


「これは作った私でも効果が分からない薬だよ」


 店主の老婆はしゃがれた声で怖いことを言う。

 販売されている薬は、目の前の老婆が作ったということしか情報を得ることができないが、サキは面白そうと思って購入することにした。


「毎度あり」


 老婆の露店を後にしたサキたちは、露店散策を再開する。

 しかしサキのお眼鏡にかなう面白い商品や役に立ちそうな商品を販売している露店は中々見つからず、ただの散歩になっていたが、それはそれで楽しんでいる3人だった。


「面白そうなアイテムはあるけど、何処か物足りない物ばかりだなぁ」


「物足りないからこそ、露店で売っているんじゃないですか?」


「確かに、それはそうかもしれない」


「おっ、これなんてどうかな?」


 サキが手に取ったのは、老婆の謎のお薬と違ってどす黒い液体を瓶に詰めた商品で、その効果を見て彼女の頭にピンと来たようだ。


――露店――


実体化ポーション レア度5 品質E

霊体無効化 3m

10000ラオ


――露店――


「これを使えば、アリウムも生身の人間みたいな生活を送れるんじゃない?」


「確かに肉体を得られるかもしれないですけど、10000ラオも払ってでも手に入れたいものじゃないですよ。だって今のままでも食事は取れますし、服装だって変えようと思えば変えられますよ?」


「えっ? 服装って変えられるの?」


「今のままでは変えられないですけど、服のレシピを見せて貰えれば、完全再現できますよ」


 サキは、アリウムの服装が現在着ている白色のワンピースで固定されていると思っていたため、着替えることができると聞いて、驚きで言葉が出なかった。

 そして必要のない高価な薬を持っていることが怖くなったのか、慌てながらもゆっくりと商品を戻した。店主からの視線を気にして、逃げるように小走りで露店を後にした。


「ふぅ、逃げてきちゃったけど、ここ何処だろう?」


 サキたちは人とぶつからないように、小走りで逃げてきてしまったため、現在地が分からない迷子の状況に陥っていた。

 周りを見渡しても、同じような建物ばかりで、むやみやたらに進んでしまえば迷子の深みに嵌ってしまいそうで、無作為に動くわけにはいかなかった。


「どうしようか……イベントが始まれば、コロッセオに強制転移されるらしいから、7日後には戻れるだろうけど、流石に7日は無駄にできないよな……どうしたらいいと思う?」


「逆に吹っ切れて、迷子上等で探索しましょうよ!」


「確かに、コロッセオに転移できるんだから、気にする必要はないよね!!」


 彼女たちは複雑な住宅街へと足を踏み入れた。

 とりあえずまっすぐ進むことにした彼女たちは、突き当りが来るまで進み続ける。


「長い道だなぁ」


「でもファスターの時と違って、終わりが見えているから、気が楽でいいじゃないですか」


 アリウムが言っているのは、サキと出会った時にクエストの影響で終わりの見えなかった路地裏のことで、その時は原因である酒乱ゴーストを倒さない限り終わりの見えない路地裏に囚われることになっていたが、今回はかなり離れたところにだが、終わりが見えているため、気持ち的には楽だった。

 そして世間話をしながら進んだことで、特に苦しい思いをすることなく、突き当りに辿り着いた。そこはT字路で右と左に行くことができる道になっているが、どちらも見覚えのない道に見える。


「どっちがいいかなぁ……多数決を採るよ。右がいい人は手を挙げて、せーの」


 アリウムとカグヤが手を挙げた。

 サキは左を選ぶつもりだったが、右側に2票入ったので、右側に進むことになった。

 再び長い距離を歩くことになったが、彼女たちの世間話が尽きることはなかったため、苦行になることはなかった。

 そんな彼女たちが足を止めたのは、突き当りではなく、道のど真ん中にあるマンホール、それも少しだけズレているマンホールだ。


「これは入ってくれって言っているようなものだよね」


「私は入ってみたいです」


「きゅう!」


 アリウムとカグヤが入りたいと言ったため、サキたちはマンホール内への潜入を決めた。


――あとがき――

マンホール探索開始!


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