第42話 落ち着けるわけ、ない

「ほら、早く」

「えっ、あ、う」


急かされて、ちょんっとソファに座る。


「……なんで、そんなに離れてんだ?」

「え?」


私と夜翔の距離は人が一人座れそうだ。


(いや、だって。刺激が……っ。それに……さっきのことを思い出しちゃう……っ)


隣に、しかもちょっと離れて座っているだけで、さっきのことを思い出しているのに、もっと近づいたら体温まで思いだしてしまいそうで……。


「……え、いや、その、なんでも……っ」


言い訳を探して視線を泳がせる私に、夜翔はじっと目を向ける。


「……もしかして、さっきのこと、気にしてんのか?」

「っ――!」


図星を突かれて、心臓が跳ねた。


「ち、違っ……う、とは……言い切れないけど……」

「変わんないな」


そう言って、ぐっと私の腕を引いた。


「ひゃっ……!」


気がついたときには、夜翔との距離が一気に縮まっていて、肩が触れそうなくらい近い。


「……落ち着かねぇって。そんなに避けられると」


低い声が、耳元で響いた。


(そんなの……こっちが、落ち着けるわけ、ない……っ!)


頬が、じんわり熱を持っているのがわかる。


火照った頬を見て、夜翔は満足そうに小さく笑った。その表情があまりにも優しく、ドキッとしてしまう。


(意地悪……っ)


でも、それが夜翔らしいとも思ってしまう自分が、ちょっと悔しい。

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