第33話 堅い守り

 “南の森”にやって来たサキたちは、エリアボスであるゴーレムを探していた。エリアボスは一か所に留まるタイプとエリア内を徘徊するタイプの2種類いるが、“南の森”のエリアボスであるゴーレムは徘徊型となっていて、偶々遭遇するか、探し回るしかないが、サキたちは後者を選んだため、“南の森”を走り回っていた。


「出てくるのはオークばかりで、全然ゴーレムと出会えないよ」


「タイルさんも徘徊型を探すのは、根気がいるって言っていましたから、頑張りましょう!」


「それもそうだね。オークとの戦闘はそこまで楽しくないけど、レベルはドンドン上がっていくから、文句は言えないよね」


「きゅう!」


 その後もサキたちはオークを薙ぎ倒しながら、ゴーレムを探し回った。そして1時間近く索敵をして、ようやくゴーレムと出会うことができた。

 見上げるほど大きく、全身が石でできた巨躯はかなりの威圧感がある。


「やっと会えたね、ゴーレム君」


 感動の出会いを演出するサキだったが、一方的に追われて、倒される運命にあるゴーレムは被害者にしか見えない。

 サキは駆け出し、抜刀して“聖炎”を纏わせた。


「ゴゴゴゴゴゴゴ」


 ゴーレムは機械音を鳴らしながら、拳を振り上げた。そして接近してくる敵性存在に対して拳を振り下ろす。あまりの威力に大地を大きく抉っていたが、そこにサキは居ない。

 拳が当たる寸前に横に飛び退いた後、膝を曲げてエネルギーを脚に溜める。そして一気に開放する。

 ロケットのようにゴーレムの懐に入ると、石でできた強靭な身体へと刀を振り抜いた。当然石を切断するほどの切れ味を持たない“初心者の刀”ではゴーレムの身体を切り裂くことはできず、刀はサキの手に痺れを齎すだけだった。


「――やっぱりダメかぁ」


 ゴーレムは空中で身動きに制限が掛かっているサキに対して、拳を振り下ろしたのと逆の腕で殴り飛ばした。サキの身軽な身体は吹き飛ぶ。その勢いはいくつかの木を抉りながら死んでいき、大きめの木に激突した時に完全に勢いは消え、彼女は地面へと落下した。

 殴られた際のダメージがかなり高く、初心者装備ということもあり、4000以上あった体力が2000代まで削られてしまった。一撃で半分近く削られてしまったことに驚きつつ、サキの表情に焦りは見られない。いつも通りの明るい笑顔を浮かべたまま、刀を構えていた。


「強い相手は大歓迎だよ!」


「“ポルターガイスト”!」


「きゅう!!」


 サキに気を取られていたゴーレムに、アリウムとカグヤの攻撃が炸裂した。

 アリウムはいつものように手頃な石をポルターガイストで持ち上げると、ゴーレムの頭部を狙って投げつけた。当然ゴーレムは、猛スピードで迫りくる石を避けられるほどの機敏さを持ち合わせているわけもなく、顔に石が激突して、見上げる程の巨躯がよろめいた。そこに追い打ちをかけるように、カグヤが飛び蹴りをお見舞いする。よろけてバランスが崩れていたゴーレムは、カグヤの攻撃によって、地面を目指して倒れていく。

 ゴーレムは砂を舞い上げながら、仰向けで地面に倒れた。巨躯を再び立ち上がらせるためには、それ相応の時間とエネルギーを必要とする。


「チャンスだよ!」


「はい!」


「きゅう!」


 サキたちがそんな時間とエネルギーを使わせてくれるはずもなく、動けないゴーレムへの総攻撃が始まった。

 アリウムはポルターガイストで様々な物を重力に任せて落とし、カグヤは何度も助走をつけて飛び蹴りを行って体力を削っていく。

 しかし本来メインでダメージを出すはずのサキだけは、ダメージを一切出せていなかった。その最たる要因は、彼女の攻撃手段が刀ということだ。ここから先、物理攻撃が一切効かないモンスターが現れる可能性は高く、刀だけを頼っていたら、勝てない相手も多くいるだろう。

 そこで彼女は魔法に頼る。現実世界ではありえない力、されどこの世界では重要視される力、磨くにはこの世界で数を熟すしかない。


「“ホーリー”」


 悪を裁く聖なる光が、ゴーレムの強固な肉体を貫いた。

 その一撃はゴーレムの潤沢な体力を大きく削り、あと数発撃てば倒せるだろうと思えるほどに、強力な一撃だった。

 しかし慣れない魔法の制御はままならず、今の一撃で1万以上ある魔力の大半を消耗してしまった。つまりもう魔法に頼ることはできなくなってしまった。


「……攻撃魔法にも慣れないとなぁ」


「あとは任せてください!!」


「きゅう!!!」


 サキは1人ではないため、魔力を失って攻撃手段がなくなろうと、即敗北に繋がる訳ではない。

 その後は立つことができないゴーレムに対して、アリウムとカグヤの攻撃によってチクチクと体力を削っていき、十数分後に勝利することとなった。


『“南の森”のエリアボスに勝利した』


『“ファンタ鉱山”が解放された』


 そんなアナウンスが頭の中に聞こえてきたが、サキはあまり喜べなかった。


「勝てはしたけど、私1人だったら厳しい相手だったなぁ」


「攻撃魔法も頑張りましょう!」


「きゅう!」


「そうだよね。今まで春風の剣術だけを頼りにしてきたけど、魔法も使えないと勝てない相手だって出てくるよね」


 その筆頭がゴーレムだろう。ゴーレム以上の堅さを持つモンスターなどザラにいる。そんなことも想定して、これからは【神聖魔法】の攻撃魔法も存分に使っていくつもりになった。


「よし、じゃあ“ファンタ鉱山”に向かおうか」


「はい!」


「きゅう!」


 サキたちは“南の森”を抜け、ファンタ鉱山へと向かう。


――あとがき――

 tips

・【堅守】

物理防御力を高める。

一定数以下の物理ダメージを0ダメージとして計算する。


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