第21話 いくつかの刀

 サキは売却口へと向かい、今まで手に入れたドロップアイテムを出した。ただポーション作成に使えるハニービーの蜂蜜は残している。


「こちらですね……1万5000ラオになります」


「そんなになるんですね!」


「ブラウンベアーの毛皮が4500ラオになるので、あとは数が多かったので、1万5000ラオになりました」


「ありがとうございます!」


 お金を受け取り、ギルドを後にする。そしてこれまでにない大金を持ったサキたちは、武器屋へと向かう。これまで彼女は“初心者の刀”で戦ってきたが、技量でどうにかなる敵ではなくなってきている。それが顕著に現れたのがオーガ戦であり、再戦に向けて武器の新調を図ろうとしている。


「こんにちは!」


「いらっしゃい」


 武器屋の扉を開けると、ムワッとした熱気が勢いよく飛び出してきた。しかし雑貨屋で感じたものとは違い、どこか爽やかな気もした。


「刀ってどこにありますか?」


「刀? そこらへんが刀だよ」


 店主の男が指さした先は店舗の端だった。しかしサキは納得している。なぜなら刀は西洋剣に比べると扱うのに技量が必要であり、熟練者しかモンスター相手に通用しないからだ。


「うーん、どれがいいかなぁ?」


――武器屋――


猪の刀 レア度2 品質D

攻撃力+12

ワイルドボアの牙を使った刀

6000ラオ


毒蛇の刀 レア度2 品質D

毒付与 

攻撃力+11

ポイズンスネークの毒袋を使った刀

7500ラオ


猪頭の刀 レア度3 品質E

攻撃力+18

オーク鉄を使った刀

13000ラオ


――武器屋――


「ここら辺が性能と所持金を考えて丁度いいかな……どれがいいかなぁ?」


「うーん、私は“猪頭の刀”が良いと思います!」


「性能は十分だけど、高いんだよなぁ」


 性能だけで言えば、ダントツで“猪頭の刀”が良いのだが、先ほど手に入れたお金の大半を溶かしてしまうことになる。二番手の“毒蛇の刀”は“毒付与”という効果が付いていて、“猪の刀”とほとんど火力が変わらない上で、かなりお買い得な値段なため、その2つの武器で悩んでいた。


「うーん、格上相手には“毒蛇の刀”の方が役立ちそうで、実力が競っている相手には単純性能が高い“猪頭の刀”……」


「サキお姉さんの実力はかなり高いですよ! だからスキルとか考えなかったら、格上なんてほぼいないですよ!」


「そうかなぁ? じゃあこの“猪頭の刀”を買います!」


「13000ラオだよ」


 13000ラオを支払い、武器屋を後にした。

 店主の男は内心、ずっと独り言を言っているように見えた少女にビビっていた。


 サキは新たに手に入れた武器に慣れるため、南の平原へと向かっていた。


「確か“南の平原”は……“ハウンドドッグ”と“ポイズンスライム”だったかな」


「何か近付いて来ますよ!」


「教えてくれてありがとう!」


 サキは幽霊少女の言葉を聞き、“猪頭の刀”を鞘から抜いた。

 近付いて来ているのは、四足歩行のモンスター“ハウンドドッグ”だ。低いうなり声を上げながら、ジリジリと近寄ってくるハウンドドッグは、サキたちを睨みつけている。

 サキも不用意に近付く真似はせず、ハウンドドッグの動向を窺っていた。

 刀が光った。刹那、サキの姿が消えた。実際は違うのだろうが、ハウンドドッグの視点からだと消えているように見えた。

 そして首元に刃が触れる。触れた傍から毛皮は斬れ、筋肉に到達すると、多少の抵抗感を感じつつも、簡単に切断された。そして最も強敵である骨に到達する。やはり骨は硬かった。


「やっぱり骨は硬いね……でも、武器を新調した今なら!」


 サキは腕に力を籠めた。

 骨に亀裂が入る。そして刀は振り下ろされ、ハウンドドッグの首は完全に切断された。

 ハウンドドッグは首が完全に落ちる前に、ポリゴンとなって消えて行った。


「ふぅ、やっぱり初心者の刀に比べると、切れ味が段違いだね」


「“北の森”の調査を再開しますか?」


「うーん、今日は結構やっちゃったし、いったんログアウトして、“北の森”の調査はまた明日かな」


 サキは街へと戻り、ログアウトした。


『ログアウトしました』


 美咲はVRヘッドセットを外すと、リビングがある1階へと降りていく。


「あら、ゲームはもう終わりかしら?」


「うん、キリがいいところだったから」


「そう、でも夜ご飯はまだできていないから、道場に顔でも出してきなさい」


「はーい」


 美咲は自宅の隣にある春風道場に顔を出した。


「やってる?」


 屋台に顔を出すような言葉を吐きながら道場に入ると、そこには剣術に励む門弟たちが十数人いた。


「師範!」


 近くに居た門弟が美咲の姿に気が付くと、その声に反応した門弟たちが一斉に、美咲の下へと近付いて来た。


「お久しぶりです!」


「私と一本お願いします!!」


 同年代、または年上の人たちが揃って敬語で話しかけて来た。


「しょうがないなぁ、夜ご飯ができるまでの間なら試合を受けてあげるよ」


 師範の言葉に、道場が沸いた。そして誰から試合をやるかの話し合い(じゃんけん)が行われた。


――あとがき――

次回は道場での一幕、翌日の様子などが描かれます。

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