もう一度、光を!
ナシリカ
第1話 オムツ投げられました
(入学したばかりの男の子、
『絵本部をなんとかしてほしいにゃん!』
(って、土下座されました…!)
(はぁ…断れない性格が裏目に出たな……僕はただ、平穏に過ごしたいだけなのに……)
音羽は、震える拳をぎゅっと握りしめた。
〈
それはとてもいいことで音羽自身もそこを気に入って入学を決めた。
けれどーー
音羽は、猫宮先生に教えてもらった、部室のドア前に立っていた。
そこには、色あせた紙がガムテープで無造作に貼られている。
紙には、油性ペンでこう書かれていた。
〈 絵本部☆キラキラ王国 〉
(……個性的通り越して、もはや恐怖を感じる……けれど、引き受けたからには、行くしかない!!)
「し、失礼しまーす!」
ガラララーーー!
音羽がドアを開けると……
「オムツゥゥゥゥゥ!!受け取れ、受け取れぇぇぇぇぇッ!!!」
「?!」
ボフッ!!
勢いよく飛んできた布の塊が、音羽の顔面にクリーンヒット。
「…………って、オムツ?!なんでオムツなの?!」
オムツから漂うミルクの香りが、音羽を優しく包み込む。
「はぁ…いい香り…♡」
音羽は、とろけそうになった。
「ハハーン!オムツを受け取れないなんて、ダサ坊だな!お前のこと、猫宮先生から聞いてるぞ!!」
目の前には、仁王立ちする謎の紫髪イケメンがいた。
よだれかけをつけて、頭にはやたらと大きな王冠。
しかも片手には、謎の哺乳瓶……一体何者?
シュッ
紫髪イケメンは、哺乳瓶をマイクのように構えーー
「俺の名は!!中学3年、赤ちゃん界の帝王、
部室中に響き渡る声で自己紹介を始めた。
テンションは、完全に狂っている。
「赤ちゃん界の帝王?!いやいやいや、なんなんですかその設定!!」
(僕の学校生活、平穏とかけ離れすぎじゃない?こんなオムツ捨ててやる。)
音羽がオムツを床に置こうとした、その時ーー
ガッシャアアアン!!!!
「今度はなに?!」
突然、壁が粉々に砕け散り、振動が床を伝って足に響いた。
テンション高めに、壁を突き破って登場したのはーー
おでこがキラキラと輝く、金髪ツインテールの美少女。
両頬に貼られた黄色い星形のシールが、彼女のキャラを物語っていた。
「はじめましてーっ☆おでこキラキラキラリンビーム!!握力だけは超天才!!中学3年生、
「ちょっと!!壊した壁、どうするんですか?!?!」
「あ!あとね!あたし、『絵本部のお星さま』って呼ばれてるの!すごくない?もしかして、照明器具かも!!☆☆」
輝星は、センター分けの髪を抑え…
「キラーン☆☆」
キラキラ輝くおでこの存在をアピールした。
「話を聞いてくださぁぁぁい!!!!」
(……猫宮先生が土下座した理由、なんとなく分かってきたかも。)
すると、部室の隅からふわっと、もう1人の少女が現れた。
腰まで続くピンク色のウェーブヘアに、黄緑のカーディガン。
まるで、妖精のようなビジュアルだった。
「うふふ〜みんな元気いっぱいね〜まるで、お花が踊ってるみた〜い」
(おっ……この人、まともそうかも……!?)
そんな、音羽の期待をよそに……
「わたしは〜お花妖精、
「チューリップを食べたんですか?!」
音羽がそう、ツッコミを入れると咲良は突然、顔色を変えた。
「命の味、チューリップのことをバカにしてるの?!」
殺気立つその顔に、音羽の心は震え上がる。
(やっっっぱり、まともじゃなかった〜〜!!!!)
ギギギギギギッ……
「ヒエッ!今度は天井が開いた?!なんなのこの部室、そういうシステムなの?!」
開いた天井からハシゴを下ろして、降りてきたのは…
茶色いボブヘアに猫耳カチューシャ、極めつけは、オレンジのジャージ。
そんな、奇抜な格好をしたのが、音羽のクラス担任であり、絵本部の顧問でもあるーー猫宮先生だった。
「ふっふっふー♪︎寝猫は、部室の天井裏に住んでるにゃんよぉ……」
猫宮先生は、不敵な笑みを浮かべた。
「い、色々と怪しすぎるんですけど〜〜!!」
「にゃはは〜〜!!これから音羽クンには、絵本部の“パパ”になってもらうにゃん♡ちなみに、“ママ”は、寝猫にゃん♡♡」
「は、はぁああああ?!?!中1で“パパ”にされるってどういうことですかーーっ?!?!」
こうしてーー
音羽の終わらないツッコミとともに、伝説の絵本部ライフが幕を開けた。
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