第43話 少女との別れ

 リカに別れを伝えるため、リリルカ宅を訪れているサキ。

 彼女に懐いているリカは、涙を流して別れを悲しんでいた。


「サキお姉さん……」


「ごめんね、また戻ってくるからさ」


 グスグスと鼻を鳴らしながら、サキの袖を掴んでいるリカの可愛らしさに決心が揺らぎそうになっていたが、リカに対する感情よりも自身の好奇心が上回っていたため、王都へ向かう意思を曲げることはなかった。


「約束だよ」


「うん、約束」


 サキとリカは指切りをして、リカに会いにファスターへ戻ってくることを約束した。

 リリルカとも別れの挨拶をしたサキは、ファスターの街でお世話になった人への挨拶回りを行った後、王都へと出発した。


「いやぁ、ファスターでの生活は楽しかったなぁ」


「きっと王都での生活も楽しいですよ!」


「きゅう!」


 サキは召喚したアリウムとカグヤと共に、王都を目指して“北の森”を歩いていた。一度は頼光も召喚したが、彼が歩くことを極端に嫌がったため、仕方なく3人で王都を目指すことになった。

 運営からのアナウンス通り、“北の森”の生態系が一変している。頼光がエリアボスの任を担っていた時は、オーガなどの鬼系モンスターが跋扈している魔境だった。しかし現在の“北の森”は多少のオーガは見受けられど、主なモンスターは2種類のスライムとかなり簡単なマップに変化している。


「おっ、あれはポイズンスライムかな?」


 サキの視線の先に居るのは、紫がかった色をした流体ボディでゆっくりとこちらへ迫るポイズンスライム。このモンスターは毒の液体を飛ばす攻撃をしてくると事前情報を得ていたため、むやみに接近するという愚策は選ばなかった。


「アリウム、お願いしてもいい?」


「はい! “アクアボール”」


 幽霊少女のアリウムがポイズンスライムの方に掌を向けると、水の塊アクアボールが射出された。

 鈍い動きしかできないポイズンスライムが避けられるはずもなく、そのぷるぷるの身体に着弾する。しかし大きなダメージを与えることはできなかったようで、ポイズンスライムの反撃を許すことになる。


「攻撃が来るから、気を付けて!」


 サキの言葉に、アリウムとカグヤは警戒を強め、どんな攻撃が来ても避けられる体勢を取った。

 ポイズンスライムが身体をぷるぷると振るわせている。すると見るからに毒を帯びていそうな、紫色に染まった水の塊を生み出していた。それが射出されると、アリウムの水の塊よりは劣る速度でサキたちへと迫る。


「私が破壊するよ」


 一歩前に出たサキが居合斬りを放つ。水の塊の中心を捉えた刃は、その攻撃を真っ二つに切断した。その勢いのまま、ポイズンスライムの下へと駆け出す。

 サキが纏う気迫に恐怖したポイズンスライムは逃げ出そうするが、人間の脚に敵うはずもなくなく、彼女が振り下ろした刀によってポリゴンとなって消えて行った。


「ふぅ、やっぱりオーガとかと比べると簡単な相手だったね」


「でも毒って厄介な攻撃ですよね」


「私の魔法があれば、治るのかもしれないけど、受けるのは極力避けたいよね」


 そんな毒についての会話をしていると、木の陰から新たなモンスターがぬらりと姿を現した。

 そのモンスターは丸っこい身体や流体ボディな点はポイズンスライムと同じだが、紫がかった色をしているポイズンスライムとは違って、通常のスライムと同じように水色っぽい半透明なボディを持っていた。その姿形は通常のスライムにそっくりだが、全く別のモンスターだ。


「あれは……ウォータースライムかな?」


 ウォータースライム。

 スライムとほぼ同じ姿形をしているが、ステータスが大幅に高くなっており、青魔法も使用してくるため、スライムと比べると大幅に強いモンスターだ。


「カグヤお願い」


「きゅう!」


 カグヤはサキの指示を聞き、ウォータースライムの下へと駆け出す。一瞬にして最高速度に至ると、その勢いのまま飛び蹴りを放つ。

 その攻撃がウォータースライムの身体に炸裂すると、一撃で体力を削り切ってポリゴンへと変えた。


「きゅう!」


「すごいよカグヤぁ」


 サキはVサインで勝利を誇るカグヤのことを抱きしめると、自分が満足するまで撫で続けた。


「アリウムもこっちおいで」


 撫でられて蕩けた顔をしているカグヤのことを羨ましそうに見つめているアリウムの存在に気が付くと、手招きして近くに来てもらう。

 近付いて来たアリウムのことを、獲物を前にした肉食動物が如く一瞬にして抱き寄せる。そしてカグヤにお見舞いした魔性のなでなでを繰り出した。

 一瞬にも数時間にも感じるなでなでを終えると、王都への歩みを再開した。


「私たちは酒呑童子と討伐したけど、どんなモンスターがエリアボスをやっているのか知りたいよね」


 そんなことを考えていると、現“北の森”エリアボスの縄張りに入ったようで、アナウンスが聞こえて来る。


『エリアボスの縄張りに入りました。再戦しますか? Y/N』


「エリアボスは酒呑童子じゃなくなったけど、勝利した扱いになっているのかぁ。まあどんなモンスターか知りたいし、当然YESだよ」


 すると縄張りとなっている開けた場所の中央で、まばゆい光と共にエリアボスが現れる。


――あとがき――

次回エリアボスとの激闘!


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