第37話 鬼を斬る刀

 鎌セザコとのPVPを終えたサキは、タイルから武器と装備が完成したと連絡を受けたため、彼の下へと向かっていた。


「それにしてもかませって人は何がしたかったんだろうね」


「サキお姉さん、かませじゃなくて鎌セザコさんです」


「ごめん、ごめん、そうだったね。急に喧嘩を売ってきたことしか、印象に残らなかったから、名前を間違えて覚えていたよ」


「確かに喧嘩を売ってきたことしか印象に残らなかったですけど、名前を間違えるのはよろしくないですよ」


「そうだよね……」


 幼い少女に諭される女子高生、客観的にその状況を想像したのか、サキは頬を赤くして俯いてしまった。

 彼女はタイルの店に着くまでの間、俯き続けていたため、彼女たちの間は無言が支配していた。


 PVPが終わってから数分しか経っていなかったが、彼女たちの体感時間では、1時間近く歩いているように感じていた。


「……着いたね」


「そうですね」


 未だに気まずい雰囲気が流れる。

 そんな空気感を破壊したのは、彼女たちの背後から聞こえて来た男の声だ。


「おっ、来たか。いい装備が出来上がったぞ」


「「タイルさん!」」


「なっ、なんで2人して、助かったみたいな顔でこっちを見るんだ?」


「いえ、気のせいです!!」


「はい、気のせいです!!」


「2人は仲がいいな」


「きゅう!!」


 タイルが、サキとアリウムは仲がいいと言ったことに対して、カグヤが嫉妬の鳴き声をあげた。それを見たタイルは優しい笑みを浮かべながら、言葉を続ける。


「そうだったな。お前ら3人は仲がいいな」


「きゅう」


 カグヤは納得したように、首を縦に振りながら鳴いた。


「早速、装備を見せて貰ってもいいですか?」


「おうよ、まずは刀だな。この刀は上質な鉄鉱石から作った玉鋼を存分に使ったから、切れ味は保証するぞ……銘は【鬼斬きざん】だ」


――インベントリ――


鬼斬 レア度4 品質D

攻撃力+31

プレイヤー【タイル】が上質な鉄鉱石から作成した刀


――インベントリ――


「良い刀ですね」


「ああ、今まで作って来た武器の中でも、かなりの傑作だからな。今までと言っても、武器なんて殆ど作っていないけどな」


「……」


 サキは刀に夢中になっていて、タイルの軽いジョークに対して無視するという対応になってしまった。

 恥ずかしくなったタイルは軽く赤面していたが、咳払いして誤魔化しながら、装備の説明に移る。


「ゴホン、次は装備だが、言われた通り篭手とウサギ用のスカーフを用意したぞ」


――インベントリ――


オーガの篭手 レア度3 品質D

防御力+38

プレイヤー【タイル】がオーガのツノなどから作成した篭手


レッドスカーフ レア度2 品質D

移動速度上昇 小

防御力+5

プレイヤー【タイル】がオーガの表皮などから作成したスカーフ


――インベントリ――


「ありがとうございます!!」


「これがあれば、当分の間使って行けると思うぞ」


「これで戦えます!!」


「何と戦うのかは聞かないでおくが、頑張ってくれ」


 タイルからの応援を受け、テンションが最高潮に昇っていたサキたちは、酒呑童子“頼光”討伐の進捗を得るためにギルドへと向かう。

 ギルドまでの道は和やかな会話が繰り広げられ、PVP後のような気まずい空気は流れていない。

 

「あれ? ミスズさんは居ないんですか?」


「そうなんですよ。ミスズは今まで溜めていた有休を消化するみたいで、当分来ないですよ」


「そうなんですね……」


 ギルドに来てみたら、仲良くしていたミスズの姿がなく、それも当分の間来ないということを聞いてしまったので、タイルのおかげで上がっていたテンションがかなり落ちていた。


「酒呑童子の件ですよね」


「はい!」


 しかしギルドの職員のおかげで、酒呑童子のことを思い出し、下がり始めていたテンションが戻る。そして前のめりで進捗を聞く。


「ファスター治安部隊“隊長”のリリルカ様から、受け取った伝言を伝えますね」


「はいお願いします」


「今回行われる酒吞童子“頼光”討伐及び、“北の森”掃討作戦では、王都からの援軍は期待できず、ファスター領の領兵のみで行うこととなるので、サキさんの参加を許可するとのことでした。作戦決行は3日後になるそうなので、3日後に北側の門までお願いします」


「……分かりました」


ユニーククエスト発生

【酒呑童子“頼光”討伐及び、“北の森”掃討作戦】

難易度10

成功条件

酒呑童子“頼光”討伐、“北の森”で異常発生している鬼系モンスターを一定量まで減らす

失敗条件

作戦の失敗

成功報酬

???


「(難易度10!!? まあ当然だよね)はい、分かりました」


「お願いしますね。鬼が増加してから、この街と王都は隣り合っているのにも拘らず、流通が著しく低下してしまいましたから」


 サキはギルドを後にする。

 そして酒吞童子“頼光”との戦闘に向けて身体を休めるために、一度ログアウトすることにした。


『ログアウトしました』


「ふぅ、酒呑童子頼光のことを咲良に相談しようかな」


――あとがき――

 tips

・王都とファスター

ファスターと王都は、“北の平原”と“北の森”を挟んで隣り合わせになっているが、酒吞童子“頼光”を筆頭に強力なモンスターが跋扈しているため、商人やプレイヤーは東側や西側からの迂回路を使わざるを得ない状況になっている。


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