第7話友達を作る難易度ってこんな高かったか

現在、俺は困ったことに直面していた。


転校生といえばどんな奴にも最初だけ人が群がってくるというボーナスタイムがあるが、俺は意図的にそのボーナスタイムをキャンセルされていた。



「……」キッ!?



優子はまるで王様を守る騎士の如く。休憩の度に全方位に睨みを効かせて誰も近づけさせないようにしていた。


たまに優子のガードを抜けて…



「山田くん、ちょっといいかな?」


「なに——「ダメです。今から流星さんは私と話すので」」



もう、俺が話そうとする度に優子がブロックしてくるから転校初日だというのに優子以外のクラスメイトと話していない。


このままじゃ、本当に友達できないだけど。優子を注意しないと…



「優子このままじゃ、俺友達が出来ないだけど……」


「私だけじゃ不満ですか…??」



優子が涙目で俺を見ている。ずるすぎる、これじゃダメと言えないじゃないか…。



「優子、毎回俺の所来てくれているのはありがたいけど友達の方とか行かなくていいの?」


「大丈夫です。大切なのは流星さんだけなので」



なんか俺に対する。優子の愛が重い!?俺この愛を受け止められるかな?


愛に押しつぶされるような気がするよ。


優子がお手洗いに行くために少し俺の側を離れた隙に優子とは反対側の俺の隣に座っている。チャラそうな男子生徒が話しかけてきた。



「よ!姫に好かれてるな」


「えっと…」


「俺は七瀬ななせ 雄也ゆうやだぜ!俺は流星って呼ぶから雄也って呼んでくれると嬉しいぜ」


「それで雄也、姫というのは?」


「もちろん、桐谷のことだぜ!容姿が浮世離れしてるから姫って呼ばれてるんだ」


「やっぱり、優子ってすごい人気なんだなぁー」


「人気なんてものじゃないぜ、なんせファンクラブがあるくらいだからな」


「なんかー登校している時に風の噂で聞いたなー」



てかファンクラブって漫画の世界の話だけじゃなくて、本当に存在するのね。



「流星気をつけろよ。噂で聞いたんだけどファンクラブの奴らは桐谷からお前を奪い返すために襲撃する計画を立ててるらしいからな」


「まじで!?」


「おおーまじだ。とにかく奴らは一度桐谷にしつこく迫ったやつを血祭りに上げたらしいからな」



この学校やべえ奴らが多いだな。(遠い目をして世界平和について考える)


それに俺の平穏な学校生活も音を立てて崩れ去ってしまったな。



「なんで自分のことなのに現実逃避してるだよ」


「いや、もう現実逃避するしかないだろ」


「まあーそこまで悲観するなよ。何かあったら俺が助けてやるよ」



雄也の奴エロ漫画に出てくる。彼女を寝取りそうな見た目をしている癖にめっちゃいい奴だな。



「お前なんか変なこと考えてないか?」


「いや、考えてないよ」



目線を逸らす。



「いや、思い切り考えて……ひっ!?」


「雄也いきなり股間握られたみたいな声出してどうした?」


「ああれ……」



雄也の指差す方を見てみるとお手洗いから戻ってきたのか。教室の扉からひょっこりはんした状態で俺と雄也を物凄く鋭い視線で見つめる優子がいた。


特に雄也を見つめる視線は人を殺しそうな目をしていてかなりヤバそうだ。雄也は怖いのか机に顔を伏せて震えている。


優子は一歩一歩と俺たちの元に近づいてくる。まるで死刑宣告のようだ。さっきまでガヤガヤしていた教室も緊張で固唾を飲む男子の音や恐怖でガタガタと歯の音を鳴らす女子の音だけが教室内に響く。



「流星さんは話し相手が私だけじゃ不服ですか?」



まず、嫉妬する対象がおかしいが。優子の嫉妬の範囲は男女関係なく。全方位攻撃のように誰でも関係ないようだ。



「あっはっは、不服じゃないよ。ただ優子がいなくて暇だったから雄也と話してきただけだよ」


「でも、流星さんが私以外の人と話すのは嫌です」


「優子、それじゃー優子以外と話せないだけどせめてコイツだけでもお願い」


「うう……」



雄也を指差してお願いするも嫉妬の鬼の優子は俺のお願いということもあり。唸りながら相当悩んでいる。


けど、悩んでいるということは後一押しすればいけそうだ。



「じゃあ、後もう一つ優子のお願い事聞くからさ」


「それは本当ですか…?」


「本当だよ」


「わかりました。七瀬さんは流星さんに近づくことを認めます」


「よし!」



やっと俺は1人目の友達を作ることに成功した。

雄也が——友達に加わった。


前の学校でも友達多少いた方ではあるんだけど、友達作りってこんな疲れるっけ?。まあー優子のせいで友達作りの難易度がほぼ鬼レベルになってるだけやけどね。



「いやー桐谷さんに殺されるかと思ったわ」


「ふふふ、七瀬さんはやりませんよ。まあーただ泥棒猫は別ですけど」


「ひっ」



雄也が優子の顔を見て。短い悲鳴を上げたので優子を見てみるがニコニコしている。



「今の状態の桐谷さんを飼い慣らしている流星が1番こえーよ」


「なんのこと?」


「無自覚かよ」



この出来事をきっかけに優子は姫から『番犬』というあだ名にシフトチェンジした。後日談だが俺は後に『番犬の飼い主』というあだ名を付けられていることを知ることになる。

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