正義とせいぎ 悪とあく
東京の空は、いつも多忙な都市の鼓動を映すように、淡い鉛色をしていた。高層ビル群の合間を縫って、けたたましいサイレンが鳴り響く。それは、今日もまた「奴ら」が動いた合図だ。
「ジャスティス・フォース、出動!」
通信機から響くリーダー、ライトニング・アローの声に、少年――いや、青年になったばかりのレンは、反射的に体を起こした。彼のコードネームは「アブソリュート・ゼロ」。触れるものすべてを凍らせるその能力は、時に彼の内にある激情を鎮める唯一の手段だった。
テレビのニュース速報が、現場の状況を伝える。渋谷スクランブル交差点に、異形の怪物が現れ、無差別に破壊活動を行っている。その背後には、おなじみのマークが揺らめいていた。ディスコード。そう、世界に混乱をもたらす悪の組織だ。彼らは、既存の社会システムを破壊し、新たな秩序を築くという大義を掲げているが、その実態はテロリストと何ら変わりない。
「全く、懲りない奴らだ」
隣を走るメディック・ハート、アヤカが吐き捨てた。彼女の能力は生命操作。傷ついた人々を癒し、時には敵の生命力を奪うこともできる。その能力とは裏腹に、彼女の心は誰よりも優しかった。
現場に到着すると、既にライトニング・アローの姿があった。稲妻のような残像を残し、彼は怪物の周囲を駆け巡る。瞬く間に怪物の動きが鈍り、鈍い咆哮をあげた。彼の電撃能力は、まさに雷神のごとき破壊力を持つ。
レンは迷わず氷の壁を展開し、パニックになった人々を保護した。冷気が空気中の熱を奪い、一瞬で辺りの空気が凍り付く。視界の端で、怪物の背後から飛び出す人影が見えた。ディスコードの幹部、「スモーク・ファントム」。全身を黒い煙に包み、実体を掴ませない厄介な相手だ。
「おやおや、またお会いしましたね、正義の味方さんたち」
煙の中から、皮肉めいた声が響く。スモーク・ファントムの姿は、まるでそこに存在しないかのようにゆらゆらと揺らめいている。
「貴様らの悪行は、ここで終わりだ!」ライトニング・アローが叫ぶと、再び電撃が走った。
これは正義の戦い。疑う余地など、どこにもなかった。
アブソリュート・ゼロの絶対零度の冷気が、怪物の動きを完全に止めた。ライトニング・アローの雷撃が止めを刺し、怪物は爆音と共に塵と消える。メディック・ハートは素早く負傷者の手当に回り、混乱は徐々に収束していく。だが、スモーク・ファントムは煙のように消え失せ、取り逃がしてしまった。
「くそっ、また逃がしたか!」ライトニング・アローが悔しそうに拳を握る。
その日の夜、ジャスティス・フォースの秘密基地で、レンは作戦会議に参加していた。モニターには、ディスコードが引き起こした過去の事件の記録が並ぶ。彼らは、銀行強盗、政府施設へのサイバー攻撃、そして超能力者による暴動の扇動など、あらゆる悪事を働いてきた。
「奴らの目的は、やはり社会の転覆にある。だが、その背後にある真の意図が掴めない」ライトニング・アローが腕を組み、険しい表情で呟いた。
レンはぼんやりとモニターの映像を見ていた。崩壊したビル、泣き叫ぶ人々。その中には、ディスコードのマークを掲げ、不気味な笑みを浮かべる男たちの姿が映っていた。彼らは悪だ。そう、彼らは絶対的な悪だ。
…
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